入札に伴う調達関連業務にクラウド型購買システム導入で、事業者と職員の利便性を向上
システムによる業務標準化で属人化を排し、ガバナンスを一段と強化

行政DXはもはやあらゆる地方自治体にとって重要課題だ。財政規模など行政運営を取り巻く環境は自治体ごとに千差万別。デジタル投資においては、国が進める基幹業務システムの標準化やガバメントクラウドの活用推進などに対応しながら、住民サービスのユーザーエクスペリエンス(UX)向上や庁内の業務生産性向上などを広く進めるための独自の工夫が求められている。
大阪府 四條畷市(しじょうなわてし)は調達関連業務の網羅的なデジタル化に取り組む中で、事業構想から予算要求、随意契約の採用決定までの業務プロセスを標準化しつつ、クラウド型の購買管理システムである NTTデータ イントラマートの 「intra-mart Procurement Cloud」を採用。事業者の利便性向上を図るとともに、庁内業務のガバナンス強化と生産性向上を実現した。

目次

1.課題
見積書の授受を事業者の利便性高く、かつ効率的に
調達関連業務の標準化・定型化も必要不可欠

2.導入
案件ごとにステータス管理や事業者とのチャットが可能
クラウドサービス利用でコストも最適化

3.効果
事業者の利便性向上と四條畷市の業務負荷軽減を実現
業務標準化とガバナンスの確立が最大の成果

4.未来
「予算・契約・会計DX」で電子調達システム導入も
網羅的なデジタル化とデジタルツールの最適な配置でより大きな効果が生まれる

課題

見積書の授受を事業者の利便性高く、かつ効率的に
調達関連業務の標準化・定型化も必要不可欠

大阪府東部に位置する四條畷市は、人口約5万5,000人の自然豊かなベッドタウンだ。三好長慶(織田信長に先んじて「天下人」になったと言われる)の居城として知られる飯森城跡が国史跡に指定されるなど豊富な文化遺産を持つ同市は、デジタルテクノロジーの活用でも他の自治体に先駆けて積極的な取り組みを進めている。

2019年1月、市役所窓口での各種証明書交付手数料の支払いにQRコード決済を導入したほか、同年8月に開始した実証実験を契機に、オンラインで住民票の写しの交付請求ができるようになった。これらはいずれも全国初の取り組みだという。総務部兼財務部の桃井誠氏は「四條畷市は規模の小さい自治体だが、特に(17年の)東修平市長の就任以降、先進的な施策を打ち出してきたと自負している」と話す。

22年度には「市DX推進計画」を策定。来庁しなくてもさまざまな手続きをオンラインで済ませられる選択肢を幅広く用意するとともに、デジタル技術の活用を前提に行政サービスや庁内業務の変革を進め、市民の利便性や生活の質の向上を目指していく方針を打ち出している。その一環として同市は現在、調達関連業務のデジタル化と業務改革に取り組んでいる。

公共調達では、自治体が事業を構想・計画した後、関連の事業者から下見積書や仕様書などを収集する。そうした情報を参考にして仕様書を確定し、予算要求、事業化と進んでいくわけだが、予算化された後の契約手続きにおいても事業者と見積書をやり取りするプロセスがある。一連の業務では、四條畷市側から事業者に個別にEメールなどで見積りや情報提供、提案を依頼し、事業者側は押印した紙の書類を市役所の窓口に持参したり、郵送したりして受け渡しをするケースが圧倒的に多かった。

桃井氏は「事業者側に郵送コストや収入印紙代、来庁にあたっての交通費の負担、時間的な負荷を強いることになっていた。これを解消する必要があるという課題意識があった」と振り返る。ただし、単に書類を電子化してメールでのやり取りを徹底するという方式も有効ではないとも考えていた。「複数の案件でさまざまな事業者とコミュニケーションを取る必要があるので、メールアドレスや件名などで整理するしかないメールでのやり取りでは、管理に手間がかかるし、重要な連絡が埋もれてしまって適切に管理できないリスクがある」


大阪府四條畷市
総務部総務課主任
上田 仁志 氏

また、四條畷市側の職員の業務の標準化・定型化も課題となっていた。特に予算要求に向けた仕様書確定までの業務は庁内でも属人化が進みがちで、調達業務の経験が浅い職員にとっては負荷が大きいという。総務部総務課主任の上田仁志氏は「暗黙知化してしまっている業務を可視化、形式知化していく上でもなんらかのシステムを導入することが不可欠だと考えた」と話す。これらの課題を包括的に解決するために採用したのが、intra-mart Procurement Cloudだった。

導入

案件ごとにステータス管理や事業者とのチャットが可能
クラウドサービス利用でコストも最適化

プロジェクトの立ち上げにあたっては、デジタル田園都市国家構想交付金を活用。同制度の採択は「デジタル実装の優良事例」を横展開することが条件となっているため、そうした事例を支えるサービスやシステムについての情報を収集しつつ、導入製品の選定を進めた。

intra-mart Procurement Cloudは、「必要な時だけ必要なサービスを利用してコストを最適化できるクラウドサービスの利用が馴染むのではないか」(桃井氏)と考えていた四條畷市のニーズに製品提供形態と料金体系の面で合致した。もともと見積書の取得に関する事業者との連絡は、インターネット接続系のネットワークを利用したメール経由で行っていたこともあり、LGWAN経由での利用に限定する必要もなく、インターネット環境で提供されるSaaS型のintra-mart Procurement Cloudのコストは四條畷市にとって現実的な規模感だった。

また、管理画面から案件ごとに関連書類やステータスを管理できるだけでなく、チャット機能で事業者とコミュニケーションを取ることができるなど、ユーザーインターフェース/ユーザーエクスペリエンスが優れている点も四條畷市が高く評価したポイントだった。上田氏は「案件ごとにチャットを活用して事業者と双方向の連絡ができるのは、メールを使ったコミュニケーションとは段違いの効率化が期待できると感じた」と強調する。

本格的な導入に先駆け、 四條畷市は調達における見積書や関連書類の受け渡しにintra-mart Procurement Cloudが有効であることを検証すべく、 2カ月間にわたる実証実験および4カ月間程度の検討・検証を行った(製品提供は無償)。見積り依頼などをメールで行う場合に比べて、依頼1件あたりの作業時間が約3割削減できるなど、定量的な効果が認められたことが本採用を強く後押しした。

さらに、NTTデータ イントラマートのサポートのクオリティ(カスタマーサクセス)も高く評価しているという。桃井氏は「ITに限らず、利用コストと保守の充実度はトレードオフになっているサービスが多い印象だが、こちらの問い合わせに即座に回答してくれ、時には疑問点を先回りして的確に説明してくれるなど、製品を使いこなしてユーザーが成果を出していくという部分をしっかり支援してくれたのはありがたかった」と話す。


大阪府四條畷市
総務部兼財務部主幹
桃井 誠 氏

実証実験を経て、まずは予算要求に向けた仕様書確定のための情報(下見積書や関連製品の仕様書)提供依頼やその収集、さらには随意契約における見積依頼と見積書取得・管理にintra-mart Procurement Cloudを活用することを決定。23年度下半期から本格稼働している。

効果

事業者の利便性向上と四條畷市の業務負荷軽減を実現
業務標準化とガバナンスの確立が最大の成果

intra-mart Procurement Cloudの導入により、事業者にとっては来庁にかかる時間、コストの圧縮やペーパーレス化の促進につながっている。四條畷市側の業務負荷軽減の観点でも、実証実験時と同水準の改善効果が得られているという。

上田氏は「事業者側への情報提供・見積り依頼では、既存の見積り依頼フォームを活用することでメールを送る準備に相当する手間が省略できるようになったし、複数の事業者に同じ依頼をする場合も手続きが一度で済むようになり、依頼作業1件あたりの時間が短縮される以上の効果も実感している」と手応えを語る。定量的な導入効果は今後、さらに詳細な検証を進める方針だ。

ただしこれらの効果は一種の「副産物」であり、intra-mart Procurement Cloudの本質的な導入効果は別にあるというのが四條畷市の見方だ。桃井氏は次のように説明する。

「intra-mart Procurement Cloudの導入過程で、調達における見積書の取得などの業務を標準化し、ガバナンスを強化できたことが最大の成果だと考えている。従来、仕様書の確定や随意契約は各課が主体となってそれぞれのやり方、それぞれのノウハウで進めてきた経緯があり、上田も言及したように共通化や標準化には程遠い状態だった。しかしこうした業務が属人化してしまうと、審査の実効性に課題が生じ、不正につながりやすくなってしまうなどのリスクがある」

システム化を進める上で既存の業務プロセスを見直し、標準化したことは、公平公正な公共調達に資する仕組みと庁内外のステークホルダーの業務生産性向上を同時に実現するきっかけとなった。

◇本システムの全体像

未来

「予算・契約・会計DX」で電子調達システム導入も
網羅的なデジタル化とデジタルツールの最適な配置でより大きな効果が生まれる

四條畷市は現在、予算化から契約、支払いまで、調達関連業務のプロセスを網羅的に見直しつつデジタル化する「予算・契約・会計DX」に取り組んでいる。今回のintra-mart Procurement Cloud導入もその一環だが、同時に電子契約サービスなども導入済みだ。また、24年度以降は電子調達システムの導入を検討しており、これらのシステムとintra-mart Procurement Cloudの連携を進め、業務のデジタル基盤を強化・拡充していく。

また、intra-mart Procurement Cloudの活用範囲も拡大し、契約後の支払いにおける請求書受理・管理にも使う予定だという。

行政サービスや庁内業務のデジタル化は、局所的に進めるだけでは効果は限定的だ。「電子調達システムの導入も含めて網羅的な取り組みを進めることで、より大きな効果が生まれると考えている」と桃井氏。デジタル化によるさらなるガバナンスの向上を目指すとともに、デジタル化で創出した時間を使い、市民を誰一人取り残すことのないきめ細やかな行政サービスの実現に向けて、リソース配置も最適化できると見ている。

基本情報

大阪府四條畷市

所在地
大阪府四條畷市中野本町1番1号(四條畷市役所)
市政施行
1970年7月
事業内容
大阪府東部に位置する人口約5万5,000人の自然豊かなベッドタウン。デジタル活用に積極的に取り組む地方自治体として知られる
URL

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導入事例

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