導入事例
課題
日本有数の総合ディベロッパー、森ビル株式会社。その中にあって「六本木ヒルズ」「表参道ヒルズ」などの商業施設におけるテナント営業・賃貸運営管理を担う商業施設事業部では2017年、新業務基盤システム「T-Navi(ティーナビ)」を導入した。
森ビル営業本部内に組織された商業施設事業部は、現在13棟の商業施設にある約800区画(店舗などの商用物件)の賃貸管理を受け持っている。その業務は施設オープン時のテナント営業にはじまり、空き区画の営業、契約、管理の他、テナントの集客・売上向上の企画検討、リニューアル計画や施工管理など、実に多岐にわたる。そしてそれぞれの業務で、商業施設ならではのノウハウが求められる。
たとえば空き区画が出た場合、営業先はどこでもよいわけではなく、その施設全体への影響を考えたうえで選定しなければならない。つまりどの区画にどんな店舗に入ってもらえば、施設のブランドイメージをアップさせ、集客や売上に好影響を与えられるかということまで考慮する必要がある。また、オフィス管理や住宅管理を行う森ビルの他事業部に比べて、契約条件は細部に及ぶ。特に賃料は固定額制だけでなく、テナントの売上に応じた歩合制で設定されることも多い。売上はテナントが扱っている商品や季節などによって毎月幅があるため、賃料もそれに合わせて計算・請求することになる。
このように営業面でも管理面でも複雑になりがちな業務を、効率的かつ確実に遂行していくために開発されたのが「T-Navi」だ。営業戦略の策定からテナント候補への営業折衝、契約、そして契約後の請求事務に必要な情報を集約し、ワンストップで処理できるシステム基盤に仕上がっている。「新システムに求めた一番の条件は、業務の進捗管理ができること、つまりワークフローシステムとしての機能が優れていることでした」
と、商業施設事業部業務推進部課長の富山隆氏は言う。業務それぞれが個別に自動化されていても、それらの間にある申請や情報のやり取りを紙ベースで行うような業務フローでは、時間的なロスが生じるうえ、進捗の確認も取りにくい。従来の業務効率をさらに向上させるためには、すべてを一元化しオンラインで処理できるシステムでなければならなかった。
導入
当初はパッケージ製品の採用も検討していたと、業務推進部の安田純氏は振り返る。「1年ほどかけて当社の業務に利用できるソリューションを探しました。契約管理ができるレベルのものはあるのですが、複雑な賃料や営業活動データまで扱えるようなものは見つからず、最終的にワークフロー製品をベースに独自開発することを決めました」
そして数社の候補の中から、NTTデータビジネスシステムズを選んだ。その理由を富山氏はこう説明する。
「まずは対応力の高さです。これまでにないシステムをつくるわけですから、開発中には変更や修正、追加などが発生してくることが見込まれます。NTTデータビジネスシステムズには、それに対応してもらえるだけの柔軟性と提案力があると感じました。もう一つはNTTデータグループのシステム統合基盤『intra-mart』が高い評価を得ていたことです。これをワークフローシステムのベースとして利用できると考えました」
開発を任されたNTTデータビジネスシステムズでは、約2カ月にわたり商業施設事業に関する理解を深めながら要件定義を実施し、半年間のシステム構築を実施した。
「従来の業務フローをいかにシステムとして実現していくか、逆に業務フローをシステム向けに変えられないかなど、NTTデータビジネスシステムズとディスカッションを繰り返しながら、基本設計を進めていきました。実際に開発を始めてみると、要件定義時には気づかなかった例外的な処理が出てくることもありましたが、しっかりと対応してもらえたと感謝しています」(富山氏)
システム構築後に以前のシステムからのデータ移行を行い、2017年秋、新システム「T-Navi」はついに稼働を始めた。
効果
「T-Navi」のワークフローは、区画情報をベースとして、業務が進むにつれて必要となるさまざまな情報が、そこに紐づけられていく仕組みとなっている。
区画情報で特徴的なのは、文字情報だけではなく、地図情報と連動したビューを採用している点だ。区画の広さや形状、施設内での位置、契約状況、近隣のテナントなどが視覚的に分かるようになっている
「区画がフロアの入り口に近いか遠いか、周りにはどんな店舗が入っているかという情報は、営業先を選定したり賃料を決定したりする際のポイントになりますから、特に見やすく、理解度が深まるようにしました。現場で営業にあたっている社員だけでなく、管理者や決裁者まで一目で状況を把握できるので、大いに役立っています」(富山氏)
各区画の営業が始まると、区画情報には営業活動情報が紐づけられる。たとえばある空き区画に対し、誰がどのテナント候補にアタックしていて、折衝がどこまで進行しているのか......といった情報だ。これらは一覧で表示できるため、営業員同士の情報共有が容易になり、活動の無駄を削減する効果も生んでいる。
また先に言及したような売上額に応じた賃料の歩合など、営業折衝中に出てきたさまざまな条件を、フォームから簡単に登録できる仕組みも整えられている。いざ契約という段になったら、登録条件を反映させた契約書(PDF)を決裁者が「T-Navi」の画面でチェック、承認されればそのまま出力して、交渉先に持っていくことができる。「書面を作るためにわざわざ文書作成ソフトを使えば、手間も時間もかかってしまいます。『T-Navi』ではある程度標準化された書式に、登録されたデータを埋め込んだPDFとして出力できますから、作業はスピーディでミスもありません」(富山氏)
契約に基づく請求データ登録や請求書発行業務を担当している別の部署に対して、従来、紙の書類で行っていた手続きを「T-Navi」上で処理できるようにもした。その過程で、冗長的なプロセスの合理化や、内部統制に必要なプロセスの追加も行うことができた。
このようにひとつの区画に対して営業、運営、契約のチェック、そして請求と、いくつもの業務にそれぞれの担当者が携わっていても、すべての情報が「T-Navi」で一元管理されているため、業務の進捗は誰でも簡単に確認できる。これにより情報の行き違いや、作業の重複による無駄はほとんど発生していないという。
他にも各ユーザーのログイン画面に対応すべきタスク一覧が表示される機能や、申請が承認されると次のタスクを自動生成する機能が搭載され、明確なワークフローに則った、より効率的な業務遂行が実現している。
未来
運用開始からまだ半年ほどだが、業務推進部の伊藤依里子氏は「利用する社員からは効率化が進んだという声が数多く寄せられており、新システムが業務効率向上につながっていると感じています」と、その効果を語る。
大幅な業務効率化を図るという当初の目的を実現した「T-Navi」だが、商業施設事業部では、施設の活性化に役立てていくことも視野に入れている。「不動産の賃貸業務というと地味に聞こえますが、我々に課せられた使命のひとつは、施設の鮮度を保ち、お客様が訪れるたびに新しい発見のできる、活気のある施設づくりを行うことです」と富山氏は語る。
そのために今後はテナント入れ替えや営業先を選定する際、区画ごとの売上・賃料など、「T-Navi」に集約したデータを活用し、鮮度と収益性のバランスがとれた施設づくりにつなげていきたいという。/p>
賃貸契約後もテナントや施設全体の動向を捉え、それに応じた対策が求められる商業施設事業において、さまざまなデータを一元化・可視化できる「T-Navi」は、事業のプラットフォームとしての重要度をますます高めていくことになりそうだ。
森ビル様は「東京を世界一の都市に」をスローガンとしコンパクトシティを強みに都市開発に取り組まれています。
魅力的でいつも新しい体験ができる施設づくりを目指す商業施設事業部様の、更なる業務効率・営業効率の改善への取り組みに対し、多種多様な業務を短期間・低コストでシステム化する上で、 intra-martの開発自由度や拡張性の高さを改めてご認識頂きました。
開発基盤としてのintra-mart活用シーン拡大に向けて、今後も森ビル様の事業パートナーとして、成長をサポートさせて頂きたいと思います。
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