導入事例

パナソニック デジタル株式会社(以下、パナソニック デジタル)は、グループ全社員約13万人が利用する大規模ワークフローシステムを「intra-mart」で刷新した。旧システムのサポート終了という移行期限が迫る中、独自の階層型権限管理「CUG」への対応や、各事業会社による「自立運用」の維持といった要件をクリアしつつ、スケジュール通りにサービスイン。将来的なAI活用も見据えた、パナソニックグループ全体の変革「Panasonic Transformation」(PX)を支える強固な基盤を構築した。
課題
パナソニックグループは現在、ITシステムだけでなく組織風土や働き方を含めたグループ全体の変革「Panasonic Transformation(PX)」を強力に推進している。PXを牽引するIT事業会社として、グループ全体の事業と経営を支えるITソリューションの企画・開発・運用を担っているのが、パナソニック デジタルだ。
同社が現在進めている大規模プロジェクトの一つが、グループ全社で利用するワークフローシステムの刷新である。長年利用してきた既存のワークフローシステムのサポートが2028年9月に終了することになり、新たなワークフロー基盤への移行が避けられない状況となった。オペレーションサービス統括部 事業会社ITオペレーション部 部長の長谷川 義範 氏は次のように説明する。
「パナソニックグループのワークフローシステムは13万人が利用しており、ワークフローの本数は約9,000本、ドキュメントデータ量は約7TBにも及ぶ。2023年の後半に旧システムのベンダーからサポート終了の連絡を受け、5年後には使えなくなることが判明した。それまでには新システムに移行しなければならないことから、早急に乗り換え先を検討しなければならなくなった」
新システムの選定は、この利用規模の大きさに対応可能なこと、そして既存の複雑な承認ルートを再現できることが前提となった。加えて重要だったのは、パナソニックグループ独自の「CUG(Closed User Group)」と呼ばれる階層型権限管理への対応だ。組織やプロジェクトごとのグループを階層化して管理する仕組みで、全社のあらゆるシステムにおける権限管理の基盤となっている。
CUGは「PCのフォルダ構造」に似た概念だという。特定の階層に配置されたユーザーは、その配下にある全ての階層にアクセスできるというのが権限付与の基本的なルールだ。例えば、部長が「部フォルダ」に配置されれば、その下にある全ての「課フォルダ」や、さらに深い階層の「係フォルダ」の権限も自動的に継承されるイメージだ。これにより、組織構造に即したスムーズな情報アクセスを実現している。
新ワークフローへの移行にあたっては、「既存のCUGを取り込み、同様の権限管理ができることが絶対条件だった。一から権限体系を整備し直すのは膨大な工数がかかり、現実的ではなかった」とICTプラットフォーム統括部 ICTソリューション部 コラボ基盤課 課長の小田切 仁志 氏は話す。
さらに、従来の運用体制の維持も重要なテーマだった。旧システムでは、グループの各事業会社の情報システム部門や現場部門が、自らの業務に合わせて帳票や申請フォームを作成、運用する「自立運用」が定着していたからだ。小田切氏は「13万人が利用するという環境下で、全てのグループ会社や部署の業務を当社が一括でサポートするのは不可能に近い。現場に任せられる部分は任せるという方針を今後も継続するためには、事業会社が自立して運用できるプラットフォームであることが不可欠だった」と説明する。
導入
こうした背景を踏まえ、新たなワークフロー基盤としてパナソニック デジタルが 選定したのは、intra-martのパートナーである株式会社NTTデータ関西が提案したintra-martだった。大規模ユーザーを1テナントに格納できるスケーラビリティ、旧システムの複雑な承認ルートの再現、独自の権限管理の仕組みであるCUGへの対応、そして各事業会社による自立運用という全ての要件を満たす製品として評価した。
さらに、料金体系の優位性と導入実績もintra-martの採用を後押しした。「クラウド型サービスの多くがユーザー課金であるのに対し、intra-martはCPUベースの価格体系であり、13万人が利用する当社の環境ではコスト的に大きな優位性があった。また、大手流通・小売り企業で30万ユーザー以上の運用実績があることも、安心できる材料だった」(小田切氏)
NTTデータ関西の提案も、パナソニックグループのニーズに寄り添ったものだったという。小田切氏は「当社が提示した約1,000項目にも及ぶ膨大な機能要件をしっかりと消化した上で過不足ない提案をしてもらった。2025年10月に新基盤でワークフローを稼働し、既存のワークフローやドキュメントを旧システムのサポート終了期限までに完全移行させるというスケジュールも要求が厳しかったはずだが、実現できると確約してくれた」と話す。
導入プロジェクトは、グループ各社の業務に支障をきたすことなくワークフロー機能を維持しなければならないという事情から、旧システムの機能を完全にintra-mart上で再現するという前提で進めた。
最も労力を要したのは、CUGの実装だった。intra-martと旧システムではグループ権限の取り扱い方式が異なっており、intra-martのロール設定機能を使って解決を試みた。しかし、CUGのグループ数は約10万、階層は20以上に達するため、大量のロール設定により処理負荷が増大し、レスポンスが著しく低下してしまったという。また、アプリケーションの機能面では、「旧システムでできていたことは全て新システムでもできる」状態を実現するために約200のアドオンを開発したが、それでも網羅できない機能が出てきた。
これらのハードルを乗り越えるポイントになったのが、ベンダーとの密接な連携だ。同部コラボ基盤課 エキスパートの中馬 修 氏は「大量のロール設定によるパフォーマンス低下については、キャッシュ機能を効果的に活用することでレスポンス問題を解消し、実用に耐え得るパフォーマンスを確保できた。また、アドオンで解決できなかった問題は、intra-mart側の改修でスピーディーに対応してもらえた。重要度の高い課題を早期に察知し、NTTデータ関西に加えて開発元のNTTデータ イントラマートにも協力、対応してもらえたことで、スケジュールの遅延を防ぐことができた」と振り返る。
基盤構築や先行移行期間を経て、2025年10月に新ワークフローシステムは予定通りサービスインを迎えた。現在、intra-mart上の新環境では約1,300本のワークフローを構築しており、順次利用を開始している。新環境へのワークフロー移行は現在も進行中で、2027年度中には完了させる。ドキュメントも2028年度前半までに移行を終える計画だ。
システム概要図
効果
現在、intra-mart上の新環境では約1,300本のワークフローを構築しており、順次利用を開始している。13万ユーザーという巨大な規模、かつ長年使い慣れた旧システムからの刷新であるにもかかわらず、滑り出しは順調だ。「少なくとも、導入済みの部門からクレームが上がっていない。これは当社の立場では非常に大きな成果だと考えている」と小田切氏は手応えを語る。ユーザーにとって違和感のない移行を実現し、スムーズな業務継続を支えている。
また、9,000本ものワークフローを約2年半で移行するというミッションを遂行するために、NTTデータ関西と連携して旧システムの定義ファイルを解析し、intra-mart用に自動変換するツールを独自開発。サービスイン前に先行移行期間を設け、移行難易度の低い帳票はこのツールを用いて事業会社自身で移行してもらい、難易度の高いものはパナソニック デジタルが支援するという体制を整えた。これにより、膨大な移行作業の効率化と現場による自立運用を両立させている。
同部コラボ基盤課 スペシャリストの國澤 華子 氏は「先行移行フェーズでユーザーに新しいワークフロー基盤に触れてもらって初めて出てくる要望も多かった。ユーザーに満足してもらえる形に仕上げるためには、ある程度長い先行移行期間を設ける必要があると実感した」と振り返る。
新基盤の導入効果は、現場の意識変革という形でも表れ始めている。小田切氏は「intra-martがパナソニックグループの標準ワークフロー基盤として定着しつつあり、これまで自部門でワークフローを作成していなかったユーザー部門でも、内製の動きが拡大している。さらに、自分たちが導入している他システムと連携させたいといった前向きな要望が寄せられるようになった」と語る。レガシーな旧システムでは実現が難しかったAPI連携などが容易になり、現場主体で業務改善を推進する機運が高まっている。
未来
新ワークフロー基盤の稼働は順調だが、プロジェクトはまだ道半ばだ。まずは未移行のワークフローを予定どおりに新基盤に移すとともに、現場からの要望を整理しつつ必要な機能拡充を進めていく。同部コラボ基盤課の八木 二三菜 氏は次のように展望を語る。
「ワークフローのエンジンにはintra-martを利用しつつ、申請から承認までのワークフローデータおよび関連ファイルをSharePoint Onlineに保存したい、また承認依頼の通知をMicrosoft Teamsで受け取りたいといった要望が多く寄せられている。こうしたニーズに対応するため、Microsoft 365との連携を一層強化していく方針だ。PDFファイルへの捺印機能なども実装を進めているところで、より現代的で効率的な業務環境を整備していきたい」
さらに、海外拠点とも一気通貫した業務プロセスを実現するための「グローバル対応」も進行中だ。また、各事業会社がintra-martの機能を最大限に活用できるよう、マニュアル提供にとどまらない導入推進サポートや教育体制の強化も計画している。
その先には「AI活用」の拡大を見据える。長谷川氏は「2028年度の移行完了と同時に、AI活用でスタートダッシュが切れるように26年度から準備を進める必要がある。起案の作成支援や承認ポイントのチェック支援はもちろん、日々大量に流れる決裁データをAIで総合的に分析し、経営判断や業務プロセス改善に役立てるといった活用を描いている」と力を込める。

NTTデータ関西は、大阪に拠点を置くNTTデータグループのシステムインテグレータです。これまで25年にわたりintra-mart製品に関する多数のプロジェクトに携わり、intra-mart Partner Awardを4度受賞するなど、豊富な実績を有しています。
パナソニック デジタル様におかれましては、パナソニックグループ13万⼈が利⽤するワークフロー基盤の刷新という困難なプロジェクトに対応されており、13万人規模のユーザーを単一テナントで管理することに加え、約9,000本に及ぶ複雑なワークフローへの対応や、既存の権限コントロールの再現ができるワークフロー基盤として、弊社よりintra-martをご提案し、ご採用いただきました。約1,000項⽬にも及ぶ多数の機能要件を満たす必要がある非常に難易度の高いプロジェクトでしたが、パナソニック デジタル様のご協力のもと、計画どおり新基盤の構築を完遂することができました。
今後は、新ワークフロー基盤におけるAI活用のご支援などを通じ、さらなるDXの加速をご支援し、新基盤の活用効果の最大化に貢献してまいります。
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