ワークフローシステムの基盤をNotesから「intra-mart®」へ移行
内製化を推進し、スクラッチだけでなく、ローコード開発ツールによるアプリ開発も選択肢に

オリックス生命保険株式会社様

2022年度(2023年3月期)末で個人保険の保有契約件数が約490万件と大規模な顧客基盤を持つオリックス生命保険株式会社(以下、オリックス生命保険)。日本社会の高齢化などを背景に保険商品へのニーズが多様化する中、競争が激化する市場を生き抜くために重点施策の一つと位置付けるのがデジタルテクノロジーの活用だ。顧客とサービスの接点をデジタル化し、顧客体験、顧客満足度の向上に注力する一方で、社内の業務基盤刷新にも積極的に取り組んでおり、従来から長らく利用していた「Notes」のワークフロー関連機能の移行先として「intra-mart®」を採用。導入フェーズにおける試行錯誤を経て内製のケイパビリティを強化し、IT部門がデジタルトランスフォーメーション(DX)に本質的な貢献ができる体制を構築しつつある。

目次

1.課題
現場主導のアプリケーション乱立が大きな課題
ガバナンスが不十分だった運用体制の見直しに着手

2.導入
外部委託での挫折経験が内製化のノウハウを育てた
大規模ユーザーにはintra-martのCPU課金がメリット

3.効果
コーディングガイドラインを整備し属人化を防ぐ
ワークフローの汎用テンプレートでペーパーレス化も

4.未来
現状維持ではなく、常に新しい仕掛けを
DXのけん引役としても準備万端

課題

現場主導のアプリケーション乱立が大きな課題
ガバナンスが不十分だった運用体制の見直しに着手

1991年に設立されたオリックス生命保険(当初の社名はオリックス・オマハ生命保険株式会社)は、2006年の「医療保険キュア」発売を契機として個人保険分野に本格参入し、以来、順調に契約数を伸ばしてきた。顧客視点で「シンプルかつ分かりやすいこと」「合理的な保障を手頃な価格で提供すること」に重点を置き、商品ラインアップを継続的に拡充しているという。

事業が成長する一方で、近年、情報システム整備の観点からは課題も顕在化していた。IT本部ITプロダクトマネジメント部上級システムプロジェクトマネジャーの勝竜弘氏は「(事業の拡大に合わせて)部署や業務ごとに独自にシステムを整備してきたため、保守や運用の全体計画がなく、ガバナンスが不十分だった。結果として保守切れで対応が必要なシステムが乱立してしまっていた」と振り返る。


IT本部ITプロダクトマネジメント部上級システムプロジェクトマネジャー 勝 竜弘 氏

IT本部 ITプロダクトマネジメント部
上級システムプロジェクトマネジャー
勝 竜弘 氏

まずはIT本部でシステムごとに刷新の優先度を整理するためのロードマップを作成。「クラウドファースト」で技術分野や用途別にIT製品・サービスをIT本部が複数選定し、その中から必要なものを選択して組み合わせ、新たな業務基盤をつくり上げるというのが基本的なスキームだ。

社内の業務基盤として長年活用してきたNotesの刷新は、こうした取り組みの先駆けになった。「現場主導でさまざまなアプリケーションをつくることができるのはNotesのメリットだが、統一のルールや基準がないまま部門ごとの活用が進んでしまった。IT本部としては仕様書もないNotesが実際にどのように使われているのか把握できないことに危機感を持っていた」(勝氏)

もともとNotesはオリックスグループ全体で導入した経緯があり、製品のサポート体制や機能アップデートのロードマップが不透明な状況が続いていた中(直近ではNotesの提供ベンダーが2024年6月1日にサポートを終了すると発表)、グループを挙げてNotesの刷新に取り組む方針を2018年に打ち出した。こうした背景から、オリックス生命保険はNotesが担っていた機能を、ビジネス環境の変化に長期的に追随可能な製品に移行することを決断。社内の情報共有機能の移行先には「Microsoft SharePoint」、そしてワークフロー機能の移行先にはintra-martを採用した。

Notesからintra-martへの移行

導入

外部委託での挫折経験が内製化のノウハウを育てた
大規模ユーザーにはintra-martのCPU課金がメリット

Notesのワークフロー機能の移行先候補としては、まず6製品をピックアップし、最終的にオンプレミスで運用するintra-martと、SaaS型のワークフローサービスの2製品を詳細に比較検討した。intra-martを採用する決め手となったのは、専用環境ならではのセキュリティ、国内での豊富な導入実績、そしてコストだった。

今でこそクラウドファーストに舵を切っているが、Notesの刷新プロジェクトが本格化した2019年のタイミングでは、同社のIT戦略上、クラウドを積極的に使う気運は高まっていなかった。勝氏は「オンプレミスで信頼性とセキュリティを自社がコントロールできることを重視した」と説明する。また、当時既に6,800社以上(取材時現在は9,500社以上)の導入実績があったintra-martの国内外での実績と、充実したワークフロー機能には非常に安心感があったという。

コストはintra-martを選択する決定的な要素だった。「SaaSはユーザー数に応じた従量課金が基本だが、intra-martはAPサーバーのCPU課金。ワークフローシステムは社内全部門で使うため、当社のユーザー数は2,600人程度(常駐する派遣・協力会社の約400人を含む)と比較的多く、コストがユーザー数に比例しないintra-martには非常に大きなメリットがあった」(勝氏)

intra-martの導入プロジェクトは最初からスムーズに進んだわけではなかった。長年使い込んだNotesでは、前述のとおりワークフローシステムが部署ごとにサイロ化、肥大化していた。これをintra-mart上に集約し、約160の機能を再構築する方針を固めた。移行対象の機能数が多く対象業務も広範で、機能ごとに複雑さや特性も異なるため、移行対象の全機能を以下の4つに分類してプロジェクトを進めることにした。

(1)総務、人事、経理、経営企画などのコーポレート部門向け機能
(2)コンプライアンス、リスク統括、お客さまサービス品質管理部門向け機能
(3)契約サービス、新契約担当部門、オペレーションセンター向け機能
(4)営業推進、代理店支援担当部門、営業支社向け機能

2019年4月に(1)~(3)の要件定義を開始。複雑な申請画面やワークフローが多かったことから開発手段はintra-mart上でのスクラッチ開発を採用し、当初は基本的に外部ベンダーに開発を委託していた。比較的シンプルな機能が多かった(1)の成果物が先行して出来上がったが、ユーザーテストを行った段階でネガティブなフィードバックが多発したという。

勝氏は「(自社の)IT部門の社員がintra-martの特性を理解しないまま要件定義を進めてしまったのが、つまずいた最大の要因。要件が曖昧だった部分はユーザーから『想定と違う』という厳しい指摘があったし、何をテンプレート化したり部品化したりするかといった設計の指針やBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)の観点がないまま、現行踏襲で個別機能を作り込むかたちになってしまい、コストも膨らんだ」と説明する。

さらに、「ユーザーのフィードバックを受けた修正もなかなかスムーズに進まなかった」と勝氏は話す。「開発を委託した外部ベンターとの事前合意が不十分だったのは反省点。例えばボトルネックになっているアプリケーションの不具合の調査をお願いしても、当社が期待しているスピード感とギャップがあるというケースが少なくなかった。時間やコストの制約もあったことから外部ベンダーへの過度な依存を見直し、自分たちで不具合箇所を調べ、intra-martでのスクラッチ開発をやってみることにした。その結果、プログラムコードレベルで製品の特性を理解でき、開発も保守も内製化できるのではないか、という手応えをつかむことができた」

先行していたプロジェクト(1)で得たノウハウを基に、(2)と(3)は内製を前提に要件定義からやり直し、社内開発を完遂。最後発でスタートした(4)は、開発規模も大きかったことから最後まで開発は外部委託を継続。品質面での問題が出たものの、先行プロジェクトでの経験とノウハウの蓄積を生かして品質改善を進めた。intra-martは2020年4月に本番稼働を開始し、段階的にNotesからの移行を進め、2022年3月に全プロジェクトが完了した。

効果

コーディングガイドラインを整備し属人化を防ぐ
ワークフローの汎用テンプレートでペーパーレス化も

2023年7月末現在、intra-mart上の月間申請数は2万1,000件を超えており、利用は着実に拡大している。Notes移行プロジェクトの完了以降、不具合はなく安定した稼働を続けており、信頼性の観点で製品選定時の期待に応えているという。加えて、IT本部ITプロダクトマネジメント部アソシエイト職の一木健汰氏は「(Notesと異なる点として)intra-martにはポータルサイトがあるため、ユーザーが目的の申請を探すことが容易。製品として年3回のアップデートがあり、当社では2021年より毎年アップデートを実施している。常に新しいテクノロジーが反映されるのも評価できる点だ」と話す。

ペーパーレス化の基盤としてもintra-martの効果は大きい。同社には、Notes移行の対象となったワークフロー以外に、Notesで運用していなかった紙の申請書類を使った承認プロセスが多数残っているとのこと。そのうち約250件が、ワークフローシステムへの移行検討対象となっている。「intra-martの汎用テンプレートを活用して短期間で紙の申請書類による承認プロセスをデジタル化できるようになった」(勝氏)ことが追い風となり、現時点で既に100件近くをintra-martに移行している。残りも随時移行を進め、さらなるペーパーレス化を推進する方針だ。


IT本部 ITプロダクトマネジメント部 アソシエイト職 一木 健汰 氏
IT本部 ITプロダクトマネジメント部
アソシエイト職
一木 健汰 氏

定性的な効果としては、intra-martを導入してシステム開発の内製化領域を拡大したことで、IT本部のケイパビリティが大きく底上げされた。同社は今回のプロジェクトを通じて独自のコーディングガイドラインを整備し、内製化のノウハウが属人化しないように、形式知として整理した。また、一木氏は「ユーザー同士が交流できるユーザー会(intra-mart User Group)が運営されていてイントラマート社や他のユーザーの開発者との交流を通じて実装方法の相談が可能だったり、スクラッチ開発にJavaScriptを使うためオンラインで情報が集めやすかったりするなど、エンジニアにとってスキルアップにつながる環境が整っているのもintra-martの魅力」として、intra-mart導入がIT本部の人材育成にもポジティブな影響を与えていることを示唆する。

さらに、IT本部が要件定義に積極的に関わるようになったことで、各部門の業務の中身を高い解像度で把握できるようになった。一木氏は「業務部門に対して、より効率的・効果的な業務プロセスへの見直しとシステム構築を合わせて提案できるような場面も増えてきた。社内のさまざまな業務の改善や効率化に本質的に貢献するためのスキルとノウハウが養われつつある」と手応えを語る。

未来

現状維持ではなく、常に新しい仕掛けを
DXのけん引役としても準備万端

オリックス生命保険における今後のデジタルテクノロジー活用は「現状維持ではなく、常に新しい仕掛けを入れていく」(勝氏)方針だ。intra-martに関連する取り組みとしては、DAP(Digital Adoption Platform)との連携を模索している。intra-martの画面上に動的にナビゲーションやオンラインガイダンスを表示させ、ユーザビリティ向上を図る。

2023年5月には、 Webブラウザ上でアプリケーションの画面作成が簡単にできるローコード開発ツール「IM-BloomMaker」で内製したアプリ(保険代理店に対する登録免許税・登録手数料等の領収管理機能)をリリースしている。ローコード開発の活用シーンを拡大し、より幅広い業務基盤を内製で整備していく方針だ。

また、クラウドファーストの方針に則り、intra-martをクラウド環境に移行することを視野に入れているほか、Notesからのもう一つの移行先であるSharePointもクラウドサービスの「SharePoint Online」へのシフトを進めており、SharePoint Onlineや「Microsoft 365」とintra-martとの連携も検討する意向だ。

オリックス生命保険のIT本部は、intra-martの導入を大きな契機として業務部門に伴走してデジタルテクノロジー活用を進める新しい文化をつくった。これから本格化するDXの取り組みにおいても、強力なイニシアティブを発揮する準備は整ったと言えそうだ。

基本情報

オリックス生命保険株式会社

所在地
東京都千代田区大手町2-3-2 大手町プレイス イーストタワー
設立
1991年4月12日
事業内容
生命保険事業
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