導入事例
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社様
三井住友トラスト・アセットマネジメント株式会社(以下、三井住友トラスト・アセットマネジメント)は、年間約1万件にものぼる社内稟議をデジタル化するため、ワークフローシステムとして「intra-mart」を導入した。複雑な組織構造と承認ルートに対応できる柔軟性と、豊富な導入実績に裏打ちされた信頼性の高さを評価したかたちだ。2019年の本稼働以降、稟議にかかる作業工数を約10%削減したほか、決裁漏れや決裁の停滞も解消し、業務効率化に大きく貢献している。
課題
三井住友トラストグループ傘下の資産運用会社である三井住友トラスト・アセットマネジメントは、2018年10月に三井住友信託銀行の運用機能を統合し、アジア最大級の運用会社になった。多様な投資家のニーズに応える専門性の高いサービスを提供し、顧客の資産運用に貢献してきた。2024年3月末基準で資産運用残高は約94兆円規模で、特に確定拠出年金では大きなマーケットシェアを持つ。
同社では2010年代後半から、業務変革に伴うデジタルテクノロジー活用に向けた取り組みが加速。特に年間約1万件にものぼる社内稟議については、紙の書類ベースでプロセスが構築されており、デジタル化を前提とした再構築の議論が活発化していた。
申請・承認に関わる社員にとっては非効率な稟議プロセスに無駄な時間を取られるのはもちろん、申請・承認フローが滞留した際に、状況の把握や滞留原因の特定に時間がかかっていた。同社では海外出張も珍しくない中で、10人以上の承認が必要な稟議もあり、最終的な決裁までに数週間を要することもあったという。IT推進部 IT推進 第2チーム チーフの山田 脩太郎 氏は「期限は絶対に守らなければならない中で、申請書類を人手で回覧し、都度個別に押印の依頼をするというかたちで決裁を進めていくのは、関係者にとって精神的にも大きな負担だった」と振り返る。
経営側の視点でも、書類紛失のリスクが高い点は大きな課題だった。こうした状況を受け、まずは契約行為の件数が多かった商品開発業務部と投資業務推進部の2部署でワークフローシステムの導入を検討することになった。
導入
ワークフローシステムの選定では、複数の製品を比較検討した結果、intra-martの採用を決めた。まず機能面では、複雑な承認ルートに対応できるかどうかが評価基準になった。山田氏は「当社の組織構造は複雑で、金額に基づくワークフローの分岐条件も多様。そうした要件に対応できる機能性の高さを重視した」と説明する。
さらに、信頼性の高さも重要なポイントだった。「金融におけるITシステム導入には厳しい基準があり、そこをしっかりクリアできることが重要だった。intra-martはワークフロー製品導入実績が豊富で市場シェアも高かったのでその信頼性を評価した」(山田氏)
intra-martを検討の俎上に載せたのは、intra-martセールスパートナーである株式会社フォーカスシステムズからの提案がきっかけだったが、同社による手厚いサポートが期待できたことも採用を後押ししたという。
製品選定後は、まずは商品開発業務部と投資業務推進部の2部署でintra-martの導入を進めた。既存の複雑な稟議プロセスからシステム要件を抽出する作業は一筋縄ではいかなかったが、組織横断でプロジェクトチームを立ち上げることでユーザー部門と緊密にコミュニケーションできる体制を構築し、運用時に支障が出ない範囲でワークフローの共通化、汎用化も進め、稟議プロセスの最適化を図った。
山田氏は「業務側の要件をintra-martでのシステム化の要件に落とし込む際には、フォーカスシステムズの支援も大きな助けになった。画面モックを用いたすり合わせなどにより、認識の齟齬を最小限に抑えて要件定義を進められた」と話す。こうした体制が功を奏し、汎用的な共通ロジックを活用して開発工数の削減にもつなげられた手ごたえがあるという。
具体的な開発では、承認の停滞を抑止するためのメール通知による承認リマインド機能や、ポータル画面上での承認依頼の一覧化、証跡管理機能などを重視した。「承認者が依頼に気づくようにしたいというのは大きな課題としてあったので、この機能にはこだわった。また、承認依頼を一覧化することで依頼の全容を把握しやすくすること、証跡管理機能により内部統制を強化することも意識した」(山田氏)
また、年に1回~2回発生する組織改編や将来的な申請・承認フローの変更に柔軟に対応して運用できる仕組みを構築するために、適切なマスタ管理も徹底した。
効果
商品開発業務部と投資業務推進部では、2019年に最大利用者数600人という利用規模でintra-martが本稼働した。100%アナログだった稟議プロセスをデジタル化しただけでも効果は大きく、稟議にかかる作業工数は保守的に見積もっても約10%削減できたという。IT推進部 IT推進第2チーム アシスタントチーフの長束 郁弥 氏は次のように説明する。
「当初の狙い通り、決裁をもらうために承認者を社内で探し回ったりする手間はなくなり、決裁漏れや決裁の停滞も解消された。決裁者が海外出張している場合などは代理承認機能を使って稟議を進めることができるようになっており、体感的には決裁完了までのリードタイムが従来の半分以下になった。また、起票する申請者も決裁者も過去の案件を参照したいというニーズは大きいが、過去データの検索性も従来比で格段に高まっている。過去の稟議を複製する機能などもあり、生産性の向上につながっている」
在宅勤務で稟議申請や承認ができる環境が整ったことも、結果的に大きなメリットをもたらした。2020年に入り新型コロナウイルスのパンデミックが起こると、リモートワークの要請が高まり、稟議の電子化ニーズは加速した。商品開発業務部と投資業務推進部で先行して導入したintra-martに対する社内の評価が高かったことで、他部署にもintra-martを活用した申請・承認の電子化が拡大。例えば2023年には人事部門が福利厚生などの申請・承認フローをintra-mart上に整備した。「これまで人事部門の多くは出社していたが、これを機に在宅勤務が可能になった」(山田氏)という。
〇システム利用イメージ
未来
intra-martによるワークフローシステムは社内で定着しつつあり、現場から機能改善や機能拡充に関する要望も寄せられるようになっている。現在、社内の申請・承認フローの約80%はintra-martでデジタル化しているが、これをできるだけ早期に100%に近づける努力を続けていくという。
目下進行中のプロジェクトとしては、コンプライアンス部のコンプライアンスチェックに関するワークフローの開発を進めている。長束氏は「intra-mart活用のノウハウを蓄積してきたことに加え、フォーカスシステムズには継続してサポートしてもらっており、開発は順調に進んでいる」と手応えを語る。
新しいテクノロジーや新機能の活用も積極的に検討していく方針だ。特に生成AIには大いに注目しているという。「ワークフローをしっかり作成するとマニュアルも膨大になってしまうが、100ページのマニュアルをユーザーが読んでくれるかというと難しい。生成AIを活用して、必要な情報をユーザーに簡単に届けられる仕組みを構築するというのは、現実的かつ有効な使い方だと考えている。また、過去データの検索性をさらに高め、稟議の作成を支援するといった用途でも生成AIが威力を発揮するのではないかと期待している」(山田氏)
ユーザーが事務作業に充てる時間を最大限抑制し、「本業」にリソースを重点的に投下できるようにするためのデジタル基盤として、intra-martへの期待は大きい。
本プロジェクトでは、複雑な承認フローと業界特有の厳格な内部統制要件という課題に対し、intra-martが持つ柔軟なワークフロー機能を活用することで解決しました。
決裁リードタイムの大幅削減という成果を上げることができたとのことで大変嬉しく存じます。今後も、25年にわたり培ってきた知見を活かし、ご要望いただいているコンプライアンスチェックワークフローの開発および、生成AI活用などintra-martを軸としたさらなる業務改革の実現に向けて、引き続き支援させていただきます。
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