ローコード開発コラム
ローコード開発に関心が集まっています。注目されるようになったのは、比較的最近のことですが、ローコード開発そのものは、2011年頃から存在していました。調査とアドバイザリーを手がける米フォレスター・リサーチ社が2014年に初めて「ローコード開発(low-code development)」という言葉を使ったといわれています。
このページでは、ローコード開発の歴史と将来性について、ご紹介いたします。
ローコード開発の概念が生まれてから、実際に利用できるローコード開発ツールが登場し、進歩するまでの軌跡を時系列でご紹介いたします。
ローコード開発の誕生と、直接的な関連があるわけではありませんが、現在のローコード開発プラットフォームで使われている技術であるGUIや第四世代言語(4GL)が、1960年代に生まれました。
GUIとは、Graphical User Interface(グラフィカルユーザインタフェース)の頭文字を取ったもので、簡単にいうと、マウスやタッチパネルなどで操作できるような画面のことです。
GUIが登場するまでは、コマンドプロンプトのように文字ベースのUIしかありませんでした。
それが、1960年代に入ってから米空軍の防空管制システムでGUIが実装されたり、情報表示にブラウン管が使われ始めたり、新たなデバイスとしてマウスが登場したりしました。
第四世代言語(4GL)とは、実際にアプリケーションを使用するユーザーが開発を担えるように設計されたプログラミング言語で、機械が読むことを優先するのではなく、人間が読みやすいようにしたという特徴を持つ言語のことです。
第一世代言語である「機械語」、第二世代言語である「アセンブラ」、第三世代言語である「高級言語」につづく進化系の言語です。原始的な第四世代言語(4GL)が登場したのも1960年代で、IBMのRPGやInformaticsのMARK-IVなどがあります。
こうして、GUIが発達する土台が整っていったのが1960年代です。
ローコード開発の元となる概念が生まれたのが、1982年に出版された『Application Development Without Programmers』です。著者は、英国の技術者で企業家のジェームズ・マーティン(Sir James Martin)氏。タイトルの意味は、プログラマー不要のアプリケーション開発となり、プログラマー不足から将来的にコンピューターは部分的にでもプログラマーなしで動く必要があると説きました。
ローコード開発が注目される前、1995年にCMSが誕生しました。CMSとは、Contents Management Systemの頭文字を取ったもので、HTMLやCSSなどのWeb制作の専門知識がない人でもWordなどの一般的なアプリケーションと同じような簡単な操作で画像やテキストを入力するだけで、Webサイトの構築やWebページの更新、コンテンツの管理が行えるシステムのことです。無料で利用できるオープンソースの「WordPress」などは、CMSの代表例です。
CMSの多くは、上記のようにWeb制作の専門知識なしでWebサイトの構築などが行えますが、必要に応じてコーディングを行い、細かいアレンジやカスタマイズが可能です。上記の特徴をふまえると、CMSはローコード開発ツールの一種であるといえます。
ローコード開発プラットフォーム製品の市場がスタートしたのは、2011年からだといわれています。その後、2014年に初めてフォレスター・リサーチ社が「ローコード開発(low-code development)」という言葉を使いました。それから10年近くが経過し、前出のフォレスター・リサーチ社によれば、ローコードおよびノーコード開発プラットフォームの市場規模は、2024年には2020年の2倍超の約145億ドルに上ると予測されています。
2016年頃から、世界的に大きな影響力を持つIT企業群「GAFAM(ガーファム)」がローコード開発に注目しており、開発企業の買収や自社開発を進めてきました。
「2011年 ローコード開発プラットフォーム市場がスタート」でお伝えしたように、ローコード開発の市場は、拡大が予想されており、ほかにも米ガートナー社を始め、国内外の調査会社などがローコード/ノーコードの市場や導入状況について、拡大を予測しています。 たとえば、市場調査とコンサルティングを手がける株式会社アイ・ティ・アールは、ローコード/ノーコード開発市場は2023年には1,000億円規模に達すると予測しています。
参考:『ITR Market View:ローコード/ノーコード開発市場2022』のプレスリリース
以上から、ローコード開発市場は今後、拡大傾向が続くと考えられます。