導入事例
目黒区様
進化が加速する一方のデジタルテクノロジーを業務の基盤としていかに上手く活用するかは、あらゆる組織にとって重要な課題となっている。それは民間企業だけでなく、地方自治体などの公共領域も同様だ。自治体の内部業務向け情報システムは、財務会計、契約管理、文書管理、庶務事務、人事給与、電子決裁基盤などの機能がオールインワンパッケージで提供されることが多く、業務ごとに最適な製品を個別で採用するのは難しいケースが多い。ベンダーロックインにもつながりかねないこうした状況を打破すべく、目黒区は内部情報システムを統一するプラットフォームとして「intra-mart®」を採用。データ連携ツールと組み合わせ、さまざまな業務システムのハブとして活用することで、各業務に都度最適なシステムを選定できる自由を手に入れた。
課題
目黒区の内部情報システムはオールインワンパッケージを採用し、導入から10年以上が経ち、「システムの硬直化」という課題に直面していた。環境や業務の変化に対応するため、さまざまなカスタマイズが加えられており、制度改正などがあれば大がかりな改修が必要になるケースも珍しくなく、その都度多額のコストがかかっていた。
また、カスタマイズのドキュメントが適切に管理されていなかったこともシステム運用上の大きな向かい風になっていた。目黒区情報政策推進部情報政策課長の村田悠哉氏は「改修をするたびに、当該システムのカスタマイズがどのようなものだったのか精査するところからスタートするという非効率な運用になっていた」と振り返る。
加えて既存の内部情報システムのサポート期限が2024年9月に迫っているという外的要因も重なった。「コストの抑制や安定した運用を図るには、内部情報システムを刷新する必要がある」(村田氏)と判断し、プロジェクトが走り出した。
製品選定にあたり、大きな焦点となったのは、従来同様にオールインワンパッケージ型の製品を継続して選ぶか、もしくは各業務に最適な業務システムをマルチベンダーで調達して組み合わせて使うかという点だった。オールインワンパッケージを採用した場合、従来システムで顕在化した課題の多くが解決されないままになる可能性が高い。村田氏は次のように説明する。
「シングルベンダーのオールインワンパッケージを採用する前提だと、特定事業者に依存することになるし、業務ごとに適した製品を選ぶという発想ではなく、全体としての平均点が高いシステムを選ぶことになり、『これを実現したい』という能動的なシステム選定ではなく、失敗しないように及第点を目指す調達になってしまう。そこから脱却したかった」
一方で、マルチベンダー型調達のハードルの高さも自覚していた。同区情報政策推進部情報政策課係長の伊藤英幸氏は「かなり規模の大きい、しかも10年スパンで使うシステムなので、失敗が許されないという側面はもちろんある。マルチベンダーで業務ごとに最適なシステムを調達するにしても、システム間の連携をどう管理・制御すればいいのか、対応策は浮かんでいなかったのが率直なところだった」と話す。
理想と現実の狭間で揺れ動きながら情報収集し、さまざまなベンダーから提案を受ける中で、「システム間のハブになるようなシステム」を取り入れた考え方に出会う。それが、「intra-mart」を様々な業務システムのプラットフォームとして据え、個々の業務ごとに適した製品を導入しても、それぞれが持つデータを一元的に集約して管理できるシステム構成だ。
導入
intra-martを内部情報システムの共通基盤として使えば業務ごとに個別にシステム調達ができるのではないかというアイデアを目黒区に提案したのは、同製品のセールスパートナーである株式会社フォーカスシステムズ(以下、フォーカスシステムズ)だ。「共通基盤システムというカテゴリの製品を調達した経験がなく、そもそも自治体向けのパッケージシステムにはそうした概念がないと言ってもいいくらいなので、非常に新鮮だった。目黒区側でも調査を進めてみると、intra-martのようなシステムを共通基盤として採用すれば、業務システムをマルチベンダーで調達する方式が十分に実現できるという結論になった」と伊藤氏は話す。
従来システムでは、ベンダーから内部情報システム全体についてのプロポーザル提案を受けて調達していた。しかし、共通基盤システムであるintra-martを介してさまざまな業務システムをスムーズに連携できる見通しが立ったことで、各業務システムや基盤といった機能ごとに分割して、個別にプロポーザル方式の調達を進めることが可能になった。
プロポーザルの仕様書をつくるにあたって目黒区が強く意識したのは、定量的な目標を定め、評価基準を明確にすることだった。共通基盤については「内部情報システムの円滑な稼働に寄与するとともに、自動処理等の機能を活用することにより現在手作業で対応している定型業務を100%自動化する」というKPIを設定した。
伊藤氏は「個別の機能で最適なシステムを選定できる見通しが立ったわけなので、これまでのように失敗しないことを意識した製品選定ではなく、自分たちが実現したいことを明確に示し、その実現に資する情報システムを能動的に選定する仕組みにしようと考えた。調達方式の非常にポジティブな改革だった」と振り返る。
フォーカスシステムズのプロポーザルでは、intra-martを共通基盤として、内部情報システムを構成する各業務システムのポータルの役割を担わせ、データ連携ツールの「ASTERIA Warp」と組み合わせて使うことで各業務システムとスムーズに連携させるというアイデアを提示。最終的に、この提案が価格評価を含めた総合評価で最も高い評価を獲得し、採用された。
intra-martの導入にあたっては、目黒区にとっては初めて扱うカテゴリの製品ということもあり、フォーカスシステムズと丁寧にすり合わせをしながら、インターフェースの構築や他の業務システムとの連携機能の構築、本稼働に向けたスケジュールやプロセスの設計や管理を進めた。
「金額や機能面が優れたプロポーザル提案を採用するのは当然だが、今回は新たな調達方式にチャレンジしたこともあり、目黒区として不安を感じている部分に寄り添って一緒に考え、汗をかいてくれるパートナーを選ぶことも大事な要素だった。そうした観点でも、フォーカスシステムズの貢献は大きいと感じている」(村田氏)
■本システムの全体像
効果
共通基盤システムを端緒として、目黒区は財務会計システムや文書管理システムも同様に個別のプロポーザル方式で調達を進めた。伊藤氏は「intra-martの採用は大成功だった」と力を込める。
「例えば内部情報システムのオールインワンパッケージをつくっている大手ベンダーと比べても、財務会計システムに特化したら負けない製品をつくっている中小のベンダーもいる。共通基盤としてintra-martを採用したことで、そうした製品を導入することも可能になった。アップデートが進まず、業務の基盤として不十分なシステムが出てきても、内部情報システム全体を入れ替える必要はなくなるので、将来にわたって変化に対応しやすい仕組みを構築できた」(伊藤氏)
できるだけ “平均点が高い” オールインワンパッケージを選ぼうとしても「せいぜい70点だった」(村田氏)が、業務ごとに最適なシステムを調達し、かつそれらがintra-martの共通基盤を介してスムーズに連携できる環境を整えたことで、全てのシステムで「100点」を目指す調達にチャレンジできるようになったわけだ。
また、従来紙で交付していた給与明細のペーパーレス化も進んだほか、職員証の再交付申請など一部の申請業務をintra-martのワークフロー機能でデジタル化し、業務の効率化や申請ステータスの可視化を実現しており、電子決裁基盤としての役割も拡大している。
未来
当面の取り組みとしては、財務会計システムや文書管理システムのカットオーバーが間近で、まずはスムーズな本稼働を目指す。文書管理システムでは100%のペーパーレス化を現実的な目標として実現したい考えだ。
村田氏は「5年後には次のシステム入れ替えのタイミングが来るが、今回、システムのあり方を根本から変えたので、次回も自由な選定ができる。今回の判断が正しかったと5年後に真に実感するのではないか」と展望する。調達の自由度を継続的に維持・向上させていき、また(定型業務の)自動化100%を目指す上でもintra-martによる共通基盤システムもまだブラッシュアップを重ねていく方針だ。
本プロジェクトでは、長期的にご利用いただける柔軟性かつ信頼性の高いシステム基盤を実現するため、目黒区様と二人三脚で進められたことがプロジェクトの成功につながったと思います。
さらに、共通基盤としての機能だけでなく、ワークフロー機能を用いた申請業務のペーパーレス化などは、様々な機能を具備しているintra-martの強みを最大限に活かし実現いたしました。
また、今回のシステム導入コンセプトは、様々な業種業態のお客様が持つ課題にも幅広く適用できるため、本導入経験を活かし、様々な業務課題の解決に繋げていければと思います。
デジタルビジネス事業本部 SI&コンサルティング事業部 ERPソリューション部
部長 古屋 佑輔 氏
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