導入事例
デジタルトランスフォーメーション(DX)を経営課題として捉える企業は増えているが、レガシーシステムを刷新してモダンなIT環境を整備することはDXの基盤づくりの基本と言える。化学メーカーの三洋化成工業株式会社(以下、三洋化成工業)は、スクラッチで開発したメインフレームの基幹システムを最新のERPパッケージに移行するとともに、ワークフローを含むフロントシステムも刷新。業務ごとに乱立していたワークフローの統一基盤として機能しつつ、ユーザーの要望に応えてローコード開発とスクラッチの両輪でつくり込んだ複雑なフローを無理なく移行できる製品として採用したのがエンタープライズ・ローコードプラットフォーム 「intra-mart®」だった。DX推進のカギを握る基盤製品として、活用のさらなる高度化も視野に入れる。
課題
界面活性剤をはじめとする機能化学品を主力製品とする三洋化成工業は、化学の枠を越えたイノベーションで環境や社会課題の解決に貢献するという目標を掲げ、経営変革に取り組んでいる。「新中期経営計画2025」では、DXの推進によりデジタルテクノロジーをフル活用してサプライチェーン全体を再構築し、大規模な業務プロセス改革・改善を進めていく「ものづくり大改革」に注力している。
DXの基盤づくりの中心となるプロジェクトが、新ERPシステムの導入だ。従来の基幹システムはメインフレームでスクラッチ開発したものに会計システムを連携させていたが、2024年にメインフレームの保守期限を迎えることもあり、ERP製品への移行を検討していた。最終的にはSAPのERP製品であるS/4HANAの採用を決断し、2021年に導入プロジェクトがスタートした。
並行して検討を進めてきたのが、ERPのフロントシステムの整備だ。従来の基幹システムであるメインフレームのフロントシステムとして様々な周辺システムが構築されていたが、ワークフローの機能は周辺システムごとに独自仕様で開発されている状況だった。事務本部IT推進部主任部員の臼井文氏は次のように振り返る。
「ワークフローは業務システムごとにかなり自由につくり込まれていて、『乱立』と言ってもいいような状態だった。そのため運用保守業務も複雑になり、システムごとに異なるやり方やルールで進めなければならず、属人化してしまっていた。また、各業務部門からはもっと複雑なワークフローをシステム化してほしいという要望も多かったが、既存の環境では実現が難しかった」
既存の多様なワークフローの移行に加えて、システム化されていない複雑なワークフローの実装も可能で、S/4HANAのフロントシステムとして求められる柔軟なデータ連携機能を備えたワークフロー基盤を導入したい。そんな同社のニーズに応えたのがintra-martだった。
導入
ERPの導入を検討し始めた2018年の段階で、既にワークフロー基盤の統一プロジェクトは「スモールスタート」していた。臼井氏は「製品の情報をいろいろと集めてITベンダーからも話は聞いてみたが、実際に使ってみないことには評価もできない。そこで、当社の要求を満たす可能性のある製品としてintra-martを選定した上で、まずは小規模に導入してみることにした」と説明する。
採用のポイントになったのは、ワークフローシステムとしての充実した機能性だった。複雑な承認経路に対応でき、要件に応じてスクラッチ開発やローコード開発など最適な開発手法を選択できる点は大きな魅力だったという。さらに臼井氏は、「新しい基幹システムのフロントシステムとして活用するという前提だったため、外部システムとスムーズに連携できること、代表的なERP製品などとの連携実績が豊富であること、そしてエンタープライズIT市場で9,500社以上の導入実績がある点も、高く評価したポイントだった」と続ける。
intra-martの導入にあたっては、まずはデジタル化されていない業務を対象に、5つほどのワークフローを内製で構築。その過程でintra-martの知識と活用ノウハウを蓄積した。内製を担当した事務本部IT推進部主任の中山知紀氏は「特に(直感的な操作でアプリケーションの画面作成ができる)ローコード開発ツール 『IM-FormaDesigner』はとにかく使い倒して、標準機能でできないことはJavaScriptで実装してみた。できることとできないことをかなり細かいところまで把握することができた」と話す。
やがてS/4HANAの導入が確定し、新たなERPフロントシステムを改めて検討することになったが、「intra-mart以外の選択肢はない」というコンセンサスが既にできていたという。「小規模に導入してみてintra-martのワークフローシステムとしての機能は当社が求める要件を十分に満たすものだと評価できた。さらに、S/4HANA導入の基本構想を策定する中で、従来システムのフロント機能のいくつかはパッケージで対応できないことが分かったので、多様な機能を柔軟につくり込めるintra-martをそうしたアプリケーションの開発基盤としても活用できるのではないかと考えた」(臼井氏)
S/4HANAのフロントシステムとしてのintra-mart導入プロジェクトは2021年10月にスタートし、最終的に既存ワークフローの約8割にあたる28申請156フローをintra-martに移行したほか、物流管理システムをintra-martで構築。NTTデータイントラマートのBPMパートナーである株式会社NTTデータ関西が、既存ワークフローの整理や移行対象の選定から要件定義、開発、テスト、運用まで網羅的に支援した。
物流管理システムはスクラッチで開発を進めたほか、ワークフローはIM-FormaDesignerではなく、新しい画面作成のローコード開発ツール 「IM-BloomMaker」を標準として採用した。ローコードで画面作成ができる点は共通だが、IM-BloomMakerはより自由度の高い画面作成が可能だったことが決め手だった。中山氏は次のように説明する。
「既存システムのワークフローはスクラッチで開発されているため自由度がかなり高く、ユーザーの要求も高度だった。IM-FormaDesignerではそうしたニーズに対応できないことも多かったが、かといってintra-mart上にスクラッチでつくり直すのも時間と手間がかかりすぎるという課題があった。しかしNTTデータ関西にも協力してもらって調査・検討を進めた結果、IM-BloomMakerなら高度で複雑な要求に応えられるという結論になった。修正もしやすく、保守性を考えてもIM-BloomMakerを採用するのが合理的だと判断した」
プロジェクト開始から1年半後の2023年4月、S/4HANAと同時にintra-martを基盤とするERPフロントシステムも本稼働に漕ぎ着けている。
■本システムの全体
効果
業務システムごとに乱立していたワークフローをintra-martに集約したことで、ユーザーにとってはワークフローの操作性が統一され、使い勝手が向上した。臼井氏は「従来は申請内容ごとに異なる操作を覚えなければならなかったが、UIが統一されたことで断然使いこなしやすくなった」と手応えを語る。物流管理システムも、ユーザーの要望を盛り込んでintra-martでの開発を進めたため、旧システムと比べてユーザビリティが向上している。
情報システム部門にとっても、ワークフローを含むERPフロントシステムの基盤が統一されたことでメンテナンスがしやすくなったことは大きな利点だ。さらにユーザーの要望を踏まえた改修や機能追加のハードルも下がった。「intra-martはローコード開発環境でシステムが部品化されているので、システムを変更したときの影響範囲が分かりやすい。フルスクラッチで開発していた旧システムは、どこを直したら影響がどこまで広がるのか把握するのが難しかった。ユーザーの要望に迅速に対応できず我慢してもらっていたところがある」(中山氏)。intra-martのローコード開発ツールを活用することでスクラッチ開発の場合、簡単なワークフローでも1週間以上の開発期間を要していたものが2日程度でユーザーに見てもらえるまでに短縮でき、感覚として7割程度の開発工数を削減できると実感している。
また、情報システム部門を束ねる事務本部IT推進部部長の長村芳樹氏は「intra-martの本格導入を通じてシステムの運用保守業務を標準化できたため、属人化という課題の解決に目処が立った」と手応えを話す。業務の引き継ぎや、組織としてのノウハウ、ナレッジの蓄積もしやすくなっている。
未来
ERPフロントシステムのカットオーバーは、ERPの本稼働とタイミングを合わせることを優先したため、前述のとおり全てのワークフローをintra-martに移行できたわけではない。重要度が低いと判断されたものなどは古いシステム基盤で動いているケースもあり、また、intra-martでの新規ワークフローの開発要望もあがっている。臼井氏は「2024年3月までは安定稼働を最優先に考えるが、次年度以降はワークフローの新規開発も、必要性を精査しながら取り組んでいく」と見通しを語る。
intra-martの活用範囲も拡大し、IT資産管理システムやシステム改善依頼のワークフローなど、ERPのフロントシステムとしての機能以外でも、開発基盤として積極的に使っていく方針だ。
また三洋化成工業の新中期経営計画2025では、社内の全部署がプロフィットセンターになるというスローガンを掲げている。長村氏は「IT推進部も利益にどう貢献するかが問われている。ERPや周辺システムのデータを分析・解析しデータを可視化することにより経営や事業の意思決定にスピーディーに活用できるようにするための基盤づくりを構想しているが、intra-martの活用によってより効率的に貢献できるのではないかと期待している」と話す。intra-martを有力な武器の一つとして、全社のDXを先導する決意だ。
当社はNTTデータ イントラマート社と同じNTTデータグループに属しております。これまで25年intra-martに関する案件に取り組んでおりまして、イントラマートアワードも3回受賞させていただいております。
三洋化成工業様においては、今回ERPを刷新されるタイミングで、ワークフローをintra-martに集約しました。ワークフローの開発においては、ERPフロントシステムとして複雑なワークフローのニーズにも応えないといけない、かつ運用保守業務の属人化抑止の観点から、ローコード開発ツール「IM-BloomMaker」での開発を採用いただきました。「IM-BloomMaker」の採用にあたっては当製品がリリース直後であったこともあり、要件定義前よりお客様のシステムの現状をお伺いし「IM-BloomMaker」での実現性評価をご支援させていただきました。要件定義前にお客様とすり合わせた実現イメージを基に、後続の要件定義、開発工程を進めていくことで、新たな開発ツール「IM-BloomMaker」での開発ツールの統一を実現できました。今後の運用に関しましては、当初課題となっていた運用の属人化につきまして緩和に繋がるものと考えております。
今後も三洋化成工業様にintra-martをより効果的に活用していただけるよう、様々な角度でご提案をさせていただきます。
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