本社と調剤薬局550店舗をワークフローで繋ぎ、社内業務を一元化

「阪神調剤薬局」ブランドで知られるI&H株式会社(以下、I&H)は、調剤薬局店舗の全国展開を主力事業としつつ、総合ヘルスケア企業としてビジネスを拡大している。新型コロナ禍を大きな契機として、多くの産業分野でデジタル化の遅れが指摘されるようになったが、ヘルスケア分野も同様だ。I&Hはデジタルテクノロジーの活用を前提としたビジネスや業務の再設計を経営の重点課題に据え、そのための環境整備に積極的に取り組んでいる。まずはアナログの要素が色濃く残る業務をデジタル化するとともに、全社で情報を共有するための共通基盤として「intra-mart®」を採用。デジタルトランスフォーメーション(DX)への大きな一歩を踏み出している。

目次

1.課題
店舗から本社への申請はメールか郵送
可視化・システム化の要請が高まっていた

2.導入
SaaS型グループウェアと比べて投資対効果が高い
市場シェアトップの実績も評価

3.効果
承認までの工数を削減、申請情報の検索もスムーズに
グループ内の情報共有も「楽」に「漏れなく」

4.未来
サイロ化されたアプリケーションのハブに
データドリブンな経営基盤構築へ

課題

店舗から本社への申請はメールか郵送
可視化・システム化の要請が高まっていた

1979年設立の阪神調剤薬局は2019年にI&Hを設立し、同社を頂点とした新体制にグループを再編。調剤薬局事業にとどまらず、総合ヘルスケア事業を手掛ける企業グループにリニューアルした。医療機関と連携した高齢者住宅やデイサービスセンター、病院内でのカフェ運営や、コンビニ併設の調剤薬局店舗の設置、健康に留意した給食の宅配サービスなど幅広い事業を展開している。

基幹事業である調剤薬局事業についても、「サービス業」と位置づけ、基本的な接客・接遇レベルの向上に努めているほか、現在ではオンラインでの服薬指導も行っている。さらに、店舗に常駐する栄養士による栄養相談を行うなど、従来の調剤薬局事業の範疇にとどまらない顧客体験の充実を目指しているという。


サービス・インテグレーション本部 DX推進部長兼情報システム課長 大野 英樹氏

サービス・インテグレーション本部
DX推進部長兼情報システム課長
大野 英樹 氏

現在、I&Hグループの調剤薬局は約550件にのぼり、前述のようにグループとしての事業ポートフォリオも拡大している。一方で、情報システムの導入・運用や業務の設計については課題も顕在化していた。従来、グループ内のITインフラやネットワーク整備を担当する部署はあったが、業務アプリケーションなどの導入・運用は当該業務を担当する部署が主導していたため、情報システムのガバナンスが不十分だったという。

 

I&H サービス・インテグレーション本部DX推進部長兼情報システム課長の大野 英樹氏は「部署ごとに自分たちの業務に必要なシステムを導入して、それらが個々にバラバラに動いている状況だった」と振り返る。そこで2022年7月に、グループ全体のシナジーによる成長をけん引するための組織としてサービス・インテグレーション本部を設立。その傘下に、ITガバナンスを担保した上でグループ全体のデジタル活用やDXの基盤整備を横断的に進めていくための組織としてDX推進部を新設した。

 

DX推進部のミッションは、社内業務の効率化や業務プロセスの改革などをデジタル基盤の整備とセットでけん引すること。加えて、店舗における顧客とのオンラインコミュニケーションのためのツールの整備など、ビジネスモデルや顧客接点の変革に関するIT投資もリードする。デジタル活用による経営改革全体の司令塔とも言うべき、広範かつ重要な役割を担っている。

 

同社は組織の改編と並行して、従来業務の課題を洗い出し、ITソリューションの導入を検討してきた。I&Hのような多店舗・多拠点展開型の事業では、ビジネスが成長するにつれ本社側の管理や各店舗とのコミュニケーションの負荷が高まりがちだ。実際に、各店舗から本社への各種申請・報告などはアナログな手法が主流で、担当者の業務負荷をいかに低減させるかが課題となっていた。大野氏は次のように説明する。


「例えば店舗から本社への福利厚生の申請などは、メールや紙の書類の郵送でやり取りしており、本社側の社員の負担が増大していた。また、申請・報告のルートや方法が明確化されていなかったことから、調剤薬局の開局・閉局情報などは報告ルートの途中で情報が滞留することもあった」


調剤薬局店舗の行政認可や更新については本社側でステータス情報をまとめて管理しているが、メールや電話で各店舗から情報を収集してきたのが実態で、これらの業務負荷も年々高まっていた。さらに、事業や業務に関するデータ管理は部署単位で行っており、情報を共有する仕組みがない点も大きな課題だったという。そこで、必要なデータを本社側、各店舗、グループ企業の間で共有・参照でき、各種申請・承認や業務フローを可視化・システム化する全社共通のプラットフォームが必要であるという結論に至り、「intra-mart」の採用を決断した。

導入

SaaS型グループウェアと比べて投資対効果が高い
市場シェアトップの実績も評価

I&Hでは従来、SaaS型グループウェアのワークフローシステム機能を部分的に活用していた。そのため、具体的なIT製品の選定にあたっては、このグループウェアのIDを拡充して全社共通のワークフローシステムとして使うという選択肢もあった。しかし、同社サービス・インテグレーション本部DX推進部情報システム課の冨山 博史氏は「SaaS型グループウェアはIDを増やすのとほぼ比例してコストも増えてくので、グループ内で活用を拡大するほど費用対効果が厳しくなるというハードルがあった」と話す。

この課題に対して、I&Hのデジタルテクノロジー活用をSIerとして支援してきたNECネクサソリューションズから導入を提案されたのが、intra-martだったという。intra-martはワークフロー機能に定評があり、ローコードで業務アプリケーションを開発できるプラットフォームだ。サーバーごとのライセンス体系のため、intra-mart上に構築したアプリケーションのエンドユーザーが増えても、必ずしもコスト増に直結しない。SaaS型グループウェアの活用範囲の拡大と比較すると投資対効果は高いと評価した。


サービス・インテグレーション本部 DX推進部情報システム課 冨山 博史氏

サービス・インテグレーション本部
DX推進部情報システム課
冨山 博史 氏

複雑なワークフローに対応できる点もintra-martを採用する決め手になった。「当社には複雑な分岐やルート設定が必要な業務フローもあり、そうしたフローのシステム化には、既存のSaaS型グループウェアでは対応できなかった」(冨山氏)という。開発費用・工数を抑えながら柔軟にワークフローを構築したり、カスタマイズしたりできる点も魅力だった。


市場全体が拡大しているローコード開発ツール市場には新興製品も多いが、intra-martはワークフローに強みを持つローコード開発プラットフォームとして、国内ワークフロー市場16年連続No.1を獲得している。「サポート体制も含めて、将来にわたって使い続けられるであろうという実績に基づく信頼感があることも、ITツールの選定においては重要だと考えている」と冨山氏は強調する。


22年3月に導入し、ワークフローのデジタル化を随時進めている。intra-martが備えるローコード開発ツールを幅広く利用しながら着実に開発を進め、インフォメーション機能によってグループ企業や各店舗間の情報共有の仕組みも整備した。

※株式会社富士キメラ総研発刊「2008~2010 パッケージソリューション・マーケティング便覧」、および「ソフトウェアビジネス新市場 2011~2022年版」より



■システム構成図
システム構成図

効果

承認までの工数を削減、申請情報の検索もスムーズに
グループ内の情報共有も「楽」に「漏れなく」

インフォメーション機能では、「グループ企業や各店舗に必要な情報を漏れなく行き届かせるという点で即効性があった」と大野氏は手応えを語る。従来はSaaS型グループウェアの掲示板機能を使っていたが、限られた人員しかアクセスできなかったため、必要な情報をグループ企業や各部署の幹部経由で所管の店舗スタッフまで伝達してもらうというアナログな情報共有を行っていた。intra-martの採用により、「新しい情報を発信したらintra-martを見るように全社員に連絡すればよくなり、発信側のオペレーションも楽になった」(大野氏)という。


ワークフローのデジタル化は、各部署やグループ会社と丁寧にコミュニケーションを取りながら優先順位をつけて鋭意進行中だが、既にシステム化されたものについては、承認までの工数を削減でき、申請・報告ルールの統一・明確化や可視化、データの一元管理も実現できている。「申請者や承認者にとって業務の効率化につながっているのはもちろんのこと、関係者が申請・報告の情報を検索したり、状況を確認したりといった作業もスムーズになった。これまではそうした情報も、膨大なメールや紙の書類の中から探さなければならなかったわけで、社内でもintra-martの導入効果についての評価は着実に高まっていると感じる」(冨山氏)


I&H社内では、現状、システム開発を内製する人的リソースが非常に限られているため、ワークフローのデジタル化はNECネクサソリューションズのSI保守サポートを利用して進めている。ただし、実際の開発プロジェクトを通じてNECネクサソリューションズからの技術移転も受けており、徐々に内製のケイパビリティとリソースは拡充していく方針だ。

未来

サイロ化されたアプリケーションのハブに
データドリブンな経営基盤構築へ

今後は、ワークフローのデジタル化をグループ全体に広げていくとともに、運用がサイロ化している社内の業務アプリケーションとintra-martとのAPI連携にもチャレンジする。大野氏は「intra-martをハブにして、各社員が自分の業務に必要な情報やアプリケーションにアクセスできるようにするというのが、実は最も重要な採用理由」だと話す。


具体的には経費精算や会計、在庫管理、勤怠管理、レセプトデータなどとintra-martのシステム連携を模索し、これらのデータも一元管理できる環境を整えるとともに、BIツールなども活用し、データドリブンな経営の基盤を構築したい考えだ。


新型コロナ禍を経てヘルスケア産業を取り巻く環境は変化のスピードを加速させている。デジタルテクノロジーの活用を前提とした経営改革により、この荒波を乗り越え、社会に提供する価値をアップデートしていく。

基本情報

I&H株式会社

所在地
兵庫県芦屋市大桝町1番18号
設立
2019年2月28日
(前身の株式会社阪神調剤薬局は1979年12月設立)
事業内容
調剤薬局店舗の全国展開をはじめとする総合ヘルスケア事業
URL

導入パートナー NECネクサソリューションズ株式会社

当社は、ITサービスインテグレータとして40年以上の実績を持っており、イントラマート製品の取扱いは18年以上、intra-mart Awardも15回受賞しております。

I&H様では、申請業務が一部メールや郵送によるやり取りを行っており、アナログで煩雑なものになっておりました。また、本部から店舗への情報発信は、グループウェアの掲示板機能を利用しておりましたが、状況を見える化することができず、情報が全員に行き届かないという課題もありました。 

弊社では、調剤薬局様のよくある課題を解決できる各種機能を、intra-martベースで提供していることもあり、お客様の課題解決の基盤として、intra-martをご提案させていただきました。今後も新機能の提供やお客様の内製化サポートなど、幅広くご支援させていただきたいと考えております。 

最後に、弊社では、調剤薬局様向けのソリューションを展開させていただいております。お気軽にご相談ください。

NECネクサソリューションズ
流通・サービスソリューション営業部
岡崎 彩 氏(左)
流通・サービスソリューション営業部
清水 彰 氏(後方)
第四システム事業部 主任
田中 義久 氏(右)
流通・サービスソリューション営業部 マネージャー
木村 寛 氏(前方)

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