導入事例
業界最大手である親会社の東洋製罐へ缶材料となるぶりきを供給するため、国内初の民間ぶりきメーカーとして設立した東洋鋼鈑株式会社(以下、東洋鋼鈑)。同社は、2012年に全社ポータルならびに、稟議システムをはじめとする様々な業務で利用されるワークフロー基盤として「intra-mart®」を導入。内製開発により、基幹系を含む全ての業務の入口(=“ポータルサイト”)として位置づけてきた。そして2022年3月にintra-martの新機能であるローコード/ノーコード開発の機能と今後のBPM導入(=“業務プロセスの見える化”)に向け、intra-martのバージョンアップを実施。社内からの多くのシステム化の要望に迅速に応えることができるようになるとともに、新入社員でもいち早く開発業務に携わることが可能となった。また、RPAやチャットボットとの連携により、定型業務の自動化が進み、情報システム部における問い合わせ対応の負担軽減など大きな成果が生まれている。今後も、他システムとの連携を図りながら、intra-martを積極的に利用し、DXを実現するための重要なツールとしていく方針だ。
課題
国内初の民間ぶりきメーカーとして設立した東洋鋼鈑は、鉄の圧延、表面処理、ラミネート等の固有の技術をもとに、アルミや樹脂など鉄以外の製品分野への進出も果たしてきた。現在も、東洋製罐グループホールディングスの事業会社の一員として、新たな事業分野の開拓、既存事業の市場拡大を目指し、海外へも積極展開を図っている。また、2022年4月に経営理念を改定し、社会における東洋鋼鈑の存在意義とそれを実現するためのビジョン、そして役員・従業員一人ひとりが大切にすべき価値観を企業理念として定めている。
同社では、2012年にintra-martを導入してワークフロー基盤を構築。稟議システムなどのワークフローを全社員で活用してきた。また、基幹系を含む全ての業務システムは全社ポータルでもあるintra-martを入り口として利用されており、ポータルからワークフローを申請し、基幹システムにデータ連携する仕組みを構築している。
「システムの企画・開発・保守・運用を自前で行うのが、当社の伝統であり、それだけに利用者目線のシステムを心がけてきました。intra-martを共通基盤とすることで操作性を統一し、社員の誰もが違和感なく使用できることを目指しました」と情報システム部長の薮田氏は2012年の導入時を振り返る。
intra-martで内製開発したワークフローはその当時で約150本。
「優れた操作性などにより、業務システムの開発生産性が高まり、現在では、73業務、ワークフローの本数では約300本にまで拡大しています」と情報システム部情報システム開発グループリーダーの石丸氏は語る。
その同社で、2021年にintra-martのバージョンアップ・プロジェクトが立ち上がった背景を薮田氏は「実は、2017年頃よりバージョンアップを検討していたのですが、同時期に脱ホストを含めた基幹系システムの刷新、データベースの入れ替え、といった大きなプロジェクトが動いていました。そのためそちらの仕様などが定まり、ある程度落ち着くまでは、連携するintra-martが先行してバージョンアップすると、投資が無駄になりかねないため延期していたのです」と説明する。
ただ、長年使用を続けていたことで課題も出ていた。例えば、全社標準ブラウザは現在、Chromeに統一しているが、当時利用していたバージョンのintra-martではChromeがサポート対象ではなかったため、対応が必要であった。
「データベース変更などの影響でレスポンスが落ち、過去の伝票などを参照する際に時間がかかり、処理中にタイムアウトすることもありました」と石丸氏。
また、全社で2019年より働き方改革に取り組み、業務の属人性を排除して業務プロセス全体を自動化すべく見直しを進めている。その実現のために定型業務にRPAを積極的に取り入れてきたが、RPA単体では、その実行結果を待ってコードを書く、他ツールを利用するなど人の作業が必要となり、真の自動化にはならない。そのためワークフローとRPA連携を実現するためにも、バージョンアップが不可欠であった。
導入
バージョンアップ・プロジェクトのキックオフは2021年6月。当初はintra-martの2021 Springへのバージョンアップを予定していたが、12月8日にオンラインで開催されたイントラマートのユーザー会「IMUG」に薮田氏が参加。新機能のAccel Studioのデモを見たことで、最新バージョンの2021 Winterへと変更することになった。
Accel Studioはローコード開発における資材の運用やアプリケーションの管理を補助する機能で、アプリケーションの自動作成および一元管理を可能にする。
「Accel Studioのデモを見て、ローコード/ノーコード開発機能の充実に強く惹かれました。われわれ情報システム部には、多くのシステム化の要望が寄せられます。一方で、人的リソースは限られる。社内の標準開発ツールであるJavaの習得には、2~3年が必要ですが、新人がシステム部門に配属されても、ジョブローテーションのため数年で異動してしまうケースが多い。そうした環境で開発生産性を向上させていくには、ローコード/ノーコードによるスピード開発の実現が不可欠と考えました」と薮田氏は説明する。
また同時期には、情報システム部のメンバーが、イントラマートの研修チームによる計5日間の個別オンライン研修を受講。ローコード/ノーコード開発を中心に学び、受講対象者9人のうち、6人は初めてintra-martの開発を行うメンバーであった。 「これまでの開発手法とは異なるローコード開発画面の操作性や、活用時の注意点など、バージョンアップにあたり必要な知識を一通り体感できました。分からない点は、個別対応をしてくれたことで各人とも理解が深まり、バージョンアップ後は、違和感なく開発に活かすことができたと感想を口にしています」と石丸氏は語る。
効果
intra-martのバージョンアップは、2022年3月に完了。これにより、新機能のAccel Studioなどを利用できるようになり、ローコード開発やRPA連携が可能となったことで、業務連携がさらに容易になった。バージョンアップによる成果の一つが開発生産性の向上だ。
「一例を挙げると、Javaでの開発と比較して、開発時間を約40%削減できました。第1号のローコードアプリは、Javaであれば15日かかるところをイントラマートの技術コンサルチームの支援を受けながらも9日で完成しています。しかも、その間にシステム化の要求部門による画面イメージのレビューを受け、その結果も反映させてリリースすることが出来ました。いわゆるアジャイル開発のアプローチも可能になったのです。個別研修の5日間で初めてintra-martに触れ、操作を習得したメンバーですから、生産性として大きなものがあります」と武市氏は語る。
薮田氏も「すでに、4~5本をローコード/ノーコード開発で行っていますが、前述したようにJavaの開発者の育成には2~3年を要することを考慮すると非常に効果は大きい。Excelのマクロを知らないような新入社員でも、intra-martのローコード/ノーコード開発であれば、おそらく1年もあれば立派な情シスメンバーとして独り立ちができるでしょう。今後は、ロジック部品を増やして流用することで、さらに生産性の向上が見込めると期待しています」とメリットを語る。
このほか、既存の文書管理システムのサポートが終了したことから、BCP対策も兼ねてファイルサーバーをクラウド型ストレージへ移行。intra-martのワークフローとの連携を実施した。多くの紙の文書もデジタル化してクラウド型ストレージに収納して、全社で一元的に共有ができる環境を構築した。これにより、ワークフローで申請して決裁した場合と、個別に決裁済み文書を確認する場合でも、同じ場所(格納先)を参照できるようになった。
運用面でもメリットが生まれている。バージョンアップ後の社内ポータルでは、情報システム部が組み込んだチャットボットとの連携を図った。
「情報システムに関する問い合わせ対応の負荷がかなり軽減しています。テレワークをしている人でも、ある程度の問題までは自己解決できるようになり、問い合わせ対応の時間が、月間で約30時間削減しました」と石丸氏。
しかも、これまで担当するメンバーによってまちまちだった問い合わせ対応のレベルも統一された。今では、管理部門にもチャットボット連携を行っている。
さらに、intra-martとRPAの連携も実現。これにより個別にシステムを立ち上げることなく、intra-martの社内ポータルを入り口に1メニューとしてRPAの実行ができるようになった。作業完了後はメールで通知されるなど、ユーザーの使い勝手が向上しているという。
バージョンアップで帳票出力機能も強化された。
「REST API連携を活用した帳票PDFの出力が可能となり、作成したPDFは決裁の処理後にクラウド型ストレージに収納するまでのプロセスを自動処理できる仕組みを構築しました。これにより、人の手を介する処理が不要になりました」と情報システム部IT活用グループIT活用チームリーダーの西牟田氏は成果を説明する。
未来
今後については、RPA連携の強化などintra-mart機能のさらなる活用を進めていくとともに、近く刷新が予定されているERPとの連携も検討していく方針だ。
「今後はPCだけでなく、モバイルデバイスからの利用にも対応させていきたいと考えています。スマホでもPCモードなら対応していますが、さらに使い勝手を良くするためスマホの専用画面で決裁までを完結できるようにしたいですね」と武市氏。
最後に薮田氏は「intra-martはDXを実現するための重要なツールであり、次ステップとして考えているBPM導入も含め、今後も積極的に検討していきます。経営層からは、仕事を楽に質の高いものにするようにと話されることがよくあります。そのためにも、定型的な処理は可能な限りシステムに任せて、人がより生産的な業務に多くの時間を割けるようにしたい。そうした意義のある仕事に携わることでモチベーションも高まると考えています」と締めくくった。
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