導入事例
日本の経済を支える中堅中小企業は、人手不足や人件費の高騰、少子高齢化による国内マーケットの縮小など、多くの課題に直面している。独立系、総合型のコンサルティングファームであるAGSグループは、とりわけ中堅中小企業に伴走して経営課題の解決に広く貢献するビジネスモデルで顧客の支持を拡大してきた。一方で、ビジネスが急拡大しているが故に、Excelに頼った従来の案件管理の手法では、情報を集約・活用するための負荷がさまざまな側面で高まり、戦略的な営業活動を進めるためのハードルとなっていた。この課題を乗り越えるために採用したのが、NTTデータ イントラマートの営業支援ツールである「DPS for Sales」だ。
課題
AGSグループは公認会計士98人、税理士104人(2024年1月時点)を擁するコンサルティングファームだ。税務や会計業務の支援だけでなく、事業承継や企業再生、IPO、M&Aなどを含めて企業経営の課題を広くカバーするソリューションサービスが評価され、中堅企業やその経営層を中心に支持を集めている。現在、顧客数は法人3,900社、個人1,600名という規模まで拡大している。
ビジネスの成長に伴い、人的リソースも急ピッチで拡充している。従業員数は現在600人規模だが、毎年50人以上が新たに入社している。デジタルテクノロジーの活用にも積極的に投資し、組織の急拡大に対応できる業務基盤の整備にも取り組んでいるが、近年、顕在化してきたのが、営業部門の情報管理・活用環境が十分に整っていないという課題だった。
同社の営業活動では、ビジネスパートナーである金融機関に顧客を紹介してもらい、課題に応じたソリューションを提案するという流れが一般的であり、年間4,000件ほどの新規紹介を受けている。
これらの案件情報は各営業パーソンを中心に各案件に携わるメンバーが独自にExcelで管理しているだけで、Excelの様式こそ統一していたものの、情報の更新頻度や精度にバラツキがあった。また、営業、実務と、立場が異なる複数のメンバーが同一顧客と接点を持っている場合、同じ案件であっても、入力法則が統一されていない複数の案件管理のシートが存在するといったケースも頻発していた。
週1回の全社営業会議では、案件情報を集約して資料を作成することになっていたが、重複する案件情報を整理して正確な情報を特定するプロセスが必要になるなど、データを整えて手作業でExcelシートをまとめる営業事務の作業の負荷は限界に近づいていたのが実情だった。営業会議のために苦労してまとめた資料も、情報の鮮度やクオリティにバラツキがあれば、経営判断をはじめ適切な意思決定の材料になりにくい。
税理士で常務取締役営業本部長の和田博行氏は「少人数の組織であれば、手作業で情報を集約し、営業部門のメンバー同士が顔を突き合わせて重要な案件の情報を共有するというやり方でも機能する。しかし組織の規模がどんどん大きくなっているため、従来のやり方では顧客動向のトレンドをつかむことも難しくなってきていた」と話す。
さらに従来の案件管理では、戦略的な営業活動に必要な情報を捕捉しきれていない点も課題だった。和田氏は次のように続ける。
「金融機関を中心に年間4,000件ほど新規の紹介をいただいており、本来は、受注に至らなくても当社のことを知ってくれたお客様は貴重なリードとして把握すべきだが、その仕組みがなかった。また、ご紹介いただいたお客様と面談して、先方のキーパーソンに会い、見積りを提示してフィードバックを受けて、といったように営業活動にはさまざまなプロセスがある。それが営業の現場でブラックボックス化してしまっていたので、プロセスも明確に把握したかった。案件情報を網羅的かつ一元的に管理・活用できるデジタル基盤が必要だと考えていた」
こうした課題に対するソリューションとして、AGSグループはSFAの導入を決め、最終的にDPS for Salesを採用した。
導入
SFAの導入にあたっては、複数の製品の情報収集を行った。一定の市場シェアのあるベンダーの製品についてはトライアルで利用してみたが、画面構成が複雑で使い勝手もAGSグループの営業スタイルにはフィットしなかった上に、「高機能ではあるが、使いこなせなければ高コストで投資対効果が低い」(和田氏)という結論に至り、採用を見送った。
そんな中で、intra-martのセールスパートナーであるパーソルプロセス&テクノロジー株式会社から提案されたのがDPS for Salesだった。
ICT部ITチームマネージャーの永田亮輔氏は「金融機関からの紹介が案件の起点になることが多いのが当社の営業スタイルで、紹介元の金融機関情報をどう管理するかは非常に重要なテーマだった。DPS for Salesはトライアルで使用したシステムと比べてコスト面で圧倒的な優位性があったし、画面のカスタマイズにしてもデータの持たせ方にしても、当社で必要な管理項目の実装が容易に実現できそうだったのが決め手になった」と選定の理由を説明する。
また、AGSグループはパーソルプロセス&テクノロジーの支援を受け、当時既にエンタープライズ・ローコードプラットフォーム「intra-mart」を様々な業務アプリケーションの開発のプラットフォームとして、販売管理システムや顧客管理システムを構築、活用していた経緯もあった。「DPS for Salesよりも安価で機能が絞り込まれたSFA製品も検討はしたが、販売管理や顧客管理など営業の案件を起点として後続の業務プロセスに関わる既存システムとのスムーズな連携は必須だったし、将来的な拡張性を考えても、(同じintra-mart基盤上で稼働する)DPS for Sales以外を選択する合理性がないというのが社内で一致した見方だった。UIも、使い慣れているintra-martとほぼ共通で、ユーザーが違和感なく使いこなせるのではないかという期待もあった」(永田氏)
導入製品の決定後は、和田氏を中心とした営業部門の主要メンバーとITチームでプロジェクトチームを構成。2022年3月、4月の2カ月で要件定義を固めた。ユーザーである営業部門の要望は尊重しつつ、ガバナンスを現場の利便性よりも優先してもらう必要がある部分などを丁寧にすり合わせたという。
「受注が確定した後に受注金額が変動するといったケースは営業の現場では珍しくないが、DPS for Salesでは変更履歴が取れない仕様だった。そのため定期的に営業情報を自動的に書き出し、変更があった場合に確認することは出来る仕組みとした。
既存のExcel運用とは異なり、営業部門の視点では不便な点もあったと思うが、リーダーである和田が率先して既存の運用にこだわることなく、代替手段でカバーする方向で議論をまとめてくれたのは大きなポイントだった」(永田氏)
その後はパーソルプロセス&テクノロジーの協力の下、基本設計、開発、テストを進め、2023年1月には運用開始にこぎつけた。Excelによる既存の案件管理シートは過去1年分のみDPS for Salesに入力した。「過去のデータを大量に入力することと、SFA稼働までのスピード感のどちらが大事か。組織が急拡大している当社の現状を踏まえると、スピードを取るべきだと判断した」と和田氏。ユーザー部門のリーダーの決断がスピーディーな運用開始を後押ししたかたちだ。
■システム導入概要図
効果
Excelシートによる従来の案件管理とSFAを並行運用したのは1カ月間のみで、以降は全営業パーソンがSFAを基盤に案件管理を行っている。その結果、全社営業会議の資料作成については業務負荷が大幅に軽減されたという。和田氏は次のように手応えを語る。
「システム化による案件管理のデジタル化によって、様々なデータの入力規則をはじめとする運用ルールを統一でき、メンバーの捉え方によるバラバラな記載といった属人性を排除できたことで、データの正確性を担保できるようになった。その結果、同一案件の重複や、不自然なデータを集計時に人力でチェックして、個別に営業パーソンに問い合わせをしながら修正・集約する手間と時間がなくなったのは非常に大きな前進だ」
従来の集約作業はその大変さから、ある種の経験が必要となり、特定のメンバーが行う作業として半ば属人化してしまっていたことも経営上のリスクだったが、それも解消された。
経営陣にとっても、DPS for Salesで一元的に管理された正確な案件情報を随時チェックすることで、月ごとや四半期単位の案件のボリューム感や顧客動向のトレンドを認識の齟齬なく共有しながらディスカッションし、経営判断ができるようになった。「営業担当に限らず多くの幹部がSFAを導入した意味を実感している」(和田氏)という。
また、潜在顧客への戦略的なアプローチによる新たな受注機会の創出も今後の効果として期待している。和田氏は「失注した案件に適切なタイミングで再アプローチするためのデータを、活用しやすい形で蓄積できているのは非常に大きい。中期経営計画の中でも、AGSと接点を持ったことがあるけれども受注できていないお客様へのアプローチは重点課題となっている。DPS for Salesをそうしたリード開拓の基盤として本格的に活用していく」と話す。
未来
運用開始から1年が経過し、今後はSFA活用の成熟度を上げていくことにフォーカスする方針だ。営業パーソンの日常業務にSFAへの情報入力が組み込まれ、定着しつつあるもの、入力頻度などにはバラツキがあるため、経営判断などに活用するデータとしての精度には課題があるという。営業部門におけるSFA運用のルールや業務プロセスをより細かく整備するとともに、案件情報の更新が一定期間滞った場合はアラートを出すなどの仕組みづくりも検討していく。
システム整備の観点では、intra-mart上で運用する販売管理システムや顧客管理システム、さらには外部の名刺管理システムなどとDPS for Salesの連携も進める。「案件が発生してから売り上げを計上するまで、intra-martをコアにして営業を起点に後続の作業も含む全体最適な業務プロセスを一気通貫で管理可能な仕組みが構築できる環境を実現したい」と永田氏は力を込める。SFAを起点に、営業活動の部分最適に留まらず、より広範な業務プロセスをデジタル化し、データを活用しやすい仕組みを整えることで案件獲得や業務効率化を進めたい意向だ。営業パーソンにもそのメリットを実感してもらうことで、SFA活用の定着度も上げていく好循環を目指す。
当社は、NTTデータイントラマート社と2020年よりセールスパートナー契約を締結し、
intra-martの導入や開発実績を積み重ねております。
AGSコンサルティング様では営業案件情報や営業資料をEXCELで管理しており、
会議で利用するため毎週手入力、手集計して情報を最新化しなければいけないという課題を抱えていました。
スクラッチ開発だとコストや工期が膨大になり、パッケージ導入だとAGSコンサルティング様の
要求事項が満たせないことから、カスタマイズが容易なDPS for Salesの導入を提案致しました。
DPS for Salesの導入によって集計帳票から最新の営業情報をいつでも出力しEXCELのように操作できるようになり、
また、カスタマイズによって要求にあわせて情報を管理できるようになりました。
今後もintra-martを活用しご支援させて頂きます。
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