ローコード開発コラム

ローコード開発を効果的に活用する進め方

ローコード開発プラットフォームを導入して、基幹システムや業務システムを構築するまでにも数多くのステップがありますが、
その後にも、構築したシステムをブラッシュアップする工程があります。

せっかく導入したローコード開発プラットフォームを十分に活用するためには、導入時、システム構築時、その後の運用フェーズ、
それぞれにおける進め方やポイントを知っておくことが重要です。

このページでは、各フェーズでの進め方として、ポイントや注意点をお伝えいたします。

導入時のポイント、注意点

ローコード開発プラットフォームを導入する際は、プラットフォーム選定が最も重要です。
また、そもそもローコード開発プラットフォームで実現できるシステムの範囲についても把握しておく必要があるしょう。

開発できる内容に制限があることを知っておく

ローコード開発プラットフォームの特徴は、用意された機能単位を活用することで、開発にかかる時間とコストを圧縮できる点です。用意された機能単位以外の機能や、他ツールとの連携、オリジナルのUIなどは、コーディングを行うことで実現できます。
ただ、スクラッチ開発で1からコーディングしてシステム構築するのに比べれば、自由度は低いです。

ローコード開発プラットフォームのメリットを活かすには、大部分は既存の機能単位を用い、コーディングの部分を最小限に抑えることが前提となります。
まずは、自社が希望するシステムは、ローコード開発プラットフォームで実現すべきかどうかを吟味する必要があります。

求めるシステムに適したローコード開発プラットフォームを選ぶ

自社が求めるシステムを構築する手段として、ローコード開発プラットフォームが最適だと判断した後は、導入するプラットフォームを選定していきます。その際は、求める要件を満たせるかどうかを必ず確認しましょう。

一口にローコード開発プラットフォームといっても、現場の担当者がほぼノーコードで作成できるシンプルなものから、エンジニアが構築することが想定された本格的なタイプまで、さまざまなものがあり、実現できるシステムの規模や種類、構築の難易度は大きく異なります。

構築したいシステムの要件を明確にした上で、可能であればRFP(Request for Proposal/提案依頼書)を作成し、複数のベンダーに提出してください。提案内容を比較検討しながら選定を進めましょう。

システム構築時のポイント、注意点

ローコード開発プラットフォームの選定が済み、契約、導入と進めていき、実際にプラットフォーム上でシステムを構築するフェーズに入ったら、次の5つのポイントを押さえましょう。
これらの点に注意することで、利便性の高いシステムを構築できるだけでなく、構築後の運用フェーズもスムーズになります。

要件定義を行う

要件定義とは、システム開発の目的に合わせて、必要な性能や機能などをわかりやすくまとめることをいいます。

比較的、手軽に構築が可能なローコード開発プラットフォームを活用すること、また、社内で使用するシステムを構築することなどの理由から、システム構築の目的について理解しているつもりで、なんとなく構築を初めてしまうケースも少なくありません。すると、構築後、実際にシステムを使い始めてから、必要な機能が不足していたり、使い勝手が良くなかったりすることに気づくことになります。もちろん、それから改修することも可能ですが、非効率的です。

これを避けるために、あらかじめ、ユーザーとなる部門の担当者にヒアリングを行って要件定義書を作成してから、構築しましょう。

なお、要件定義について詳しくは、別ページ「ローコード開発でのシステム構築の流れ」をご覧ください。

正しいデータベース設計を行う

前項の要件定義を行うことにも付随しますが、「手軽に構築できるから」「社内で使うシステムだから」と、データベース設計について軽く考えてしまうと、後からデータの利活用がしづらいシステムになってしまいます。

データベースについて、ローコード開発プラットフォーム側で用意された設計しか利用できないタイプの簡易的なタイプであれば、特に気にする必要はありませんが、ある程度、本格的なシステム構築が可能なタイプを利用する場合は、データモデリングの知識を持ったエンジニアがデータベース設計を行うことが大切です。

どのような情報をデータベース化する必要があるのか、それにはどんな構造が最適かを検討しましょう。

ドキュメントを整備する

一般的なシステム開発では、要件定義書をはじめ、設計書(基本設計書・詳細設計書)やテスト仕様書・成績書(単体テスト・結合テスト・システムテスト)、運用マニュアルなど、数多くのドキュメントが作成されます。

ローコード開発プラットフォームを用いる際も、上記のようなドキュメント類を整備して、開発中の履歴が残るようにしておくことが重要です。

こうしておかなければ、運用段階でメンテナンスを行いたい場合に、システム変更による影響度調査に必要以上の手間がかかり、運用コストが上昇してしまいます。

コーディングはスキルのある人が行う

正しいデータベース設計を行う」でも、データモデリングの知識を持つエンジニアの必要性に触れましたが、用意された機能単位以外の開発でコーディングが必要な場合は、スキルを持ったエンジニアが担当することを推奨します。

簡単なコーディングであれば、スキルのなかった人が独学で身に付けて実装することも不可能ではありません。しかし、自己流のコーディングの場合、目的の機能を実現できても命令の実行順序が複雑だったり処理の流れや構造が把握しにくかったりと、書いた本人にしか理解できない「スパゲッティコード」になっているケースが少なくないのです。

コーディングした部分を後から変更しようという時に、書いた本人すらわからなくなっているようだと、影響度調査の負担が増加してしまいます。

構築のルール、フローを整備する

ローコード開発プラットフォームのメリットとして、用意された機能単位を組み合わせるだけでコーディングせずに済む範囲内であれば、非エンジニアである現場の担当者の手で簡単にシステム構築ができる点があります。

ただ、その場合、各現場の担当者が好き勝手にシステムを構築してしまい、似たようなシステムが乱立してしまいがちです。
いくら構築するのが簡単とはいえ、同じようなシステムであれば、新たに作るのではなく既存のものを利用する方が効率的です。
また、各担当者が好き勝手にシステムを構築して利用するということは、それらが、情報システム部門など管理者の認知していない「シャドーIT」と化してしまうことを意味します。

一般的なシャドーITのリスクとして重篤なのは、サイバー攻撃やヒューマンエラー、内部不正による情報漏えいやアカウントの乗っ取りです。その点では、プラットフォーム側で十分なセキュリティ対策が取られているローコード開発によるシステム構築はあまり心配ないでしょう。
ただ、管理者の預かり知らないところで、さまざまなシステムにデータが分散して存在することになり、公式なバックアップを取得してもらえないことから、データの破損・損失などのリスクが残ります。

これを防ぐためには、ローコード開発プラットフォーム上で開発したすべてのシステムを管理者側で把握できるよう、構築のフローの中で管理者側に報告するプロセスを設けるなど、構築のルール、フローを整備する必要があります。

運用フェーズでのポイント、注意点

構築したシステムは、その後、運用していく必要があります。
運用段階では、構築したシステムをアップデートしたり、ローコード開発プラットフォームのさらなる活用を促進するためにエバンジェリストを立てたりなどの方策が求められます。

必要に応じてアップデートする

ローコード開発プラットフォームで構築したシステムに限った話ではありませんが、時間の経過とともに社内外の環境が変化し、業務も変化していきます。これに合わせてシステム側もアップデートできなければ、レガシー化してしまいます。

用意された機能単位の追加で済む変更であれば、非エンジニアの現場担当者の手でも可能です。
適宜、システムの機能について見直し、アップデートすることで、高い利便性を維持しましょう。

新機能や追加モジュールを積極的に導入する

前項とも関連しますが、プラットフォーム側に随時、追加されていく新たな機能やモジュールを享受できる点もローコード開発のメリットの一つです。特にSaaSタイプであれば、追加費用なしでの利用が見込め、コストパフォーマンスも高いです。

新機能などがリリースされたら、積極的にシステムに取り入れることで、さらなる業務効率化や、新しく実現できることが増えます。機能拡張しながら、より良いシステムへと育てていきましょう。

利用拡大のためにエバンジェリストを立てる

エバンジェリスト(Evangelist)とは、もともと、キリスト教における伝道者を指す言葉でしたが、ここから転じて、IT業界において技術的なテーマを社内外にわかりやすく説明し、浸透させる役割を持つ人を指すようになりました。

せっかく導入したローコード開発プラットフォームも、導入当初にいくつかのシステムを構築しただけで放置されてしまっては、もったいないもの。末永く活用するためにも、社内にローコード開発プラットフォームの価値を実感してくれるメンバーを増やし、開発や利用を促進したいところです。

そのためには、ローコード開発プラットフォームに関する知識や開発のスキルを持った人材をエバンジェリストとして立て、率先して促進を行ってもらうことがポイントとなります。たとえば、エバンジェリストを中心とした勉強会を開催して開発のスキルアップを促したり、ローコード開発に関する情報発信をしてもらったりといった活動が考えられます。

ローコード開発プラットフォームを利用する流れを知って活用しよう

ローコード開発プラットフォームを十分に活用するためには、フェーズを「導入」「開発」「運用」の3つに分けて捉え、さらに、それぞれの流れとポイントを把握した上で進めていくことが大切です。

どのフェーズもそれぞれに大切ですが、ローコード開発プラットフォームを導入し、システムを開発した先には、運用フェーズが待っていることを意識することが一つのポイントになるでしょう。

ぜひ、ベンダーの説明も加味しながら、自社に合ったローコード開発プラットフォームを導入し、希望のシステムを実現してください。

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