導入事例
学校法人 千葉工業大学様
科学技術の発展には資金が不可欠だ。
文部科学省をはじめとする各省庁、日本学術振興会をはじめとする独立行政法人等は、大学・研究機関へさまざまな形で研究費を助成している。
一方で、こうした公的研究費を利用する大学・研究機関の現場では、不正利用の例が後を絶たない。
公的研究費の不正利用を未然に防ぐこと、そして、公的研究費の使用プロセスを健全化することは、大学・研究機関の責務であり、ひいては「科学技術創造立国・日本」を支える重要な要素といえる。
千葉工業大学は、この課題に果敢にチャレンジ。
物品の購入申請を電子化するシステム構築と、納入物品の全品検収によって、不正利用防止と業務改革に飛躍的な成果をあげている。
課題
千葉工業大学(以下、千葉工大)は、宇宙、ロボットに関する研究で世界最高レベルの技術の高さを誇る。
「本学の惑星探査研究センターは、小惑星探査機『はやぶさ2』に搭載される科学観測機器など宇宙関連プロジェクトに参加しています。
未来ロボット技術研究センターでは、福島第一原子力発電所内の探査を行う『クインス』をはじめ、災害対策や社会貢献を目的とするさまざまなロボットを開発しています」と、学校法人千葉工業大学 常務理事の宮川博光氏は紹介する。
研究水準が高いだけに公的研究費の金額も多い。
「これまでも、公的研究費の不正利用防止という課題には前向きに取り組んできましたが、2012年から2014年にかけて、事務手続きの変更と現体制を確立しました」と、宮川氏は説明する。
教員が業者へ物品購入などを発注し、後で事務方へ支払いを依頼するという流れは、根本から変えた。
教員と業者との間には、必ず事務職員が入る。
教員からの申請を受けて、予算管理部署が予算の確認を行った後に、用度課が発注をする、用度課は場合に依っては複数の業者から相見積をとって公正な取引を追求する。
また、従来は、公的研究費を使った物品購入申請は、すべてを紙で処理していた。不明点が生じたりすれば伝票の山を掘り返さなければならなかった。これを改めた。
「納入品の全品検収」も理事長が決断した。
当時、私大の多くは、一定金額以下の少額な消耗品は、検収していなかった。しかし千葉工大は、購入するものは、金額の多寡に関わらず納品時には検収室で全品検収し、さらに公的研究費で購入する物品は証拠となる写真も撮影して保存することにした。
こうした基本ルールを着実に運用するために必要になったのが、発注システムだ。
「システム化すれば、定めた承認ルートが順守されます。プロセスの『見える化』も進み、後から手続きを追跡することも容易になります。そして、申請から発注までをシステム化して一元管理する体制を作ることで、その情報を使っての全品検収という大きなチャレンジも可能になるのです」と法人事務局 局次長の前田修作氏は語る。
導入
発注案件すべてを電子化するシステムの導入は、全国の大学でも珍しいモデルケースであり他機関からも注目され、1日も早いサービスインが期待された。
システム構築にintra-mart Accel Platformを用いることにしたのは、信頼性が高く、実績ナンバーワンのワークフローエンジンであるため、安定したシステムを短期開発できるからだ。拡張性が高いため、急いで使い始め、年を追って機能を追加していくことも容易にできるとも判断した。
さらに宮川氏は、「プログラムを延々と書いていくのではなく、共通基盤の上に、機能モジュールをレゴブロックのように組み合わせて必要なシステムを作っていくイメージであり、開発生産性が高い」と評価する。
クラウド対応しやすいのもintra-martの特長だ。
千葉工大は数年前から、データセンタ利用やクラウド化を積極的に進めてきた。サーバ管理に学内職員が忙殺されることなく、サービス利用に徹することができるからだ。発注システムも、当然のこととして、サーバ管理が不要なクラウド方式を選択した。
発注システムは、約1年間の開発や準備期間を経て、2014年4月、本稼働を開始した。
利用者すべてにIDとパスワードを付与し、所属学部・学科、申請内容、金額によって、自動的に承認ルートが決まる電子決裁システムである。 利用者の権限に合わせて必要なメニューだけを表示したり、入力ミスのチェック機能を組み込むなど、使いやすさを高める工夫をいろいろ施した。
「不正はきちんと防止しつつ、同時に、ワークフローが回るスピードも重視しました。『明日の実験に必要な試薬』にも対応できるシステムになっています」と宮川氏。
予算管理も重要な要素だ。予算不足は困るが、執行の遅れや目的外使用も困る。
公的研究費の計画に記載されている目的を厳密に判断できるのは、やはり「人」だ。配分機関やプロジェクトによって、購入可否判断基準や条件も違う。プロジェクトによっては、別途の届け出が必要なものもある。
「こうした目的適合を管理しているのは産官学融合課ですから、発注前に研究計画に沿った案件といえるかを間違いなく判断して、確実に回してくれるのが、発注システムの重要な役割です」と、研究支援部 産官学融合課 課長 大平一哉氏は語る。
以前は、最終段階で研究計画との不一致に気づいて差し戻しになったりすると、対応に大変な時間がかかっていたが、こうした問題は発生しなくなった。
また、用度課は、日々の発注を処理するだけでなく、商品・価格は妥当であるか、内部統制を強化する役割を担う。
こうしたときに役立つのが、データ集計参照ツール「ViewCreator」だ。intra-mart Accel Platformの標準機能であるため、他のツールを追加購入しなくても、データの検索・参照などが自在にできる。
「申請を一覧表示する機能はとても便利。進行が遅れているものは、誰を催促すればいいのか、定期的にチェックしています」と、施設部 用度課 課長の平田幸夫氏は言う。
効果
発注システムは、予算使用の健全なプロセスを堅持し、全体の流れを「見える化・透明化」するという大きな成果をあげた。
「予算確認後の発注」も徹底された。
省庁や独立行政法人が行った2014年度実地調査でも、「しっかりやっている」「トレーサビリティの高い良いモデルケースだ」と、評価を受けている。
「さらに、発注の前プロセスは、不正防止に多大な効果をあげており、全品の発注申請を電子決裁化した意義は大きい」と大平氏は強調する。
業務改革も進んだ。
千葉工大は、学生及び教職員全員にiPad貸与している。そこで、承認者はこのiPadを使って、学内に限らず学外でも自分が今いるところで電子決裁できる。
例えば海外出張しても、ワークフローが滞ることはない。システム化する前のように急ぎの押印を求めて、学科長や学部長を探し回る手間はなくなった。
「必要な資料が必ず添付されているので、『この型番はこういうものか』などと理解したうえで、承認チェックを進められます。承認スピードが速くなりました」と大平氏。
平田氏も、「データが電子化されているので、複数業者への見積依頼がやりやすい。紙の束を繰ったり、記憶に頼ることなく、過去の発注履歴を参照して的確な判断をすばやくできます」と深くうなずく。
こうした改革の相乗効果で、申請から発注まで2~3週間かかっていた案件が、数日で発注できるようになった。急ぎの案件は、正しい手順を踏んだうえで、その日のうちに発注できることもある。
未来
次の課題は、相見積を効率よく取得するしくみだ。
取引先業者も発注システムに入れるようにして、業者への見積依頼、業者からの見積提示、さらには、用度課から申請者への見積結果のフィードバックまで、システム内で効率よく行えるようにしたいと考えている。
「電子決裁する領域を学外の業者にまで拡大し、見積プロセスまでシステムに取り込むことで、不正防止強化と業務効率向上の両面のメリットが期待できます」と前田氏は語る。
学外との取引までセキュアにできるのは、intra-mart Accel Platformの特長だ。
「申請―承認―発注」という現在の流れに、「見積り依頼―発注」まで組み込まれ、一本化されることで、全品検収もさらに効率的に行えるようになると予想される。
千葉工大は、システム共通基盤であり、業務改善基盤でもあるintra-mart Accel Platform上に、公的研究費利用の透明性の高い将来像を、次々に描いていこうとしている。
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