導入事例
建設用資機材や建築用資材の製造・販売を中心に、建設コンサルタントや補修・補強工事までを手がける株式会社エスイー(以下、エスイー)。
環境防災事業分野で製造・販売を行う、地すべり防止のための土木資材「グラウンドアンカー*1(以下、アンカー)」では、国内トップシェアを誇る。エスイーでは、50年ほど前からアンカーの製造を開始し、各アンカーは製造時に製品番号が付与され、その番号で製品情報をデータ管理している。ユーザーにはこれらの情報を製品納品時に書類で提供していたという。しかし、約15年前から施工後の維持管理が本格的にスタートしたが、ユーザーは製品情報を書類で管理しているため、施工後の現場でアンカーの製品番号の特定が難しく、製品情報が確認できない問題が頻発した。そこで、システムによる管理を決断。システム名を「SMATS(スマッツ)Sec Maintenance Traceability System」と名付け、プラットフォームに「intra-mart®」を採用した。RFID*2を活用したインフラ製品の維持管理をデジタル化することで、業務負荷・金銭的コスト削減のみならず、持続可能な社会の実現への基盤づくりを構築していく。
*1…高速道路など「のり面の保護」を行う製品で、地中の安定地盤にアンカー体を埋め込み、地表の構造物をアンカーの引張力を利用して安定させる製品。
*2…電波を用いてICタグの情報を非接触で読み書きする自動認識技術。複数のICタグを離れた位置から一括で読み取り、瞬時に個体を識別することが可能。
エスイーでは、地すべり防止のための土木資材「グラウンドアンカー」の製造・販売を手掛けており、約50年前に製造を開始して以来、製品番号で製品情報をデータ管理していたが、ユーザーには書類でのみ提供してきた。しかし、2002年頃から独立行政法人土木研究所が社団法人日本アンカー協会の協力を得て既設アンカーの維持管理を主導するようになると、その管理手法に課題感が出始めた。
「施工から5年以上経過したアンカーが主に点検されます。ところが現場で、施工時期やアンカーの種類、長さなどの仕様に関する詳細な情報を把握することができず、自治体や施工会社から、施工済みアンカーの製品情報についての問い合わせが来るようになりました。しかし、製品番号で製品情報を管理していたため、現場のアンカーの製品番号が特定できないと履歴を追いかけられないといったケースが相次ぎました」と営業本部環境防災部 部長の加来 哲也氏は説明する。
株式会社エスイー
営業本部環境防災部 部長
加来 哲也氏
工事現場への納入情報までは特定できても、その先のどこにどのアンカーを施工したかまでは特定できないという。
そこで、システムを導入して製品情報をクラウドで管理し、デジタル化を実現させることを決断した。
システムの構築に当たり、山口工場で生産管理システムの構築を担当したNECネクサソリューションズに声をかけた。
「納入情報の元となるのは生産情報なので、生産管理システムに格納されている情報に紐づける必要があると考えました。また、当社の業務の内部構造を知っているベンダーが適していると考えたため、NECネクサソリューションズに依頼しました」と管理本部システム管理部 部長 村山 修氏。
SMATSの全体像はこうだ。クラウド(AWS)上に、intra-martを共通基盤としたシステムを構築し、暗号化した製品番号を書き込んだICタグをアンカーに取り付ける。さらに、製品情報はクラウド上にアップロードして出荷。納入先では、施工時に設計・定着荷重などの情報を登録する。こうしておくと、点検時にアンカーに取り付けたICタグを読み取るだけで製品番号が確認でき、製品情報や維持管理の履歴といった情報を閲覧・更新できるという仕組みだ。
株式会社エスイー
管理本部システム管理部 部長
村山 修氏
「SMATSの実現に当たり、RFIDを導入してアンカーにICタグを取り付け、そこから情報を吸い上げてシステムと連携する必要があったのですが、全体のフローを構築する際は、NECネクサソリューションズにアドバイスを受け、既存の業務フローからの変更が小さくなるような設計をしてもらいました」と村山氏は振り返る。
2021年3月からPoCの試行評価を経て本番環境を構築し、2021年11月からサービスリリースというスケジュールで導入が進められた。
*3…サトー社製 金属と水分で覆われた状態でも読み取りができる特殊ICタグ
サービス開始から約1年で、ICタグを取り付けたアンカーの出荷実績は12,000本を超えた。施工されたアンカーの点検時期は、主に5年先のことになるが、その日のために、現在はデータを着々とアップロードしている状態だという。
「システム化と同時に、アンカーの主要部材の成分情報が書かれたミルシート*4もデジタル化しており、こちらはすでにコスト削減や業務効率化といった成果が出始めています。というのも、以前はミルシートも書類でのみ現場へ提供していました。部数も多かったので、業務負荷と金銭的コストがかさんでいました」と加来氏は振り返る。
ミルシートは、製品とともにトラックで提供することが多く、ミルシートの準備ができるまで、トラックを待たせることも少なくなかった。また、納入後もミルシートの再送を要求されるケースもあり、業務は煩雑だったのだそう。SMATSの実現により、自治体や施工会社がクラウド上から直接情報を引き出せるようになったことから、作業時間も削減でき、業務効率化にもつながっている。
この業界初の取り組みは、私たちの日頃の生活にも直結しており、維持管理の正確性、迅速な保全活動によって災害を未然に防ぐことができ、安心・安全な生活を送ることができている。
*4…様々な性質や化学組成が記載された、納入時に発注者へ発行する証明書のこと。
生産したロットごとに規格値と実績値が記載される。
今後について、「実績を重ねながら、自社のアンカーでSMATSの運用を確立できたらと思っています。その後、競合他社にもシステムの参加を呼びかけて、アンカー工法全体のSMATSの標準化を目指したいですね。アンカーでトップシェアを誇る当社の影響力は大きいと考えています。その上で、自社の土木分野の主要製品にまでSMATSの適用対象を広め、最終的には、SMATSを活用した土木資材のトレーサビリティの標準化を目指したいと思います。インフラ分野のDXを推進したいですね」と加来氏は抱負を語った。
さらなる適用範囲拡大を目指し、エスイーの技術力・サービス向上に向けたチャレンジは今後も続く。
当社は、ITサービスインテグレータとして40年以上の実績を持っており、イントラマート製品の取扱いは18年以上、イントラマートアワードも15回受賞しております。
今回のSMATSでは、エスイー様だけでなく自治体や施工会社の不特定多数のユーザーがアクセスするということで、いつも以上にお客様のエンドユーザーへのサービス提供や、セキュリティ対策に工夫を施しました。マルチテナントを採用し、パスワードを自動生成した上でID/パスワードで認証を行って他案件の情報閲覧を防止したり、不正アクセスのリスクを軽減するためにAWS上に踏み台サーバーを構築する等の対策も講じています。
RFIDとの連携についてもご相談に乗りますので、是非ご相談ください。
業務プロセスのデジタル化
フルオートメーション化で
柔軟な働き方と圧倒的な生産性を
case
国内の著名企業を中心に9,500社以上のお客様に導入されています。
業務プロセス改善に関するお役立ち情報を
発信しています。