導入事例
課題
大同火災は2022年4月1日から第14次中期経営計画をスタートし、事業活動を通じて地域社会の課題を解決し、「沖縄とともに成長し続ける企業」を目指している。中期経営計画とリンクしたIT戦略計画も策定しており、近年、デジタルテクノロジー活用への投資も加速している。
第13次IT戦略計画では、レガシーシステムからの脱却に注力。特に大きな課題だったのは、基幹システムの「脱メインフレーム」だった。アーキテクチャやUIのモダナイゼーションを進めながら、基幹システム全体をオープン系システムに移行するという難易度の高いプロジェクトを進め、2022年12月に移行が完了し、以降、安定稼働を続けている。並行して情報系システムの刷新も進めてきた。こちらは「脱Notes」を進め、エンタープライズ・ローコードプラットフォーム「intra-mart」を活用した社内グループウェア「ゆいマート」を2019年にローンチ。帳票とワークフローのデジタル化を進めてきた。2024年5月現在で申請書類等は74種類が整備され、申請書類100%ペーパーレス化を実現している。また、同社はゆいマートに先立ち、代理店向けポータル「BusinessConnect」の構築基盤としてもintra-martを活用しており、社内だけでなく代理店とのやり取りも含めたワークフローのデジタル化を実現。ユーザーの幅広いニーズに内製中心でスピーディーに応えられる環境も整備した。
情報システム部門を担当する常務取締役の阿波連宗哲氏は「基幹系の脱メインフレームは当社にとって初めて経験する規模と難易度の高いプロジェクトだったが、情報システム部門の高いモチベーションやパートナー会社の全面的な協力で乗り切ることができた。また、情報系システムは、「ゆいマート」と「BusinessConnect」をintra-martの共通の基盤上に構築したことにより、社内外を行き来するワークフローをスムーズに実現でき、業務効率は大きく高まった」と振り返る。
こうした「第13次IT戦略計画(2019~2021)」の取り組みを受け、同社が「第14次IT戦略計画(2022~2024)」で注力しているのが、顧客接点やさまざまな業務プロセスの変革だ。重点領域の一つである営業プロセスについては、営業支援システムを導入してデータドリブンな営業活動に転換していく方針を示している。
従来は複数のツールを併用して顧客情報や営業活動の情報を管理していた。Notes上に構築していた企業顧客情報の管理をゆいマート(intra-mart)に移管するとともに、同じくゆいマート上に、代理店情報や代理店営業の行動記録のためのシステムを新たに構築した。しかし、案件・商談管理についてはまだExcelを使うケースが多く残っていた。情報システム部システム開発課副長の宇地原諒氏は次のように説明する。
「情報管理のサイロ化による課題が併発していた。
例えば当社の代理店であり顧客でもあるという企業は少なくないが、そうした企業の情報は複数のシステムやツールにまたがって、一部は重複しながら管理されることになる。そのため、入力作業や閲覧作業に時間がかかり、非効率かつ煩雑になっていた。また、各種情報を探しながら資料を作成するのにも時間がかかってしまい、営業推進活動を支援する環境の整備が必要だと感じていた。」
営業戦略を立案する営業企画チームでも、従来の情報管理手法に対する問題意識が芽生えていた。営業企画推進部営業企画課統括主任の具志堅瑞那氏は「データがサイロ化していることで、管理職のマネジメントや各支社間の横の情報共有がスムーズにいかない部分があったのは事実。営業企画や施策を推進していく立場でも、将来を見据えてデータを一元的に管理し活用できる仕組みの構築が必要だと考えており、有効な手を打ちたかった」と話す。
こうした課題を解決し、営業プロセス変革の基盤となり得るSFAの導入を検討し、DPS for Salesを採用した。
導入
大同火災がSFAの導入を検討し始めた時期と近いタイミングでNTTデータ イントラマートがDPS for Salesをリリースしたこともあり、社内のIT戦略を統括する情報システム部としては、これを第一候補に製品選定を進めたい意向があったという。情報システム部次長 兼システム開発課長の前原潤氏は次のように説明する。
「最終的に、顧客情報管理や案件管理は当社だけでなく代理店も含めて一元的に管理できる仕組みをつくり、システムの全体最適化を考慮しながらビジネスエコシステム全体でプロセス変革を推進していく構想があった。そのためにはSFAとゆいマート、BusinessConnectの連携をさらに拡充していく必要があるため、intra-martを基盤とするDPS for SalesがSFAとしても最適解ではないかと考えていた」
一方で営業側からは、外資系大手ベンダーのSFA製品を使いたいという声が上がっていた。この製品には保険業界向けに機能拡張されたパッケージソリューションなど、情報管理をサポートする多くの機能が備わっていた。ただし、導入コストに課題があった。
同社は開発パートナーとの協業体制による内製を長年手掛けている。宇地原氏は「コストに絶対的な差があることが製品選定の大きな要素になったのは確かだが、DPS for Salesの方が当社にフィットするSFAであると確信した。情報系と基幹系のデータ連携も内製しており、SFAと基幹系のデータ連携が必要になる場面でも、実績のあるintra-mart基盤同士の連携のほうがスピーディーに進められ、開発効率も高まる。今後の展開を踏まえると、むしろDPS for Salesを使うメリットのほうが大きいというのが情報システム部の意見だった」と説明する。デモを交えながらこうした考えを営業側に丁寧に伝えることでコンセンサスを形成し、DPS for Salesの採用に至った。
製品選定のプロセスで情報システム部と営業側が密にコミュニケーションを重ねたことで、導入フェーズにおいても関係部門が一体となり、ユーザーのニーズをきめ細かく吸い上げたうえでカスタマイズやアドオンを施すことが可能となった。開発チームは宇地原氏、営業側は営業企画課の具志堅氏が中心となり、週2回から3回のペースで打ち合わせを重ねた。営業側の要望を受けてプロトタイプを開発し、レビューを受けてさらに改善を重ねる作業を繰り返していった。
具志堅氏は「せっかく導入するなら徹底的に使ってもらえるシステムにしたいと考え、打ち合わせの中で妥協せずにさまざまな意見を伝えた。開発側と密に連携し、手探りではありながらも意図通りのシステムを構築することができたのではないか」と手応えを語る。宇地原氏も「徹底的にUI、UXを意識した開発を進めることができ、内製のノウハウをさらに蓄積できた」と話す。
要件定義は2023年7月に完了し、同年8月から開発、テストを進め、2024年2月にトライアルを開始。5月から本稼働している。本稼働前にユーザー向けの情報提供や研修なども実施し、「使ってもらえるシステム」を意識した取り組みを進めた。
システム概要図
効果
現在、同社は営業企画推進部署、営業担当部署を中心にDPS for Salesを200人規模で利用している。定量的な導入効果の算出などはこれからだが、定性的な効果は既にさまざまなところで現れている。
DPS for Salesの導入により顧客情報と案件情報、さらには営業の活動記録などを一元的に管理できる環境が整った。また、さまざまな情報に紐づけてコメントをオープンにやり取りできる機能も実装している。これにより、情報やナレッジの共有がスムーズになった。「営業担当者の活動記録に対する賞賛コメントやアドバイスも全員に可視化され、インタラクティブなコミュニケーションが気軽にできるようになった」(具志堅氏)という。
活動記録やメッセージに対するリアクション機能をカスタマイズし、最もポジティブなものとして「きらぴか」という独自のリアクションを送信できるようになったことも、現場のモチベーション向上につながっている。
「ビジネス上はメガ損保などとも競合する中で、沖縄県に拠点を置く損保会社として、小さくてもキラリと光るダイヤモンドのような会社として地域に貢献していこうという考え方が社内に根付いている。それが『きらぴか』というネーミングに反映されている。ユーザーが自分たちのシステムとしてしっかり使っていこうと思える仕掛けをつくることもUXにおけるこだわりだった」(具志堅氏)
また、DPS for Salesに登録したExcelシートから必要なデータを集計して集計帳票を作成する機能を活用することで、従来Excelで管理していた帳票イメージのまま、使い勝手を変えずに業務を効率化できた。さらに、DPS for Salesの導入にあたって、活動記録をスマートフォンから入力できる簡易入力画面も開発しており、営業担当者が外出先で処理できる業務範囲が広がり、隙間時間の有効活用にもつながっている。
未来
今後の展望としては、前述のとおり、DPS for Sales、ゆいマート、BusinessConnectの機能拡充と連携を推し進め、社内、代理店網を含めたプロセス変革を推進する。さらに、マーケティングオートメーション(MA)ツールなども導入し、デジタルマーケティングの基盤づくりも進めていく方針だ。
情報システム部長の石垣正彦氏は「現在、データレイクの構築に取り組んでいる。当社システムのデータはもちろん、オープンデータなども含めてさまざまなデータを取り込んで一元的なデータ基盤として活用し、セールス、マーケティングをデータドリブンにしていきたい。DPS for Salesの導入プロジェクトを通じて、そうしたイメージを社内で共有できたのも大きな成果だった」と話す。
基幹系システムのアップデートも継続し、2024年4月にはインフラ刷新策としてクラウドリフトに着手した。全基幹システムをクラウドに移行し、運用コストを抑えるとともに、開発の柔軟性向上やBCPの強化につなげたい考えだ。DXの基盤整備を全方位で進めていく。
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