導入事例
九州旅客鉄道株式会社(以下、JR九州)及びJR九州グループは、鉄道事業だけでなく、不動産・ホテル事業、流通・小売り、観光事業など、多角的に事業を展開している。そのためのキーになる施策として全社でDXに取り組んでおり、DXの基盤づくりにおいては、業務部門がイニシアティブを発揮して、業務のデジタル化やプロセス改善・改革を積極的に進めている。そうした活動の一環として、同社財務部は、NTTデータ イントラマートのクラウド型調達・購買システム「intra-mart Procurement Cloud」を採用して契約管理システムを刷新。契約書の起票から決裁までのリードタイムを大幅に短縮するとともに、電子契約の利用率向上にもつなげている。
課題
JR九州グループは現在、2022年度から2024年度を対象年度とする中期経営計画とリンクしたDX戦略「JR九州グループDX戦略2022‐2024」に取り組んでいる。「お客さま体験価値の向上」「オペレーション・メンテナンス改革」「働き方改革・生産性向上」を柱に、既存ビジネスを最適化した上で未来のビジネスを創造、変革していく計画だ。
DXの基盤整備にあたっては、セキュリティや全社基幹システムなどは情報システム部門が所管するものの、業務ごとに必要なシステムは、各業務部門が企画・構築のイニシアティブを取っている。そのための体制づくりとして、デジタル人材を社内に隈なく配置すべく、情報システム部門と各業務部門を横断した人事異動も積極的に行っていくという。
同社財務部財務課では現在、「財務デジタル推進プロジェクト」を進めている。財務部の中の幅広い組織の業務ヒアリングをしながら、デジタルテクノロジーを活用した業務効率化を主導していくもので、財務部財務課主査の山元由実氏、同主査の足立剛志氏の二人が担当している。足立氏も24年4月に情報システム部門から財務部に異動し、業務部門主導のDX基盤整備をけん引している。
この財務デジタル推進プロジェクトの中で近年の課題となっていたのが、旧契約管理システム(以下、「旧システム」という)のサーバー保守切れにどう対応するかだった。従来、「intra-mart」をシステム基盤として採用した独自開発の旧システムを使っていた。山元氏は「旧システムは、2016年の株式上場に向けた準備を進める上で課題となっていた契約管理を適切に行うために再構築したシステムであり、intra-martのワークフローエンジンを使い、様々なシステム制御をかけることで統制を強化した」と説明する。
しかし、システムの更新に想定以上のコストがかかりそうだったこと、さらには旧システムと連携させていた全社のワークフローシステムが刷新のタイミングを迎えたことなどを踏まえ、旧システムそのものの抜本的なリプレースを検討し始めた。
旧システムを核とした従来の契約管理の仕組みには、効率性の面でも課題があったという。足立氏は「旧システムと従来のワークフローシステムはデータ連携こそしていたものの、旧システムで起票し、申請・承認作業はワークフローシステムに別途ログインして行う必要があるなど、手順が煩雑で、処理を誤った際の修正作業も工数がかかっていた。必要な入力項目も分かりにくく、契約締結件数が多い年度末にユーザーからの問い合わせが集中してしまっていた」と振り返る。
さらに、同社は2022年に電子契約サービス「クラウドサイン」を導入したが、クラウドサインと旧システムの連携にも課題を感じていた。旧システムとワークフローシステムによる手順を経て決裁を完了した後、クラウドサインにも別途ログインしてさまざまな設定をする必要があったほか、取引先から事前に電子契約の承諾や取引先承認者の情報をメールで送ってもらい、その証跡を立案申請時に添付するなどの社内ルールもあった」(山元氏)。こうした複雑な運用が、電子契約の利用率が伸び悩む原因にもなっていたという。
これらの課題を網羅的に解決するソリューションとして導入したのが、intra-mart Procurement Cloudだった。
導入
契約管理システムの更改にあたってはさまざまな製品の情報を収集し、慎重に製品選定を進めたが、最大のポイントは新たな全社ワークフローシステムとスムーズに連携できるかだった。新しい全社ワークフローシステムには、ワークフローをはじめとするintra-martのさまざまな機能をクラウドで提供する「Accel-Mart」を採用することが決まったため、Accel-Martと最もスムーズに連携できる製品としてintra-mart Procurement Cloudを採用するのは自然な流れだったという。
加えて、クラウドサインともシームレスに連携できる点も採用を後押しした。山元氏は「intra-mart Procurement Cloudで管理する契約書のデータがワンクリックでクラウドサインに流れていくイメージで、申請者はクラウドサインに別途ログインする必要はなく、intra-mart Procurement Cloudだけで作業を完結できる点は魅力だった」と説明する。
さらに、モバイル決裁機能により関係者が場所を問わずワークフローを進めることができるようになり、申請から決裁完了までのリードタイム短縮が期待できる点も評価したとしている。
intra-mart Procurement Cloudの採用決定後は、まずトライアルで利用しながら、NTTデータ イントラマート側に必要な機能開発・実装の要望を伝え、アジャイル開発でパッケージ製品としてのブラッシュアップを共同で進めた。製品に対するフィードバックを反映しようとする姿勢と、要望に対する仕上がりをリリース後にすぐ確認できたことも良かったという。足立氏は「これまでいくつかのSaaS製品の導入に携わってきたが、柔軟にユーザーと共に製品をアップデートしていくNTTデータ イントラマートの姿勢は非常に新鮮に感じた」と振り返る。
山元氏も次のように話す。「旧システムで利用頻度の高かった機能については、かなりの部分をintra-mart Procurement Cloudの標準機能に反映してもらえた。当社独自の要件だったものについても、利用会社ごとにカスタム設定ができる機能として実装することで汎用性を実現しつつ、当社の要件にも応えていただいた。専任のカスタマーサクセス担当の方がこちらの要望意図を適切にくみ取り、難しい要望に対してもどうすれば実現できるかを考えてくれた結果だと思う。当社が利用するのはシステムだが、その後ろに信頼できる人たちがいることはとても大事なことだと本プロジェクトを通して感じた」
二人三脚でのintra-mart Procurement Cloudの機能拡充を経て、24年9月に全社での本番運用を開始。現在、約7,000アカウント規模で利用している。
〇システム利用イメージ
効果
JR九州では、年間5,000件超の契約を処理しているが、intra-mart Procurement Cloud上で契約書の起票から申請、決裁まで完結できるようになったことで、契約管理の仕組みがシンプルになり、業務効率の向上効果が見込まれるという。足立氏は「つい最近までは旧システムのヘビーユーザーの立場だったが、自分で使ってみてもintra-mart Procurement Cloudを核にした契約管理の仕組みは非常に使いやすいと感じる」と手応えを語る。
決裁者側の承認も大幅にスムーズになった。「旧ワークフローシステムはWindows 7までしか対応しておらず、Windows 7の仮想環境にリモート接続してWebブラウザを立ち上げ、承認をするというプロセスが必要だった。こうした面倒かつ余分なプロセスがなくなり、intra-mart Procurement Cloudに社用スマートフォンからアクセスすることも可能になった。現在は契約書の内容がモバイル上では確認できないという制約があるため、事前に契約書の内容は確認しておくなどの対応は必要だが、ワークフローが滞留する要因を明らかに削減できている。また、今後の機能拡充によるさらなる効率化を期待している」(山元氏)
クラウドサインの利用率も既に上がり始めている。電子契約を使わない場合は契約書を印刷して取引先とやり取りすることになり、押印した書類を原本として扱いつつ、PDF化して契約管理システムに保管しておくという作業も必要だ。クラウドサインの利用率を上げることで、アナログなフローに枝分かれして、処理しなければならないプロセスが増えるのを抑制する効果も期待しているという。「intra-mart Procurement Cloudを導入したことで電子契約も利用しやすくなったというアナウンスは積極的にしていきたい」(足立氏)としている。
未来
intra-mart Procurement Cloudを核とした契約管理システムのブラッシュアップは今後も継続する方針だ。グループ会社間の契約については、クラウドサインを使わずにintra-mart Procurement Cloudだけで契約のワークフローを完結できる仕組みづくりを目指したいという。「今後もintra-mart Procurement Cloudの継続的な機能追加をイントラマート社に期待している。」と山元氏は話す。
また、リース取引に関する会計基準が近く改正されることに伴い、新リース会計に適応したシステムも今後導入する計画であることから、新リースシステムとintra-mart Procurement Cloudの連携による業務効率化も図る方針だ。さらに、AIによる契約書のチェックや添削機能などの実装も検討していきたいとしている。
契約管理システムの全社的な統合、一元管理も将来的な課題だ。現状は、intra-mart Procurement Cloudとは別に、基幹システム内に工事契約の管理システムが存在している。「基幹システムの動向を踏まえた検討が必要なためすぐに何かできるというわけではないが、統一できたほうが効率的であるのは間違いない」と見ており、長期的な視野で情報システム部門とも連携しながら検討を進めていく予定だ。
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