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チェンジマネジメントとは? ~成功に導く8のステップから成功事例まで一挙解説~

チェンジマネジメントとは、経営学用語の一つで、企業などの組織において、「変革」を推進し、成功させるためのマネジメント手法のことです。

昨今、DX(デジタル・トランスフォーメーション)が叫ばれる日本において、業務プロセスをはじめとするさまざまな面で「変革」が求められていますが、変わることを受け入れられず、現状にしがみつこうとする従業員も少なくありません。

そこで本コラムでは、チェンジマネジメントの概要と具体的なステップ、成功事例をご紹介いたします。

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1. チェンジマネジメントとは?

チェンジマネジメントとは、経営学用語の一つで、企業などの組織において「変革」を推進し、成功させるためのマネジメント手法のことです。

冒頭で触れたDXに限らず、働き方改革やその他の法改正、景気変動など、さまざまな外的要因によって、組織が変革を求められる機会はたびたびやってきます。

しかし、経営層が覚悟を持って大きな変革に取り組もうと意思決定しても、現場の社員が変化を拒み、改革がうまくいかないというケースも少なくありません。こうした変革を阻む人たちを指して「チェンジモンスター」などと呼ばれています。なぜ、現場の社員はこのように変革を嫌うのでしょうか?

損失回避性とは?


不確実性下における意思決定モデルの一つである「プロスペクト理論」において、「損失回避性」が提唱されています。損失回避性とは、人は目の前に利益があると、利益を入手できないというリスクを回避し、目の前に損失があると、損失そのものを回避しようと意思決定する傾向があるというものです。

たとえば、
(A)100万円が無条件でもらえる
(B)コインを投げて表が出れば200万円がもらえ、裏が出れば何ももらえない
という2つの選択肢がある場合、多くの人は確実性の高い(A)を選びます。

しかし、前提として200万円の借金がある状態で
(C)100万円分の負債が無条件で減免され、100万円の借金となる
(D)コインを投げて表が出れば借金の200万円全額が減免されるが、裏が出れば借金は200万円のまま
という2つの選択肢がある場合は、「借金」損失そのものを回避しようと、多くの人が(D)を選びます。

これを組織の変革に当てはめると、変革によって不利益がもたらされるのではないかという不安から、変革そのものを回避しようとするということになり、変革が進まないのです。

このように、組織の変革を成功させるには、変化を嫌う従業員に対し、変化を前向きに捉えて協力してくれるように働きかける必要があります。そのための手段がチェンジマネジメントです。


 

2. チェンジマネジメントを成功に導く8つのステップ

ハーバードビジネススクールの名誉教授であり、リーダーシップ論の第一人者でもあるジョン・ポール・コッター(John Paul Kotter)氏は、組織変革の失敗例を基に、チェンジマネジメントの手法として「基本の8段階プロセス」を考案しました。

チェンジマネジメントを実行する際は、この8ステップで進めることで組織の変革を成功に導くことができるでしょう。

危機意識を高める


まずは、なぜ変革を行わなければならないのか、その理由に意識を向けましょう。そして、変革しないままでいればどうなってしまうのか、現状維持でいることのリスクを認識することで、危機意識を高めます。
社内外の分析を行い、このデータを元に、まずは、経営層から危機意識を高め、これを全社に共有する流れが良いでしょう。


ステップ2:変革推進のためのチームを編成する


社内の危機意識が高まったら、実際に変革を推進する際に中心になるチームを編成します。
チームメンバーには、変革に必要な権限や人脈、信頼などを持つ人物を多く含めることが推奨されます。


ステップ3:ビジョンと戦略を生み出す


変革が成功した状態である「ビジョン」と、そのビジョンを実現するために必要な「戦略」を立案します。

ビジョンを立案する際のポイントは、下記の6点です。

  • イメージしやすいこと
  • ステークホルダーが期待する長期的利益と一致すること
  • 実現可能であること
  • 明確な方向が示されていること
  • 柔軟性を備えていること
  • わかりやすく伝わりやすいこと

ステップ4:変革のためのビジョンを周知する


ステップ3で策定したビジョンと戦略を社内に周知します。
周知を徹底するために、トップからのメッセージとして朝礼や会議で伝えるほか、社内報やイントラネットなど、さまざまなチャネルを駆使して繰り返し伝えましょう。
また、ステップ2で編成したチームのメンバーが率先してビジョンや戦略を体現するような行動を取ってほかの従業員のお手本となることも大切です。


ステップ5:従業員の自発的な行動を促すための環境作り


共有されたビジョンと戦略を理解し、賛同した従業員が自発的に行動できるよう、環境を整える必要があります。たとえば、組織体制や人事評価制度、導入するシステムなどを変更するといったことです。
変革に取り組む従業員のリスクを排除する方向で環境を整えることが大切です。


ステップ6:短期的な成果を実現する


変革には中長期的な視野が必要ですが、そのプロセスの中には短期的な目標と、その成果の達成を盛り込むことが重要です。短期的な目標を達成できた場合は、社内に共有して達成感を醸成することでモチベーションアップにもつながります。
小さな成功体験を積み上げることで、社内の変革に対する意識もさらにポジティブなものへと変化するでしょう。


ステップ7:成果を生かして、さらなる変革を推進する


ステップ6の短期的な成果を生かし、ステップ3で立てたビジョンを実現できるよう、さらなる変革を推進していきます。
ここまでの取り組みで浮き彫りになった課題については解消し、新たな人材が必要な場合は採用しましょう。


ステップ8:新たな企業文化を定着させる


ここまで来たら、変革もかなり進んでいるはずです。最後のステップでは、変革によって得られた新たな体制や企業文化、そして変革そのものを一時的なものにしないために、定着させます。具体的な方法としては、変革を前提とした人材育成や次世代リーダーの育成、チェンジマネジメントの再構築などが挙げられます。

最後のステップを終えたら、推進チームを中心に振り返りを行い、成果とともに社内に共有しましょう。次の変革の土台となるはずです。


 

3. チェンジマネジメントにおける成功事例

最後に、チェンジマネジメントの成功事例を4つ、ご紹介いたします。

サブスクリプション型への移行に伴うチェンジマネジメントで対前年度成長率26%を達成(アドビ株式会社)


Photoshop(フォトショップ)などで知られるソフトウェア会社である米Adobe Inc.は、2011年、それまでの売り切り型のパッケージソフトから、年間契約のライセンス形態(サブスクリプション型)へと移行することを発表しました。これを受けて、日本でもサブスクリプション型に切り替える準備として、チェンジマネジメントを実施しました。

アドビ株式会社(旧:アドビシステムズ株式会社)では、ビジネスモデルの変革が顧客にとっても大きなサービスモデルの転換となることから、「顧客との関係性を見直さなければ、それまで以上のメリットを感じてもらえないのではないか?」という危機感を持ちました。
サブスクリプション型では、メリットを感じてもらえなければ、継続利用してもらえません。
顧客の声を聞いてサービス改善などに役立てる体制をつくるため、同社では、チェンジマネジメントリーダーを立てて取り組みました。

チェンジマネジメントリーダーは、まず、100日後の状態目標を示す「100日プラン」と、2~3年後の最終ゴールを作成して、経営層と合意を取りました。その上で、現場のメンバーにも同じ内容を共有。さらに、現場の心理的障壁を解消するために、現状の課題が生まれていることについて、会社を代表する立場から謝罪を行い、この先の変革をコミットしたといいます。

このように現場に丁寧に向き合うことで、変革に反対する「チェンジモンスター」を予防したり解消したりしながらチェンジマネジメントを実施し、2015年8月から約2年半、2017年に対前年度成長率26%を達成するに至りました。


組織変革を成功に導く「4つの問い」で、チームメンバーの90%が変更を採用(Google LLC)


検索エンジンで世界トップシェアを誇る米Google LLCでは、日常的に業務に「変革」を取り入れていますが、「組織の再編」といった社内の変革を管理する方法が統一されていなかったといいます。変革について従業員にアンケート調査を行った結果、組織の再編が行われたチームで、「変革の理由を理解していたメンバー」「変革時にチームリーダーから刺激を受けたメンバー」がともに50%を切っていたところもあったといいます。

そこで、同社では変革への新しいアプローチ「チェンジ・ルール(ChangeRules)」を開発しました。具体的には、次の4つの問いが組織変革を成功に導くというものです。
Q.1 なぜ?
Q.2 何を?
Q.3 誰が?
Q.4 どのように?

Q.1 なぜ?

第1フェーズでは、変革の必要性を問います。
「なぜ、この変革を行うのか?」ということです。
ここから派生して、次のような質問を投げかけ、回答してもらうことで、チームに共通認識を生み出すといいます。

  • 変革は、今すぐ必要か?
  • 変革は、あなたのビジョンや願望に沿っているか?
  • 変革を行うことで、どのような危険やチャンスがあるか?

Q.2 何を?

第2フェーズでは、変革のビジョンを問います。
「この変革で、何をしたいのか?」ということです。
ここから派生して、次のような質問を投げかけ、回答してもらうことで、チームに共通認識を生み出すといいます。

  • 望ましいビジョンはどのようなものか?
  • ビジョンを実現するにあたり、どのようなリスクがあるか?
  • ビジョンの成功・失敗の基準は何か?

Q.3 誰が?

第3フェーズでは、変革の関係者を問います。
「この変革で、誰が影響を受けるのか?」ということです。
ここから派生して、次のような質問を投げかけ、回答してもらうことで、チームに共通認識を生み出すといいます。

  • 変革に当たり、同意を取る必要のある重要なステークホルダーは誰か?
  • 変革の主導に関与させるべき人物は誰か?
  • 変革に反対する人は誰か?

Q.4 どのように?

第4フェーズでは、変革の方法を問います。
「この変革をどのように実行するのか?」ということです。
ここから派生して、次のような質問を投げかけ、回答してもらうことで、チームに共通認識を生み出すといいます。

  • 変革をどのように導くか?
  • 変革をどのように伝えるか?
  • 変革をどのように定着させるか?

この新たなアプローチの結果、チームメンバーの80%が組織変革について理解し、90%が変革の採用を表明したといいます。


2年で黒字化を達成したリバイバルプラン(日産自動車株式会社)


スカイラインやマーチ、ブルーバードなどを輩出した日産自動車は、バブル崩壊の影響で高級車の販売が不振となったことなどから経営が悪化し、1998年には200億円以上の赤字と、2兆円にのぼる有利子負債を抱え、経営危機に陥りました。

倒産寸前となった1999年、フランスのルノーと資本提携を結び、同社の傘下に入りました。そして、当時の同社の副社長であったカルロス・ゴーンが新たな最高経営責任者(CEO)となり、「日産リバイバルプラン」の元、リストラを進めました。

国内の年間生産能力を大幅に削減したり、子会社・関連会社のほとんどの保有株式を売却するなど、大幅なリストラを進める一方、変革チームとして部門横断型のCFT(クロス・ファンクショナル・チーム)を編成。また、販売店からのアンケート調査結果を元に、顧客ニーズに基づく車づくりを行いました。
この間、CEO自身が、会社が変わるべき理由や、どのように変わっていくかを、繰り返し社内に訴えたといいます。

2001年、同社は予定より1年前倒しで黒字に転じました。


「FF-CMP(富士フイルムチェンジマネジメントプログラム)」で課長クラスの意識改革を促す(富士フイルム株式会社)


カメラなどの精密化学メーカーである富士フイルムは、写真事業に代わってフラットパネルディスプレー材料などを主体とする事業構造へと変革するための「第2の創業期」とする中期経営計画の実施に伴い、2008年5月から、課長層に意識改革を促す研修として「FF-CMP(富士フイルムチェンジマネジメントプログラム)」を導入しました。

「FF-CMP」は、同社のグループ会社である富士ゼロックスが2003年から取り組んできた研修内容をベースにしたもので、過去の自分を振り返り、現在の自分を見つめ直すことで、自己変革を決意させるための研修だといいます。
1回に25~30人の課長を集め、全12事業部門のうち職種や職場などが異なるメンバーが5人1組になり、2泊3日で議論するというスタイルを取ります。プログラムの最後には、変革への活動計画を策定して上司や部下にも発表。

さらに6ヵ月後には、行動計画の進捗を確認するためのフォロー研修が1泊2日で行われます。フォロー研修までの6ヵ月間には、同じ研修を受けた同士で進捗状況を確認できたりコミュニケーションが取れるコミュニティサイトを活用して変革の決意を持続させる工夫が行われています。

課長クラスが変わると現場の雰囲気が明るくなることから、同社では継続的にこのプログラムを実施予定だといいます。


 

4. まとめ

チェンジマネジメントについて理解いただけたでしょうか?
ビジネス環境は目まぐるしく変化しつづけるため、対応した上で競争力を高めるためには、企業など組織そのものにも変革が求められます。

変革にはまず、変革の理由となる危機感や、理想的な将来像となるビジョンを持つことが重要です。
また、従業員たちが変化を嫌ったり変革に反対したりする理由にも目を向け、理解した上で丁寧にコミュニケーションを取って心理的・理論的なハードルを解消しましょう。

 

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