導入事例

デジタルテクノロジーの積極的な活用による事業競争力強化や生産性向上に取り組む株式会社ソラスト(以下、ソラスト)にとって、経費精算の非効率性は長年の課題だった。事業ごとに経費精算の方法が異なり、特に多数を占める専門職社員では紙の証憑を用いたアナログな手続きが残り、経理部門の業務効率やガバナンスの観点で大きな課題となっていた。この状況を打開するために全社基盤として採用したのが、intra-martを基盤とする、経費精算機能を備えたバックオフィス業務向けアプリケーション「intra-mart Accel Kaiden!」だ。経理業務の効率化とガバナンス強化を実現し、申請者にとっても使いやすい環境を構築した取り組みのポイントとは。
課題
ソラストは「医療」「介護」「こども(保育)」を三本柱として、社会福祉領域で総合サービスを展開している。医療事業では全国約1,300の医療機関向けに医療事務業務の提供や人材派遣、病院経営支援などを行っているほか、介護事業では東名阪を中心に全国709カ所で幅広い介護サービスを提供。こども事業でも東京都を中心に67カ所の保育園を運営している。2025年に創業60周年を迎えた老舗企業であり、もともとは医療事務の教育機関として事業を開始し、人材育成のノウハウをベースに事業を拡大してきた。
近年では、デジタルテクノロジーを活用したサービスの価値向上、そして社内の業務効率化に注力し、競争力の強化に取り組んでいる。そうした観点で顕在化していた課題の一つが、経費精算の非効率さだった。約820人の総合職社員向けにはクラウド型の経費精算システムを導入し効率化を進めていたが、同社の全社員は3万3000人以上。そのほとんどを占める専門職社員については、紙の証憑ベースのアナログな経費精算フローのままだったという。
例えば、約2万5000人に上る医療事業の専門職社員は、紙の台紙に領収書などの証憑を貼付して本社経理部に郵送するという方法で経費精算を申請していた。それを経理部が確認後にExcelに転記して給与計算部門に共有、毎月15日払いの給与と合算して支払うという流れだ。また、介護・こども事業の専門職社員(約6,500人)は、介護事業所や保育園の小口現金で精算し、別途社内のワークフローシステム「ソラフロー」で申請した上で、証憑を台紙に貼付して業務委託先へ送付していた。
経理部にとっては、こうした紙の証憑の処理が大きな負荷となっていた。医療事業と介護・こども事業を合わせると、経費精算を申請する社員は月平均で約4,000人に上る。1人が会社の経費を複数回立て替えることもあるため、処理しなければならない証憑の数はその数倍以上になることも珍しくなかった。対応策として、証憑の確認やExcelに転記する作業を派遣社員や業務委託のリソースでカバーしていたため、コストが膨らんでしまっていた。
また、医療事業専門職社員の経費精算を毎月15日の給与支払い日に間に合わせるためには、7日までに給与計算担当部署にデータを渡す必要があり、月末締めで郵送された紙の証憑を短期間で処理するために、休日出勤で対応する場合もあった。管理本部 経理部 経理サポートグループ グループ長の古里 理人 氏は次のように振り返る。
「年始やゴールデンウィークなども例外なく同じ日程で作業を完了させなければならず、経理部の負担は大きかった。全社方針として事業規模拡大を目指している中で、今後も社員数は増える見込みだが、経理部門の人員は簡単には増やせない。医療事業専門職社員の経費精算では証憑が社員から直接本社に送付されることも多く、現場の責任者による確認プロセスが統一されていないなどガバナンス上の問題もあった」
こうした課題を踏まえ、ソラストは全社の統一的な経費精算基盤を整備する方針を固めた。
導入
具体的なソリューションとして「総合職社員向けに導入していたクラウド型の経費精算システム(旧システム)を全社展開するのも選択肢の一つだった」(古里氏)というが、この方法には複数の懸念点もあった。
まず、旧システムはユーザー数に応じて料金が変動する課金体系のため、3万3000人以上の社員を抱えるソラストにとっては割高だった。また、会計システム以外のシステムと連携しておらず、組織マスタや社員マスタなどは手動で登録していた。古里氏は「旧システムでは、経理部員が組織マスタや社員マスタの登録および削除を手作業で行っていた。(規模が大きい期首はシステム停止期間を設けていた)。しかし当社は毎月の入退社が相当数発生するため、システムの利用者を専門職社員まで広げた場合、手作業で対応することは難しいと考えた」と話す。
そこで、従来の経費精算方法や旧システムの課題を解決できる製品として同社が採用したのが、intra-mart Accel Kaiden!だった。この決断には、前述したソラフローの基盤としてintra-martを既に導入していたという背景がある。
「ソラフローは人事システムから組織マスタや社員マスタを連携している。intra-mart Accel Kaiden!はソラフロー上のモジュールとして稼働するため、手作業によるマスタの整備やメンテナンスが不要になるという期待があった。また、ソラフローは既に介護事業所や保育園の現金で精算した際の経費精算プロセスに組み込まれており、社員もintra-martの仕組みやUIに慣れていたことに加え、複数の経費精算システムを比較した際もintra-mart Accel Kaiden!の申請画面が最も見やすく、分かりやすかったため、導入のハードルが低いと判断した」(古里氏)
また、intra-mart Accel Kaiden!は他のintra-mart製品群と同様にコンピューティングリソースに応じた課金体系で、大規模な組織で利用する際のコストメリットが大きいことも重要なポイントだった。古里氏は「イニシャルコストだけであれば、より安価なソリューションもあったが、ランニングコストも加味するとintra-mart Accel Kaiden!が最もコスト効率良く当社の要求事項を実現できると評価した」と説明する。
intra-mart Accel Kaiden!の導入にあたっては、intra-mart のパートナーである富士通Japan株式会社が業務要件整理を、同じくパートナーの株式会社サザンクロスシステムズが開発をそれぞれ担当し、両社の支援のもとでプロジェクトを進めた(現在はサザンクロスシステムズが継続してソラストを支援している)。
ソラスト側で詳細な要求仕様を盛り込んだRFP(提案依頼書)の作成に時間と労力を注ぎ、富士通Japanとも丁寧なすり合わせを行ったため、システム構築の大まかな道筋を関係者間でしっかり共有した状態で要件定義フェーズに入ることができたという。
また要件定義では、各ユーザー部門の要望をヒアリングする際にintra-mart Accel Kaiden!の標準画面を活用。認識の齟齬が生じないように工夫した。画面上の項目選択によって初期表示を切り替えるなど、可能な限り手入力を削減できるUIを追求し、利用者の操作性にも気を配った。古里氏は「せっかく導入するなら、使ってもらえないと意味がない。事業ごとに業務のプロセスは全く違うが、可能な限り要望を実現し、使いやすいシステムに仕上げたかった」と話す。
今回のプロジェクトは、ソラフローを稼働させながらintra-mart基盤上に新しいシステムを構築する形になったことで社内調整にも時間を要し、「スケジュールは非常にタイトだった」(古里氏)。ウォーターフォール型で開発を進める前提でスタートしたが、要件定義の後半からは方針を転換。要件が固まった機能から順次開発に着手し、プロトタイプやモックアップを頻繁に提示してレビューを重ねるアジャイル的な開発手法にシフトした。このアプローチにより、要件と完成した機能との間のギャップを早期に発見し、システム改修や運用の見直しなどをスピーディーに進めることが可能になった。
パッケージ製品であるintra-mart Accel Kaiden!の標準機能では実現が難しい要件もあったが、メンテナンス性を考慮した機能実装を検討したり、場合によっては実装を断念して運用でカバーする方針にしたり、システムの持続可能性を重視して対応策を検討した。例えば、画面上の各種チェックやアラート表示といった要件については、変更が頻繁に発生し得るビジネスルールを「外付けのパターンマスタ」として分離。また、intra-mart上で動くビジネスロジックを簡単に作成できるローコード開発機能「IM-LogicDesigner」で処理フローを定義することにより、アプリケーション本体(WARファイル)を再展開することなく、ロジックの修正を可能にした。これにより、将来の仕様変更にも迅速に対応できる仕組みを整えた。
〇システム概要図
効果
intra-mart Accel Kaiden!は2024年8月に本稼働を開始し、以降、全社員が利用している。「導入前の課題については、ほぼ完全に解消できた」と古里氏は手応えを語る。
具体的には、まず専門職社員(医療事業、介護・こども事業)の経費精算処理に伴う紙証憑の処理プロセスがなくなった。これにより経理部の業務負荷が大幅に軽減され、休日出勤も不要になっただけではなく、派遣社員や業務委託のコストもゼロにすることができた。
また、経費精算システムにおける手作業でのマスタメンテナンスも不要になった。管理本部 経理部 経理サポートグループの加野 友也 氏は「従来、4月の組織改編や人事異動時には手動でのマスタメンテナンスに2~3日を要していたが、intra-mart Accel Kaiden!導入後は人事システムとの連携によってマスタ情報を取得できるようになったので、手間は大幅に減った」と説明する。
さらに、新たな経費精算システムの全社展開に伴い経費精算の申請・承認フローも統一したことで、ガバナンスを強化できたという。「全ての経費精算申請で、必ず上長が承認するフローにした。また、出張伺いや交際費使用伺いといった事前申請機能も搭載されており、規定に沿った適切な手続きが確実に踏まれるようになった。経理部にとっては、事前申請が漏れている経費について、申請者に都度確認するなどの作業もなくなった」(古里氏)。さらに、全ての証憑が電子帳簿保存法に則った方法で管理可能になり、法令対応も万全な形で経費精算の全社的なデジタル化を実現した。
申請者側のメリットも大きい。個人のパソコンやスマートフォンからも経費申請が可能になり、業務効率化につながっている。加えてシステム上に申請と紐づけてコメントを残せるようになり、申請に不備や不明点があった場合の関係者間のコミュニケーションが効率化された。問題解決までの時間は従来比で短縮できているという。
未来
同社は今後、intra-mart Accel Kaiden!の活用をソラストグループ全体に拡大していくことも視野に入れている。ただし、マスタ整備・メンテナンスの効率性を考慮すると人事システムとの連携が必須であることから、他の業務基盤のグループ会社への展開などと歩調を合わせながら、可能性を探っていく。
ソラスト単体では、稼働から約1年が経過した現在もintra-mart Accel Kaiden!は安定して稼働しており、今後もユーザビリティの向上に継続して取り組んでいく意向だ。古里氏は、「パッケージ製品としての標準機能のさらなる充実や、将来的な法令改正への柔軟な対応を望んでいる」として、intra-mart Accel Kaiden!の今後の進化にも大きな期待を寄せる。

当社は設立初期からintra-martの開発に長く従事してまいりました。ローコード開発や内製化支援などにより、提案・開発・運用・保守まで一貫して対応できる体制を強みとしております。
本プロジェクトでは、ソラスト様の経費精算方法の統一という課題に対し、【intra-mart Accel Kaiden!】の活用により経理業務の効率化やガバナンス強化、承認プロセスの可視化などを実現し、利用者にとって操作性の高いシステムを構築いたしました。さらに、申請書内処理や仕訳データ変換処理をローコードで実装し、運用後の保守性も向上しております。導入後は継続的な改善支援なども行い、お客様の業務に合わせた機能追加にも対応しております。
今後もintra-martを活用し、お客様に最適なシステムをご提供してまいります。
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