導入事例

課題
日精機工は1958年に帯広市で創業した、ベアリングをはじめとする機械部品の専門商社だ。現在は札幌市に本社を置き、道内6支店、道外1営業所(福島県郡山市)を展開する。各部品の有力メーカーとの密接なパートナーシップと技術力が強みで、部品販売だけでなく、生産設備の設計・施工・保守や省エネ診断、ベアリング診断など「ものづくり支援」のサービスにも注力している。同社が扱う機械部品は工場内の設備に使われるものが多く、道内に工場を持つ企業を中心に約2,000社の顧客を抱える。
販売管理システムは日精機工のビジネスを支える最重要システムの一つだが、さまざまな課題が顕在化していたという。総務部 部長の石川 範和 氏は次のように説明する。「従来のシステムは機械商社向けの専門パッケージソフトをオンプレミスで運用していた。情報システム担当者のリソース不足もありサーバーのメンテナンスなども十分ではなく、BCPやDRには長年の不安があった。データのバックアップ自体は2台の外付けハードディスクを使って毎日手動で行っていたが、こうした原始的な方法から脱却したいという課題感を長年持っていた」
また、営業担当者からは社外から販売管理システムのデータを参照したいという要望があり、VPNで接続できるようにしていたが、コストがかさむため限られたライセンス数で運用していた。必要な時に使えないという声も営業の現場からは上がっており、対応に迫られていた。

既存システムの機能面の課題も目立つようになっていた。「1明細ごとに伝票計上が必要で作業が煩雑だったことに加え、送料など商品とは別の明細の計上漏れが発生しやすいという問題もあった」と石川氏は振り返る。
前述のとおり道外にも拠点を置くなど、日精機工のビジネスは地域的なカバレッジを広げており、事業規模も拡大しつつある。ビジネスの成長を支えるに足る情報システムの必要性が高まったことを踏まえ、販売管理システムの刷新を決断。クラウド化を前提に、BCP/DR対策や安定性、利便性の向上を図ることになった。
※BCP(Business Continuity Plan)…企業が災害などの緊急事態に遭遇した場合、損害を最小限に抑えて事業の継続・早期普及を図るための計画
DR(Disaster Recovery)…システム障害や災害によってITシステムが停止した場合に、データの保全や業務システムを復旧させるための技術的・運用的な対策
導入
システムの選定過程では展示会にも足を運び、多くの製品を俎上に載せて検討を進めた。焦点になったのは業界特有の商慣習に合わせられるかだった。例えば価格が未決定のまま商品を顧客へ納品する「仮売上」というプロセスは、機械部品商社ならではのものだという。
「お客様に見積りを出して価格を決めた上で受発注、仕入れ、売上という流れになるのが一般的な取引だが、この日に工場のメンテナンスをしたいので部品を必ず納めてほしいなどの要望があった場合、価格を決めずに出荷しなければならないケースがある。『価格は決まっていないが受注は成立しており取引が開始されている』という状態をシステム上で管理する必要があり、製品選定の過程で一般的なパッケージソフトでは対応が難しいという結論になった」(石川氏)
こうした要件を踏まえ、日精機工はBeAd販売管理システムの導入を決めた。intra-martを基盤とするカスタマイズ性の高さを評価したかたちだ。また、クラウド基盤上での運用のしやすさも採用を後押ししたほか、導入・運用のコストも従来システム比で同等以下に抑えられると評価したという。
BeAd販売管理システムの導入にあたっては、intra-martのパートナーであるNTTデータ北海道が支援。2021年1月に要件定義を開始し、4月には基本設計に移行、同年6月から年内で開発を完了し、その後半年間のテスト稼働期間を経て、22年7月に本稼働に至った。
要件定義段階で既存の業務フローを改めて可視化し、可能な範囲での標準化や、非効率な業務の見直しを進めた上で新システムへの移行を進めた。具体的には、受注から売上、発注から仕入れ、請求、支払い、在庫管理という大きく5つの業務フローについて棚卸しを行った。「比較的単価の小さい商品を数多く販売するのが当社のビジネスの基本ということもあり、伝票発行までの工数削減は重視した」(石川氏)かたちだ。
要件定義の打ち合わせには、営業事務や各拠点の中心メンバーなど業務の現場に精通している社員に必ず参加してもらったという。石川氏は「身体に染みついた業務の流れを言語化して可視化するのは難しい部分があった。業務要件を見直すべきかシステムをカスタマイズすべきか迷う場面もあったが、NTTデータ北海道が工程ごとに業務フロー図を作成してくれて、それを基に現場の中心メンバーと密に議論できたこともあり、要件定義は比較的スムーズに進められた」と振り返る。
ただし、類似の業務であっても拠点ごとに微妙に異なるプロセスがあり、その調整には苦慮したという。この場合も現場と丁寧にすり合わせを進め、BeAd販売管理システムの標準機能で吸収できる範囲であれば拠点ごとの独自の運用を認めている。無理な標準化はせず、柔軟な対応ができる業務基盤としての同製品のメリットを生かした。
システム概要図
効果
BeAd販売管理システムは、導入当初から約80人の従業員全員が利用している。営業職の希望者にはノートパソコンを支給し、モバイルネットワークを通じて出先からアクセスできる環境を整えた。「BeAd販売管理システムはクラウド環境上で運用しており、外出先からのアクセスのしやすさも格段に向上し、営業チームのニーズに応えられた。また、クラウドベンダー側がインフラをしっかり運用してくれることの安心感は大きい。セキュリティやDR対策の懸念はクリアできたと考えている」と石川氏。案件単位で複数の明細をまとめて管理できるようにもなり、送料などの計上漏れも劇的に減った。従来の課題は全て解決できたという。
場所を問わず販売管理システムを利用できるようになったことに限らず、業務効率化効果は幅広く表れている。従来の販売管理システムはシステムをまたいで文字情報をコピー&ペーストする機能がなく、数字とアルファベットで構成される商品の型式情報を、顧客からの注文書を基に手入力する必要があった。情報システムの運用を担当する総務部の鈴木 一守 氏は「BeAd販売管理システムは別システムから商品型式をコピー&ペーストできるので、こうした手間がなくなり、入力ミスも大幅に削減できている」と話す。さらに、「前方一致によるサジェスト機能なども社内では好評だ。以前は別の検索画面を開いて必要な情報を探さなければならなかったが、入力作業が効率化されている」と手応えを語る。

販売管理システムのデータ活用もしやすくなった。ノンコーディングで表やグラフを作成できる機能であるintra-martの「ViewCreator」を使い、経営会議の資料作成などもスピードアップしているという。「データの参照がしやすくなったのはもちろん、CSV出力にかかる時間も大幅に短縮された。旧システムではデータを出力するのに一晩くらいかかる感覚だったので、大きな効果を実感している」と石川氏は強調する。
定量的効果としては、BeAd販売管理システムの導入により従業員1人あたり約10時間/月の残業時間を削減できたという。年間では1人あたり約120時間、全社で9,600時間の残業を抑制したことになる。「率直に言って我々も効果の大きさに驚いた。BeAd販売管理システムの導入時に業務フローの見直し、最適化に取り組んだこと、プロジェクトを通じて業務改善に対する意識が現場に浸透したことも、成果を高めた要因だったと感じている」(石川氏)
未来
今後はさらなる業務効率化を追求する。「見積から受発注、売上、仕入、回収、支払いまで、販売管理業務は各プロセスでどうしても手入力が多くなる傾向にある。また、得意先や仕入先の受発注システムへの入力を求められることも増えている。EDIやRPA、AIといった技術を駆使することで、そうした業務の自動化・効率化を進める仕組みを構築したい。細かい商品を高頻度で販売していくスタイルの当社のビジネスにとっては非常に重要な視点だと考えている」(石川氏)
また、販売管理システム以外の情報システムを含めて、データ活用の範囲も広げていく考えだ。石川氏は「商品の販売履歴や商品知識につながるような情報を社内に蓄積し、それを簡単に検索・活用できるようなシステムがあればお客様への提案も高度化できる。ここでも生成AIの可能性には注目している」と話す。
取り組みは現在進行形で、情報収集や試行を重ねている段階だが、データとデジタルテクノロジーを効果的に使いビジネスの成長につなげたい意向だ。BeAd販売管理システムやintra-martに対しては、その基盤としての期待も大きい。

NTTデータ北海道は、2020年よりNTTデータ イントラマート社と販売代理店契約を締結し、intra-mart製品の導入支援を行ってまいりました。
道内のお客様の業務課題に対し、intra-martを活用したソリューションを提案・導入し、業務効率化やDX推進に貢献させて頂いております。
日精機工株式会社様は、基幹システムにおけるBCP/DR対策の強化、および業務プロセスの改善が求められていました。そこで、クラウド環境で利用可能かつ、個別カスタマイズが可能な「BeAd販売管理システム」をご提案致しました。
日精機工株式会社様の商習慣に即したシステム構築を目指し、総務部様や現場の皆様と密に連携しながら、従来よりも効率的な運用が可能な環境整備に注力いたしました。
今後も、DXを推進し新たな価値創出を目指す企業様のパートナーとして、最適なソリューションをご提案・支援してまいりますのでご相談頂けますと幸いです。
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