導入事例
自動車分野のエレクトロニクスを中心に製造販売する大手電機メーカー・アルプスアルパイン。その情報システム子会社であるアルプスシステムインテグレーションの中国法人・阿爾卑斯系統集成(大連)科技有限公司(以下、ALSI大連)は、システムインテグレーション・エンベデッドソリューション・IoTの3つの領域で事業を展開している。BPO業務は、業務系システムの開発・保守とともにシステムインテグレーション事業の主要な収益の柱だ。グローバルに事業展開するグループの各拠点からの依頼は、80種類の多種多様なタスクが実に月間4000件と膨大な件数にのぼる。それに伴い、タスクの難易度や納期、そしてメンバーのスキルを考慮したタスク差配をはじめ、BPO業務の効率的な管理は非常に複雑かつ困難を極める。ALSI大連は、このBPO業務のタスク管理をintra-martでシステム化し、業務のデジタル化・自動化によって飛躍的な業務効率の向上を実現している。
課題
ALSI大連が事業展開するBPOは、グローバルで導入・運用する基幹系システムに関する作業として主に3つのカテゴリに分けられる。1つ目はマスタデータのメンテナンスや抽出、加工といった定型業務の「グローバル共通運用」。2つ目に世界各国の拠点のユーザーからの依頼に基づく各種マスタデータの登録や変更、削除を行う「グローバルマスタコントロールセンター」。そして3つ目がシステムの利用に関する問い合わせに対応する「グローバルサービスデスク」だ。全てグローバル対応のため、拠点を構える中国・大連市では24時間体制を敷く。2005年設立当初からのメンバーで、BPO事業を統括する李敏氏は、「『グローバル共通運用』のタスクは定型業務とはいえ80種類以上ある。各メンバーのスキルや負荷に応じて、それらのタスクを差配して管理できるのは経験がある特定のリーダーに限られていた」と、システム化前の課題感を打ち明ける。
さらに追い打ちをかけるのが、その凄まじい件数だ。難易度や納期が異なる月間4000件超の依頼が寄せられ、メンバーへの差配だけではなく、進捗管理を含むタスク管理はリーダー層の負荷が極めて大きかったという。「システム化以前は、作業管理台帳をはじめ、メンバーのスキル管理や過去の実績を参照する品質管理など、様々な情報を管理するエクセルが散乱していたため、差配の妥当性や品質を担保するために情報を照らし合わせたり、二重チェックしたりと管理工数は膨らむ一方でした」(李敏氏)。
また、納期が短い緊急のタスクが当日に追加されたり、天候や交通の事情によりメンバーの勤怠に変更が生じた場合には、あらかじめ差配していた担当とタスクを組み替えなおす必要もでてくる。情報がバラバラで、かつ経験に頼った属人的なタスク管理は、納期遅延のリスクもはらんでいたという。
・スキルや負荷、納期を考慮したタスク差配の属人化
・月間4000件超と膨大なタスクの管理負荷の増加
・緊急の追加タスクに伴う担当変更による遅延リスク
導入
タスク管理の工数を削減する一方、作業の品質は一段と向上させなければならない。システム化を前に掲げたのは、「効率・品質・負荷を総合的に改善できるシステム」(李敏氏)だ。タスク管理に係る情報を全てシステム上で一元管理し、業務のデジタル化・自動化によって効率的なタスク差配を実現し、リーダー層の負荷を軽減する。加えて、負荷軽減によって生み出されたリソースは、メンバーの教育に充てることで継続的に品質の向上を実現する。
そうしたシステムの構築・導入に向けて、ALSI大連が選択したのがintra-martだ。一般的なパッケージでは、理想とする3つの改善目的を総合的に果たすことが難しく、ローコード開発基盤でありつつ、自社の求める仕様を叶える柔軟な拡張性を備えたintra-martで開発することを決めた。
さらに、2018年のシステムの運用開始以降には新たに先進的なチャレンジもスタートしている。「AIを活用することで、メンバーのスキルや負荷、さらに育成を考慮した一段と効率的なタスク差配が実現できるのではないかと考え、イントラマート社と共同で実証実験を始めました」(李敏氏)。イントラマートの「AI Assigner」は、収集・集積した業務データに基づき、AIが様々な条件を踏まえて業務を最適化する“業務の自動化”を実現する。実証実験では、標準・育成・効率の3つのモードを切り替えることで、AIがメンバーのスキルに応じてタスクの難易度や量を判断して自動差配することに成功している。
効果
intra-martを基盤として構築したシステムによって、ALSI大連はBPO業務で抱えていた課題を一挙に解消した。その効果は主に3つある。
・自動差配によりタスク管理工数の80%を削減
・効率的で無理のないタスク差配で納期遅延ゼロ
・負荷の大幅軽減で教育やマネジメントの質向上
まず、数多くのエクセルで管理していた情報を一元化し、それらの情報に基づいて一定の条件でタスクの自動差配を実現。タスク管理工数は、システム化する前に比べて実に80%もの大幅な削減効果をもたらしている。李敏氏は「例えば、従来は1週間の作業のスケジュール作成に10時間かかっていましたが、現在は2時間に短縮できている」と例を挙げる。
納期遅延のリスクを格段に低減できたことも、大きな効果だ。「以前はメンバーが自分に差配されたタスクをエクセルの作業管理台帳に確認しにいく必要がありましたが、スキルや負荷に応じてシステムで自動差配されたタスクが自動で表示されるため、急な担当変更が生じた場合でも見落としがなくなりました」(李敏氏)。結果、2018年のシステム運用以降は納期遅延ゼロを続けているという。
また、経営の観点からも利点がある。曽根綱治・総経理は、「効率的なタスク差配が実現できると同時に、リーダーやスキルの高いメンバーに生じた余剰のリソースでマネジメントや教育に注力できるようになった。また、属人的な感覚に頼ることがなくなったことで、業務の継続性を担保できるという点も組織として欠かせないポイントだ」と、システム化のメリットを高く評価している。
業務プロセスのデジタル化によって特定の経験を持つ人の作業を自動化し、さらにAIといった新たなテクノロジーの活用による一段と高度な自動化で、さらなる効率化の可能性を見出した好例といえるだろう。
未来
ALSI大連では、BPOの作業にRPAの活用も進めている。「しかし」と曽根総経理は言う。「RPAだけでは限界がある。作業全てをRPAに任せられるわけではない。人とRPAで作業をつないでいくことでタスクは完了するため、その差配や管理はより複雑になる。人とロボットが共同で働くという前提のもとで、効率的なタスク管理を目指していきたい」。
自社で成果を得たALSI大連は、そのシステムをタスク管理システム「BTI(BPO Task Intelligence)システム」として外販も行っている。BPO拠点が多く集積する大連で、すでに導入実績もある。
加えて、曽根総経理は今後について「製造業の工場も自動化は進んでいるが、絶対的に人間がやらなくてはならない作業は残っている。そうした部分をさらに効率化・省人化するための管理において、BPOで実用化したタスク差配のシステムに基づいた仕組みを適用していく」と意気込みを見せる。例えば、設備のメンテナンス業務では、設備ごとに担当が割り当てられているケースが多い。しかし、いつ故障するか、またいつ急な作業が発生するかは分からず、こうしたフィールドサービスのタスク差配は依然として効率化の余地が大きいという。「製造業のシステム子会社として、知見やノウハウを持つ得意領域でさらにチャレンジしていきたい」(曽根総経理)。
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