導入事例
三菱マテリアル株式会社(以下、三菱マテリアル)は、「人と社会と地球のために、循環をデザインし、持続可能な社会を実現する」ことを私たちの目指す姿とし、銅を中心とした非鉄金属素材、付加価値の高い機能材料や製品を製造する非鉄金属メーカーだ。高度なリサイクル技術による廃棄物の再資源化を通じ、「循環型社会構築」への貢献を目指している。
中長期的な競争力強化を見据え、ビジネス基盤であるITのモダナイゼーションやデジタルトランスフォーメーション(DX)に取り組む方針を示しており、その基礎となる取り組みとしてバックオフィス業務領域のデジタル化やシステム刷新を進めてきた。その一環として、紙で印刷して押印、回覧することを前提としていた伝票処理をデジタル化するために「intra-mart®」を採用。ワークフロー基盤として活用し、業務の効率化や自動化を強力に進めている。
課題
三菱マテリアルは2020年にデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略「MMDX」(三菱マテリアル・デジタル・ビジネス・トランスフォーメーション)を掲げ、それ以降、ビジネスの付加価値向上やオペレーションの強化、経営の高度化にデータとデジタル技術をフル活用すべく、DXの基盤整備に注力している。
金、銀、銅、パラジウムなどの有価金属が含まれる電子機器類の廃基板など(E-Scrap)を世界中から受け入れ、有価金属を独自技術で再生するリサイクル事業が近年、大きく成長しているが、2021年にはE-Scrap取引の透明性と利便性を大きく高めるデジタルプラットフォーム「MEX」(Mitsubishi Materials E-Scrap EXchange)の運用を開始した。E-Scrap取引に必要なあらゆる情報を各ステークホルダーがオンラインでいつでも確認でき、三菱マテリアルと利用者のコミュニケーション機能も備えている。
MEXはMMDXの最初の成果であり、取引先の集客に大きく貢献している。こうした取り組みが評価され、2023年には経済産業省、東京証券取引所、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が選定する「DX注目企業」にも選ばれた。
2030年度までを対象とする新たな「中期経営戦略2030」も2023年に公表している。この中でDXをさらに強力に推進していく方針などを示しており、その基盤整備として情報システムのモダナイゼーションも進めている。
なかでも経理財務領域の業務については従来、2005年に稼働したフルスクラッチの会計システムを中心に運用していた。三菱マテリアルグループで情報システム部門の機能を担う三菱マテリアルITソリューションズの大野満氏(ITソリューション部事業システムグループグループ長)は「会計や税務の制度改正に対応した改修は都度行ってきたが、ユーザーの利便性向上や業務の効率化という観点でシステムをブラッシュアップするという取り組みはほとんどできていなかった」と話す。
例えば経理伝票の承認は、伝票を紙で出力し、申請、押印、回覧するという完全にアナログなワークフローで進められていた。無駄な印刷コストがかかることに加え、伝票に証憑を糊付けしたり、押印したりといった申請・承認に関わる業務を進めるためにはオフィスに出社しなければならず、承認フローのステータスが把握しづらく伝票類を紛失する可能性があった。また、伝票と証憑の回収やチェックが煩雑で保管場所の確保も必要といった課題も顕在化していた。
そこで同社は、MMDXがスタートした2020年にワークフローシステムの導入を決断。完全ペーパーレス化と承認の電子化を実現すべく「intra-mart」を採用した。
導入
ワークフローシステムの選定にあたって最も重視したのは、経理・会計領域の基幹システムとのデータ連携がしやすいかという点だった。
三菱マテリアルは現在、DX基盤整備のメインプロジェクトとして基幹システムの刷新に取り組んでいる。SAPの最新クラウドERP「S/4HANA Cloud」をAWS上で稼働させサブスクリプション形式で利用する「RISE with SAP on AWS」を採用し、2024年度に稼働する予定だ。ワークフローシステムについては、導入のタイミングではオンプレミス環境にある旧基幹システムのフロントシステムとして動かし、2024年度以降はクラウド環境にあるERPのフロントとしての機能を担うことができるという条件を満たす必要があった。
intra-martともう一つの競合製品が最終候補に残ったが、「intra-martは経理・会計領域の基幹システムとの連携実績が豊富である点に安心感があった。S/4HANAとの連携のしやすさはもちろんだが、既存システムとのデータ連携については技術面、性能面で優位性が明確だった」(大野氏)という。
コスト面でもintra-martのメリットは際立っていた。ワークフローシステムの対象ユーザーとして想定していたのは、経理・財務部門の社員と、各事業部門で経理伝票の事務処理に関わる社員で、約1,000人程度と大規模だった。大野氏は「競合製品が承認者数単位の課金だったのに対し、intra-martのライセンスはAPサーバのCPU単位で課金体系のため、コストはかなり低い価格に抑えることができた」と説明する。
ワークフローシステムの導入・構築を支援した日立ソリューションズは、intra-martを含む最終候補の2製品を両方扱っており、同社が三菱マテリアルの業務要件によりフィットした製品として提案したことも後押しとなり、intra-martの採用を決定した。導入にあたっては、三菱マテリアルがAWS上に構築している自社専用のクラウド環境「MMCGクラウド」にintra-mart基盤を構築した。
ワークフローの構築は、ローコード開発基盤としてのintra-martの特性を生かして進めた。日立ソリューションズがモックアップ画面を作成し、これをベースに三菱マテリアル側で要件や仕様を確認。大野氏は「要件が膨らみ開発コストが当初計画より大幅に増加しそうな場面もあったが、経理担当者の協力も得て要件の優先順位をつけ、優先度が低いものについては運用でカバーしたり、既存の業務プロセスを整理するなどして、トータルのコストは抑えることができた」と振り返る。
■システム構成図
効果
intra-martで構築したワークフローシステムは2023年4月に稼働を開始し、社内での活用もスムーズに進み、安定稼働を続けている。ワークフローシステムのUIを既存会計システムに似せて構築したことで、ユーザーにも抵抗なく受け入れられている。また、intra-martのローコード開発ツールの一つである「IM-LogicDesigner」を活用して会計システムのビジネスロジックを呼び出すかたちにしたことで、ワークフローの品質も担保されているという。
「既存の会計システムには、我々が脈々と築き上げてきたビジネスロジックが詰まっていたが、ローコード開発ツールで連携ツールを開発することによってそれをそのまま活用することができた。開発期間やコストも抑えることができ、ワークフローシステムの運用が想定通りにスムーズにできている実感がある」(大野氏)
経理伝票処理業務がほぼ全面的にデジタル化されたことによって、従来は紙で回覧していた月間14万件にのぼる申請・承認においてペーパーレス化を実現。無駄な印刷コストを削減するとともに、伝票を作成するアナログ作業がなくなり、テレワークも可能となったことから業務が大幅に効率化された。また、承認・回覧のステータス把握が容易になったことで、経理担当の社員がステータス確認のために承認者のデスクに出向いたり、差し戻しが発生した際に紙の伝票を持って社内を駆けずり回るようなことがなくなった。特に拠点間をまたいだ承認・回覧フローが発生する場合などでは、そうしたメリットを多くの社員が実感している手応えがある。
未来
本格稼働から半年間の安定した運用状況を踏まえ、2023年10月からは国内グループの伝票処理業務をintra-martに集約する。大野氏は「海外拠点や海外のグループ会社をどのようにカバーするかは今後検討すべき課題だが、ERPの稼働も控えているので、ERPフロントとしてのintra-martの活用を拡大していきたい」と話す。
これと並行して、ユーザビリティ向上を目的としたワークフローシステムのブラッシュアップにも取り組む予定だ。入力内容のチェック機能や入力補助機能の充実などを通して、差し戻しなどを極力排除するほか、OCRやAI機能との連携により、画像の読み込みから仕分けの入力、申請まで自動化する仕組みの構築も模索する。
中期経営戦略の達成に向け、情報システムのアップデートとブラッシュアップを継続し、DX基盤の強化に注力していく。
当社は、日立グループのデジタル事業の中核として、お客さまへソリューションを提供しております。NTTデータイントラマート社と1998年より協業関係を結び、2023年10月時点で150社以上にWebアプリケーションプラットフォーム製品「イントラマート」を導入してきました。
本プロジェクトは、三菱マテリアルさまの業務改善に向けた取り組みのひとつとして、既存システムを基準とした業務の見直しと新ERPとの連携を見据えたシステム作りを進めてまいりました。ローコードで開発できるイントラマートを当社がこれまで積み重ねてきたノウハウで最大限活用し、三菱マテリアルさまの迅速な意思決定と柔軟な仕様調整のご協力により、無事に2023年4月に稼働することができました。
今回の経理・会計領域のワークフローを契機に、今後もイントラマートのさらなる活用によって、三菱マテリアルさまの業務プロセス改善・EX向上に寄与できるようご支援してまいります。
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