導入事例

総合システムインテグレーター(SIer)であるNECネクサソリューションズ株式会社(以下、NECネクサソリューションズ)は、顧客の業界が幅広く、手掛けるプロジェクトの数も多い。しかし、プロジェクト管理は長年Excelに依存していたため、データ入力における現場の負担や、複数のExcel帳票での多重管理が課題となっていた。さらに、プロジェクトごとに得た知見を社内で共有するための仕組みを整えたいという構想があった。そこで同社が導入したのが、システム共通基盤「intra-mart」だ。自社内の開発リソースを活用し、厳格な品質管理ルールに適合したプロジェクト管理システムを内製した。プロジェクト管理業務の一部をシステム化した一次開発のリリース後、すでに利用者の約半数が「10%以上の管理工数削減効果」を実感しており、品質管理部門の審査プロセスでは手戻りが劇的に減少した。こうした自社実践で培ったローコード開発のノウハウは、顧客へのSIビジネスにおける新たな強みとして生かされている。
課題
NECネクサソリューションズには約1,000人のSEが在籍しており、総合システムインテグレーター(SIer)として民間企業から自治体まで幅広い顧客に向けて、年間2,000件以上のプロジェクトを手掛けている。同社は従来、プロジェクトの基本計画やスケジュール、コスト、タスク、バグの情報、さらには品質分析結果なども、Excelで作成した約40種類の帳票でそれぞれ管理していた。同社事業戦略部門 技術戦略統括部 シニアプロフェッショナルの尾澤 浩司 氏は次のように説明する。
「約20年前に品質管理の取り組みが本格化し、プロジェクト管理のルールが厳格になるにつれ、帳票類が増えていった経緯がある。一方で現場のSEにとっては、プロジェクト管理に関わる複数のExcel帳票間で同一の管理項目があったり、プロジェクト管理用の帳票を基に上層部への報告用資料を作成する必要があったりと、データの二重入力や二重管理の負担が非常に大きかった」
また、手動のデータ管理による入力ミスや入力漏れも発生した。上長のチェック時や開発フェーズごとに設けられる品質管理部門による審査などで、差し戻しや修正が発生することも珍しくなく、円滑なプロジェクト進行が阻害された。
事業戦略部門 技術戦略統括部
シニアプロフェッショナル
尾澤 浩司 氏
さらに、プロジェクト完了後には「振り返り」や「教訓」などのナレッジをプロジェクト計画書(Excelファイル)に記録するルールがあったものの、蓄積されたナレッジはExcelの中に埋もれ、全社で十分に共有・活用されていなかった。そして、部門長や経営層が全社の稼働プロジェクトを迅速に把握するのが難しいことがガバナンス上のリスクであった。この状況を克服するべく、2024年9月にプロジェクト管理のシステム化に踏み切った。
導入
プロジェクト管理システムを構築するため、SaaSのプロジェクト管理専門ツールやワークフローシステムの採用、ローコードやプロコードでの開発など、さまざまな選択肢を比較検討したという。事業戦略部門 技術戦略統括部 DX推進グループ プロフェッショナルの西村 康一朗 氏は検討のプロセスを次のように振り返る。
「プロジェクト管理を専門とする複数のツールやサービスを候補として検討したが、約300の管理項目やゲート審査といった厳格な管理ルールとのすり合わせが難しく、自社向けに柔軟な開発ができる製品を選定しようと判断した。一方で、社内ルールは変化していくものでもあるため、スピーディーに改修や機能追加をすることが前提であった。そうするとプロコード開発よりもローコード開発を採用したほうがよいという結論になった。また、社内ユーザーの利便性の観点から、シングルサインオン(SSO)とワークフロー機能の実装は必須だった」
検討の末、要件をバランスよく満たしている製品としてintra-martの採用が決まった。尾澤氏は「intra-martは歴史のある基盤製品だが、『IM-BloomMaker』などモダンなローコード開発機能も備えており、常に進化している点を評価したことが、採用を決める大きなポイントだった」と話す。
事業戦略部門 技術戦略統括部
DX推進グループ プロフェッショナル
西村 康一朗 氏
コスト面でも、将来的な改修コストや内製化による運用負荷の軽減などを総合的に評価し、「TCO(Total Cost of Ownership)で見れば最も安価かつ最適になると評価した」(尾澤氏)という。
さらに、NECネクサソリューションズ自体がintra-martのプラチナパートナーであり、SIビジネスにおけるintra-martの導入支援実績も豊富だ。社内にintra-martのプロフェッショナルな開発チームがいるため、質・量ともに十分な内製化リソースを確保できる見通しが立ったことも、採用を決める上で大きな安心材料となった。
製品選定後、システム設計や画面要件のすり合わせを行うフェーズからは、intra-mart基盤を活用した社外向け開発で実績を持つグループのメンバーがプロジェクトへ合流した。エンタープライズSI部門 エンタープライズ開発統括部 メディア・共通SIグループ プロフェッショナルの森井 陽平 氏はシステムの開発過程を次のように説明する。
エンタープライズSI部門
エンタープライズ開発統括部
メディア・共通SIグループ
プロフェッショナル
森井 陽平 氏
「本プロジェクトの開発メンバーにはIM-BloomMakerでの開発経験がなかったので、社内にとどまらず、他のintra-martパートナーからも知見を得ようとした。システム設計や検証を進める段階から、IM-BloomMakerの開発実績が豊富なパートナーとも連携し、事前検証を徹底的に行った。プロジェクトが終了するころには自社の開発メンバーもひとりで開発できるまでにスキルを習得し、学習コストは当初想定していたほど高くなかったと感じている」
また、エンタープライズSI部門 エンタープライズ開発統括部 メディア・共通SIグループ 主任の畑中 敏秀 氏はローコード開発におけるバグの発生を防ぐための工夫について、次のように語る。
「設定ベースのローコード開発では、不適切な設定値が1カ所でもあるとバグの原因になる。そこで、開発の初期段階で設定値のルールを厳密な開発規約としてまとめ、開発者全員がそれを遵守して入力するプロセスを模索している。ローコード開発におけるバグ発生の防止については、今回のプロジェクトの経験を基に引き続き最善策を追求していく」
エンタープライズSI部門
エンタープライズ開発統括部
メディア・共通SIグループ 主任
畑中 敏秀 氏
開発後の検証・本番環境へのリリース作業や、設計・レビューの効率化においても、intra-martの機能が有効に働いたという。森井氏は「開発環境から検証環境、本番環境へと移行するプロセスで統合型ローコード開発ツールであるAccel Studioのリソース管理機能を活用したことで、各環境へリリースする作業が劇的に楽になった」と語る。また、畑中氏は、設計段階での手戻りを防ぐ工夫について、「IM-LogicDesignerでは視覚的に分かりやすくロジックを組んでいけるため、今後は大枠の処理フローをツール上でまず構築し、IM-BloomMakerで作成した画面から動作をレビューしたいと考えている。そうすれば、紙のドキュメント作成に頼る必要がなく、開発ツール上で認識合わせができるため、詳細設計にかかる工数を大幅に削減できるはずだ」と述べる。すでに現在進行中の二次開発の過程では上述の方法を実践に移しており、その結果として想定通りの効果を実感できているという。
効果
新システムは2025年10月に本格稼働し、現在は約400プロジェクトで社内のSE約600名が利用している。今後もプロジェクトや利用者は増える予定だ。稼働から半年後の2026年4月に実施した効果検証アンケートでは明確な成果を測ることができたと尾澤氏は語る。
「プロジェクトのあらゆる情報がシステム上で一元管理されることで、二重管理の負担が解消された。実際、利用者の約半数が、プロジェクト管理工数を10%以上削減できたと実感していることが、アンケート結果で明らかになった。特に効果が大きかったのは、入力バリデーションによる手戻りの防止だった。以前は不備のあるExcel計画書でもワークフロー上では承認されてしまうことがあり、後になって品質管理部門から差し戻され、修正後に再申請するという無駄が発生することもあった。新システムでは申請前に不備を自動で検知し、その場で修正できるため、差し戻しや手戻りは大幅に減少した」
タスクの期限超過を検知する自動アラート通知機能を実装し、管理者が個別にチェックする負荷も軽減された。システム化によって他プロジェクトの開発体制や予算規模をポータル画面から瞬時に確認できるようになり、プロジェクト完了後のノウハウ共有や全社レベルでの状況把握が容易になった。
今回のプロジェクトは、開発を担当したメディア・共通SIグループにもビジネス上の大きな財産となった。森井氏は「IM-BloomMakerでの開発を前提に、画面周りの設計・製造、テスト工数を低めに見積もっていたが、おおむね予定通りのコストで構築できた。今回の開発経験を基に『ローコード開発のベストプラクティス』を体系化できたと思う。自社プロジェクトで大規模なローコード開発の経験とノウハウを獲得できたことは大きな財産だ。これを生かし、単にローコードツールの使い方を支援するだけではなく、標準化やドキュメンテーション、品質管理といった弊社独自の豊富なSIのノウハウに基づいた『NECネクサソリューションズならでは』といえる伴走支援サービスを提供していきたい」と話す。
〇システム概要図
未来
新システムは、今後社内の全プロジェクトで利用する予定だ。それに併せてシステム部門だけでなく品質管理部門とも協働し、複雑化していた品質管理ルール自体のスリム化も推進したい考えだ。
また、全プロジェクトの稼働リスクを瞬時に俯瞰できるダッシュボードの構築も計画されている。「部門長や経営層が、稼働中の全プロジェクトにおける問題発生の予兆を即座に察知し、トラブルを未然に防止できる機能を実現したい。データの可視化に特化した製品を取り入れたとしても、利用者の入り口はシングルサインオンで共通化された本システムであり続けるため、使い勝手のよいシステムであることは徹底して追求していきたい」(西村氏)
さらに、これまで蓄積されてきたプロジェクトの管理データを高度に活用する計画もある。尾澤氏は「プロジェクト管理の定量的データと定性的データの両面から、AIを活用してプロジェクト遂行におけるさまざまなリスクを自動検知できる機能を構想している。一方で、プロジェクト完了時の振り返りや教訓などのテキストデータの活用にも、生成AIやAIエージェントは有効だと考えている。新規プロジェクトの立ち上げ時に、過去の類似案件を検索でき、トラブル対応などで有効だった対策を新システムが先んじて提示するような、組織知を最大限活用できる仕組みを構築したい」と今後の展望を語った。

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