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中小企業がDX推進を成功させるために欠かせないポイント

経済産業省を中心にDX推進が叫ばれ、今やDXは大企業や先進的な企業だけのものではなくなりました。日本において99.7%を占める中小企業・小規模事業者がDXに取り組むことこそが日本の経済や暮らしを大きく変えていくでしょう。

ただ、中小企業にとってDXは少々ハードルが高いと感じられるかもしれません。
そこで、本コラムでは、経済産業省が発表した資料を紐ときながら、中小企業向けにDXが必要な理由や成功のポイントなどをご紹介いたします。

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1. 中小企業の7割がDXに取り組む予定がない

総務省が発表した令和3年の情報通信白書によれば、日本の約6割の企業がDXについて「実施していない、今後も予定なし」と回答したといい、中小企業に限っては約7割と、大企業の約4割と比較して大きな差があります。

さらに、地域別に見た場合、東京23区の大企業の5割以上(52.2%)がすでに何らかの取り組みをスタートしているのに対し、中小企業では20%強。「東京23区」「政令指定都市」「中核市」のいずれにも当てはまらない地域の中小企業に至っては、DXに取り組んでいる企業は9.4%と1割にも満たない結果となっています。

総じて、日本の中小企業は、DXへの取り組みが遅れており、意欲も低いということがいえます。

参考:情報通信白書令和3年版 第1部 特集 デジタルで支える暮らしと経済
第2節 企業活動におけるデジタル・トランスフォーメーションの現状と課題


 

2. 中小企業がDXに取り組むべき3つの理由

人的リソースやコストの面から、中小企業がDXに取り組むことはなかなか難しいと考えがちです。しかし、中小企業こそがDXに取り組むべきといえる3つの理由があります。

業務効率化が行えるから


DXとは、最新のデジタルテクノロジーを活用することで、経営戦略やビジネスモデル、プロダクト、顧客体験などを変革させることをいいます。どんなデジタルを導入して何を変革させるかは、その組織が自由に決められます。そして、変革の対象を「業務プロセス」とした場合は、業務効率化につながります。

あくまでも、「導入したデジタルテクノロジーで、何かできるか?」という順序で考えるのではなく、変革させたい内容に合わせて最適なテクノロジーを採用することが重要になってきます。

自社の業務プロセスに非効率性や課題を抱えている中小企業では、まず業務プロセスの変革から着手することをおすすめします。


中小企業でも手が届くITツールが増えているから


最新のデジタルテクノロジーを導入するとなると、中小企業の場合、コスト面がネックになるところが少なくないでしょう。しかし、近年では、さまざまなITリソースがクラウド化されています。これまでのように、高額な初期費用や運用コストを支払って資産として所有するのではなく、サービスとして安価に利用できるように変化してきているのです。

特に、ソフトウェアにおいてはSaaSが浸透し、リーズナブルな価格で利用できます。なかには基本機能が無料で利用できるものもありますし、無料トライアルが用意されているものも多くあります。

そして、SaaSのメリットの一つに、追加費用なしで機能のアップデートを享受できることが挙げられます。SaaSの多くは定額の月額料金などを支払えば使い放題のサブスクリプションが採用されているため、同じ料金で自動的に更新された最新のデジタルテクノロジーを活用できるのです。


節税が可能だから


経済産業省は、日本の企業のDXを推進するために、税額控除が受けられる「DX(デジタルトランスフォーメーション)投資促進税制」を創設しました。具体的には、令和3年(2021年)3月2日から令和4年度末まで、DXの実現に必要なクラウド技術を活用したデジタル関連投資に対して、税額控除(5%/3%)、または特別償却30%が適用されます。

「データ連携・共有」や「クラウド技術の活用」といったデジタル要件や、「全社の意思決定に基づくものであること」などの企業変革要件、投資額下限が売上高比0.1%以上などの諸条件をクリアする必要はありますが、DXにかかるコストを緩和してくれる制度となるでしょう。

この税制は、対象を特に中小企業に限ったものではありませんが、大企業に比べて資金力の強くない中小企業こそ、DXに踏み出すチャンスと捉えて活用するのが賢明ではないでしょうか。


 

3. 中小企業に最適なDXの進め方

DXを進めるに当たり、何から手を付ければ良いのか悩んでしまう企業がほとんどだと思います。
そうした中小企業に向けて、経済産業省は2022年4月に「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」を発表しました。
ここでは、同手引きに基づいて、中小企業に最適なDXの進め方を解説します。

中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引きとは


改めて「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」とは、2022年4月8日に経済産業省が中堅・中小企業等のDX推進に向けてまとめたもので、DXの進め方のほか、実際に中堅・中小企業がDXに取り組んだ事例なども紹介されています。同手引きは「概要版」「要約版」「本体」の3つの版が発表されており、順に読み進めることで、より内容が深く理解できる構成になっています。

なお、経済産業省は同じタイミングで「AI導入ガイドブック」も発表しています。中小企業がAI(人工知能)を導入する際に必要となる体制整備や準備・実証手法などについて解説されています。DX実施の際にAIを活用したいと考えている中小企業は、ぜひ目を通してみてください。

デジタルガバナンス・コードとは

ところで、「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」にある“デジタルガバナンス・コード” とは何を指すのでしょうか?

中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(本体)」によれば、デジタルガバナンス・コードとは、

デジタルガバナンス・コードとは、あらゆる産業でデジタル技術の活用が加速的に進む時代変化の中で、持続的な企業価値の向上を図っていくため経営者に求められる企業価値向上に向け実践すべき事柄を取りまとめたものです

とあります。

特徴的なのは、経営者に向けて発信された内容となっている点です。
経済産業省は、過去にも「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で、

DXを実行するに当たっては、新たなデジタル技術を活用して、どのようにビジネスを変革していくかの経営戦略そのものが不可欠である。

と明記するなど、経営層がDXを牽引することの重要性について強調してきました。ここからわかるように、これからの時代、企業などの組織がデジタル技術の活用を進めるに当たり、単にそのデジタル技術で何ができるかだけではなく、経営戦略を実現するために何をどう活用すべきかを見据えて中長期的な視点で検討・計画する必要があるといえるでしょう。

ここからは、具体的な中小企業に最適なDXの進め方をご紹介いたします。
「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」によれば、DX実現に向けたプロセスは、「1.意思決定」「2.全体構想・意識改革」「3.本格推進」「4.DX拡大・実現」と進められるものとあります。この4ステップは、大企業を含む一般的なDXの進め方と変わりませんが、中小企業の場合は人材不足をカバーするために経営者や一人の従業員が担う範囲が広くなるといいます。


1.意思決定


まずは、経営層が自社でDXに取り組むということを意思決定し、トップダウンで社内に通達します。

そして、CEO(最高経営責任者)、CTO(最高技術責任者)、CDXO(最高DX責任者)などが主体となり、自社のパーパスに基づく経営ビジョンや戦略を策定します。まだパーパスがないという企業は、この機会パーパスを策定することを検討しましょう。パーパスとは、企業など組織の存在意義を指します。たとえば、ソニー株式会社の場合「クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす。」をパーパスとして掲げています。

さらに、DX推進チームなどを設置して、次のステップに備えます。


2.全体構想・意識改革


DX推進チームを中心に、具体的に何を変革させるのかを検討します。ビジネスモデルなのか、プロダクトなのか、業務プロセスなのかといったことです。

さらに、DXを本格推進する前段階として、社内全体の意識改革を行います。従業員一人ひとりがDXに取り組むことを自覚し、自発的に行動に移せるよう、自社のビジョンやパーパスと絡めながらDXの構想を共有しましょう。

また、デジタルテクノロジーを導入するための土台づくりも行う必要があります。社内に残されたアナログな部分をデジタル化したり、蓄積してきたデータを上手く利活用できるようなシステム環境を整備したりといった準備を行います。

このステップを担うのも、前のステップと同様、経営やビジネスとデジタル技術の両方に精通するCEO(最高経営責任者)、CTO(最高技術責任者)、CDXO(最高DX責任者)などとなります。


3.本格推進


いよいよ、前の2ステップまでに準備してきた下地を元にDXを本格的に推進します。データ活用がスムーズに進むことを前提とした業務プロセスに改めたり、新たな価値を産むデータ活用/システム構築を検討、実施していきます。

新たなデジタルテクノロジーを導入するなら、このステップが該当します。その際、次のステップ以降でDXを拡大していくことを前提に、拡張性を重視してベンダーやツールを選定することも重要です。

また、次のステップへつなげるに当たり、このステップで自社のDX成功事例をナレッジとして蓄積しておきましょう。

このステップは、データサイエンティストやサイバーセキュリティエンジニアなど、DX推進チームの中でデジタルテクノロジーに精通した人材が先導します。


4.DX拡大・実現


最後のステップでは、DXの取り組みを顧客接点やサプライチェーン全体へ展開していきます。前のステップで得た社内のDXに関する知見を元に、ステークホルダーへ拡大していきましょう。

DXは中長期的に取り組むべきものであると先ほどお伝えしましたが、この先、デジタル化の波が止まることは考えにくく、半永久的に継続することを視野に入れ、試行錯誤しながら取り組んで行きましょう。


 

4. 中小企業のDX成功事例10選

上記のステップはどの企業にも共通する大まかなものになっています。そのため、自社でDXを進める具体的なイメージが湧きづらいかもしれません。そのような時に役立つのが、すでにDXに取り組み、一定の成果を挙げている他社の成功事例です。

DXの成功事例というと、やはり大企業や先進的な企業のものが目につきます。しかし、中小企業であっても、すでにDXに取り組んで成果を出しつつあるところが出てきています。
ここでは、「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き」に掲載された事例の中から10事例をご紹介いたします。

世界トップシェアを誇る製品にコア技術を融合(株式会社山本金属製作所)


経済産業省が中堅・中小企業等のモデルケースとなるような優良事例として発掘・選定する「DXセレクション(中堅・中小企業等のDX優良事例選定)」において、2022年のグランプリを受賞したのが、株式会社山本金属製作所の事例です。

同社は、弱電部品・自転車部品の大量生産を中心に金属加工業を展開する企業です。「機械加工現場にイノベーションを起こす」をパーパスに掲げ、現在では、計測評価事業にも注力しています。特に、「精密加工技術」「ロボット・システムインテグレーション」「センシング・制御・計測評価」の3つのコア技術を持ち、工作機械とロボットのメーカーとして世界トップシェアを誇ります。このことから、これらを融合してイノベーションを起こすことをDXの柱としました。

具体的には、「ラーニングファクトリー」「デジタルマーケティング」「つながる向上/ものづくり基幹システム開発」「ものづくり/高度加工エンジニア育成」「海外展開(アジア市場開拓)」「新分野マーケット開拓(ロボット・医療・半導体製造装置・宇宙)」の6つのテーマのもと、「観察→把握・判断→決定(仮説)→行動(テスト)」のサイクルを回し、ノウハウをデジタル化する取り組みをスタートしました。

たとえば、技術者の“気づき”を支援する新たな生産システムの基盤として「Advanced Control(R) ―加工エンジニアリングプラットフォーム―」という新たなソフトウェアを開発。これは、現場で工作機械やロボット、周辺機器と連携が取れるソフトで、各機械加工に必要なノウハウを収集するためのデバイスも開発しました。

また、ものづくりだけではなくサービスの向上にも注力し、自社のみならず顧客の現場でも人材を育てる「LASプロジェクト」を開始しています。

同社がビジョンとして掲げる2030年を目標に、これまで培ってきた高度な加工技術をさらに磨くとともに、統合的なエンジニアリングカンパニーを目指して、さらなるDXを推進しているところです。


社員の手によるデジタル化にこだわり、持続可能な電気の安定供給を目指す(株式会社日東電機製作所)


「DXセレクション2022」で準グランプリを受賞したのが、群馬県に本社を持つ電気制御装置メーカーの株式会社日東電機製作所です。「電気をつなぎ、人と豊かな暮らしをつなぐ」をミッションに掲げ、電力をコントロールするための配電盤などの設計・開発から生産までを手がけ、発電所や変電所、鉄道、浄水場などへ納入しています。

同社は、近年の電力産業を取り巻く現状として「脱炭素による再エネ市場の拡大」「電力装置産業の企業・技術者の減少」という需給バランスのアンマッチに危惧し、効率化・省力化のために2020年、IoTによる戦略ロードマップを作成。
そして、通信環境を整えて製造現場にタブレットを完備し、マイクロソフト社のローコード開発やRPAのサービスを用意して、社員が日常の中でデジタルデバイスを当たり前のように活用し、社内アプリを作成できる環境を整備しました。

DXの取り組みにおける同社のこだわりとして、社員たちが進んで使いたくなるような仕組みづくりを念頭に、時間がかかったとしても自らの手で作ることで「痒い所に手が届く改善」を積み重ねられるようにしたといいます。実際に、統合管理システム「NT-MOL」で情報の見える化を実現したり、「3D-CAD設計/電線測長システム」で設計データを活用できるようになったり、非プログラマによる社内アプリ開発が日常的に行われるようになり、デジタル人材育成にもつながったそう。

同社は、将来的に生産活動の中で得られるデータを解析して自動的な最適化を目指し、DXの取り組みを継続しています。


地域で産学官連携しつつ、自社の経営課題解決を図る(株式会社リョーワ)


同じく「DXセレクション2022」で準グランプリを受賞した株式会社リョーワは、福岡県北九州市で油圧装置の販売・修理・メンテナンスなどを手がける企業です。2017年12月に策定した経営戦略を、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて2020年5月に一部改訂し、DXを盛り込みました。

同社がDXに取り組む必要性を、自社の経営課題である「脱油圧化による油圧装置の減少」と「人口減少による日本市場の縮小」の解決のためとして位置づけ、自社の課題とDXのマトリックス図を作成した上で、5年計画でロードマップを策定。

同ロードマップは、デジタイゼーション、デジタライゼーションと段階を踏み、DXに着手する流れを取っています。デジタイゼーションではGitHub※の活用による開発環境の見える化で日本とタイのグローバル開発の効率化を、デジタライゼーションでは新業務システム(見積・販売・給与・会計)導入によるデータ連携と、外観検査システムのサブスクリプションによる販売を計画しました。
※GitHub…ソフトウェア開発のプラットフォーム。

外観検査システムについては、同社の主事業ではなかったものの、従来の米国製の高価な外観検査システムがなかなか導入できない企業が多かったことから、初期投資20万円、月2万円の低価格なクラウドAI検査システムのサービスを提供すべく地元のスタートアップ企業と開発を進めているといいます。

単なる業務の効率化にとどまらず、企業文化の改革と新しいビジネス(価値創出)の実現を図るべく、価値提供手段の改革や新たなビジネスの創出のほか、企業文化の改革、働きやすい職場の実現を目指し、従業員体験の変革をも含むDXを推進しています。


りんご農園を持続可能なものへ(もりやま園株式会社)


「DXセレクション2022」で審査員特別賞を受賞したのが、青森県弘前市で明治時代から100年以上も続くりんご農家を営むもりやま園株式会社です。同社の代表取締役である森山 聡彦氏が2008年に父から農園を引き継ぐ際、父の頭の中だけにある農園の中のりんごの木の種類と位置を覚える作業から始まったといいます。これを可視化できないかと考えたところから同社のDXはスタートしました。

背景には、青森県でりんご農園を営む農家の高齢化と後継者不足があり、将来的に農家が生産をやめてしまうという危機感がありました。森山氏はりんご産業を持続可能なものにするために、2015年に会社を設立。果樹特化のクラウドアプリ開発のために、補助金を受けて地元のIT企業と協力し、2016年にアプリが完成しました。

このアプリは、果樹につけたQRコードをスマートフォンで読み込み、農作業の内容を記録するというもので、活用の結果、農作業全体の75%が剪定や摘果など、廃棄するための作業であることが判明したといいます。
また、日本生産本部の発表する産業別の名目労働生産性で、農林水産業は最下位であり、全産業(平均)の1/3であることからも、生産性向上が必要であるとの結論に至りました。

そこで、毎年、捨てられていた33トンもの摘果りんごを、農薬の問題をクリアして安全に収穫できる防除計画を、5年の歳月をかけて実用化。摘果りんごを活用した「テキカカ(R)シードル」「テキカカ(R)アップルソーダ」の通年製造・販売で収益化にこぎつけました。2018年から販売を開始し、毎年2,500万円以上の売上になっているといいます。
また、データに基づき、最も効果的な農業機械(光センサー選果機・ロボット草刈り)の導入・活用も行ったところ、名目労働生産性が農園引継時の2.4倍まで向上。

今後は、名目労働生産性を3.5倍にすることを目標に、近隣農家とオープンイノベーションを推進し、20年後に青森県産りんごの生産高を1,000億円から1,300億円へしたいと意気込んでいます。


食に関わる人・企業・地域をつなぐ「GOKAN 北海道みらいキッチン」(アイビック食品株式会社)


北海道のたれ・だし・惣菜メーカーであるアイビック食品株式会社のDXへの取り組みは、「DXセレクション2022」で優良事例として選定されました。

同社では、北海道の食のDX拠点として、食に関わるすべての人・企業・地域のハブとなる「GOKAN 北海道みらいキッチン」を、2021年9月1日に本社屋内に開設しました。キッチンと撮影スタジオを併設した「GOKAN 北海道みらいキッチン」では、味覚を中心に、五感を刺激するさまざまなしかけが施されており、企業PRやライブコマース、レンタルスタジオなどとして活用することが可能です。

ほかにも同キッチンには、アロマシューター(香り発生装置)や配膳ロボット Servi(サーヴィ)、VR/ARの利用環境が設備されていたり、水耕栽培でハーブを育てていたりするなど、食に関連するさまざまな最新のデジタルテクノロジーが集約されています。

同キッチンの利用は、取引先企業は無料。取引のない企業は要問い合わせとなっています。


独自のアルゴリズムで予測的中率は95%超の来店予測を実現(有限会社ゑびや/株式会社EBILAB)


「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(要約版)」でDX取組事例として紹介されているのが、有限会社ゑびや/株式会社EBILAB(エビラボ)の取り組みです。

有限会社ゑびやは、伊勢神宮近くに立地する老舗飲食店で、地元の名産品を取り扱う商店も経営しています。2017年10月に代替わりして新社長が就任後、ビッグデータを活用した来客予測を行っています。

従来、中小規模の飲食店では、店員の経験などによる属人的な「勘」で来店予測が行われてきました。しかし、同社では、「観光予報プラットフォーム」の宿泊予測といったオープンデータに加え、食べログのアクセス数といった自社保有データを融合して、来店予測を行う独自のアルゴリズムを開発。予測的中率は95%超を誇るといいます。これにより、売上5倍・利益率10倍を実現。食品ロス率も低下しました。

同社は、このノウハウをプロダクト化して販売を開始しています。システムを外販するために設立したのが株式会社EBILAB(エビラボ)です。EBILABの企業理念は「笑顔を売る人が笑顔でいられる世の中に」。同社の立ち上げに当たり、大多数の社員は外部からITスキルのある人材を採用したのではなく、有限会社ゑびやで働いていたホールスタッフなどがスキルアップして業務を担当しているといいます。
人材のDX化に成功しているという面でも、特色のある事例です。


社内の意識改革を行いDXの風土の醸成に重点(マツモトプレシジョン株式会社)


同じく、「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(要約版)」でDX取組事例として紹介されているマツモトプレシジョン株式会社も、新社長の就任をきっかけにDXへの取り組みをスタートしました。同社は、福島県喜多方市にある精密機械部品加工業を営む企業です。

きっかけは講演会で「DX」について聞いたことで、それまで新社長が漠然と感じていた生産性向上と経営改善の必要性が再認識され、デジタル技術を活用した変革を進めることを決断したといいます。

創業70年超の歴史を持つ同社で「変革」を敢行することは容易ではないと考えたため、まずはDXの風土を醸成するために社長自身がシステム刷新の知識を身に付けた上で役員やIT担当社員にビジョンとDX推進の必要性を説きました。このプロセスに1~2年の時間をかけたといいます。
そして、営業利益の15%をIT投資に振り向けることを決断。3年の準備期間を経て組織の変革を推進し始めました。

さらに、共通業務システムプラットフォーム「CMEs(Connected Manufacturing Enterprises)」を導入。このシステムに合わせて業務を改革する必要がありましたが、これにより業務のあり方を根本から見直し、業務の無駄や無理を見つけ出すことにつながったとの成果を出しています。


紙媒体からクラウドシステムでの運用に切り替え、会社全体でのプロセス最適化を実現(株式会社ヒサノ)


同じく、「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(要約版)」でDX取組事例として紹介されている株式会社ヒサノは、熊本県熊本市で一般貨物自動車運送事業・機械器具設置工事業を営む企業です。

同社では、業務の属人化・ブラックボックス化を課題として把握しつつも、具体的に対策できずにいたといいます。しかし、IT経営セミナーを機にビジョンが徐々に明確になり、「5年後に総合物流業者として九州全域をカバーしたい」というビジョンができ、この実現のためにDXに取り組み始めました。

まずは、現状の業務の進め方では達成できないという気づきから、業務分析とシステムの導入により、業務プロセスを抜本的に改革することにしました。
具体的には、ビジネスの中核である運送トラックの配送プロセスを、従来の紙媒体による運用から、新たに構築したクラウドシステムでの運用に切り替えました。これにより、どの担当者がいつ、どの車両で、どのような作業をするかを一覧で確認できるようになりました。

また、このシステムを軸に、社内の各業務システムとのデータ連携を図り、遠隔拠点を含む会社全体でのプロセス最適化を実現しました。


ブドウの受け入れ時のアナログ作業をシステム化して「産地細分化ワイン」を製造(北海道ワイン株式会社)


北海道ワイン株式会社は、「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(本体)」のDX取組事例集に掲載された北海道のワインメーカーです。
同社は、産地を細分化した高品質ワインを増産・安定供給してより多くのお客様に届けたい、ブドウ農家にもしっかりと利益を還元したいとの想いからDXの取り組みを始めました。

ワインのうち、付加価値が高いとされる「産地細分化ワイン」の生産を妨げているのが、原料であるブドウの受け入れ時の、口頭伝達や手書き記帳といったアナログな作業にありました。ブドウの収穫期に合わせた短時間かつ大量の受け入れと、リアルタイムでの産地情報等の把握を行うために、外部ITベンダーの協力のもと、「ブドウ受入演算システム」を構築。これにより、「産地細分化ワイン」の製造が可能になりました。


人材不足の解消のために取り組んできたIT化が変革の礎に(株式会社ヒバラコーポレーション)


同じく、「中堅・中小企業等向け「デジタルガバナンス・コード」実践の手引き(本体)」のDX取組事例集に掲載された株式会社ヒバラコーポレーションは、茨城県東海村で工業塗装を営む企業です。

先代社長の他界を受けて26歳の若さで社長に就任した現社長は、同社の経営課題である粗利益率の低さや人材不足を解消しようと検討を始めました。その中で、人を募集しても応募がないことから、現状の人材で効率的に業務を進めるために、電子化に着手しました。
まだパソコンすら社会に広く普及していなかった1990年当時から、スキャナーやプリンターを導入し、作業伝票の発行を大幅に業務改善。社内の抵抗もある中で社長自らが社員に丁寧に説明し、業務変革を成功させました。これが、のちのDX成功の布石となりました。

以降、「技術のデータ化」と「生産管理」を軸に継続的にIT活用を推進。塗装業界においてIT先進企業であったため、近年は、そのノウハウをメーカーの塗装部門に提供するコンサルティング事業も立ち上げ、塗装部門における人材不足、品質の不安定化、設備投資の遅れ、ノウハウの不足といった諸課題に対する解決策の提案を行っています。


 

5. 中小企業がDXを進める際に参考になる本

最後に、中小企業がDXを進める際に参考にできる書籍を3冊、ご紹介いたします。

『担当者になったら知っておきたい 中堅・中小企業のための「DX」実践講座』

著:船井総合研究所 デジタルイノベーションラボ 出版:日本実業出版社(2021年8月発刊)

中小企業向けのDXの参考本が少ない中、2021年8月に出版された、比較的、新しい書籍です。著者は、中小・中堅企業を対象に専門コンサルタントを擁する日本最大級の経営コンサルティング会社である船井総合研究所。

本書では、中小企業がDXに取り組みに当たり、壁となりがちな要素、よくある失敗を回避するために「DXジャーニーマップ」を作成することを提案。具体的な進め方の解説とともに、業種ごとの中堅・中小企業のDXジャーニーマップ事例が紹介されており、具体的なイメージを掴みやすくなっています。

【『担当者になったら知っておきたい 中堅・中小企業のための「DX」実践講座』のもくじ】

第1章 なぜ、デジタル化はうまくいかないのか?
第2章 DXで実績を上げるためのストーリーを描く
第3章 自社の現状レベルを知る「DX診断」
第4章 DX設計図「DXジャーニーマップ」を作る
第5章 RPA?BIで実現する「リアルタイム経営システム」
第6章 自社に合ったデジタルツールを選定する
第7章 中堅・中小企業のDX成功事例
第8章 DX推進でよくある課題と対処法
第9章 失敗しないDXプロジェクトの進め方
巻末付録 中堅・中小企業のDXにおすすめのデジタルツール

引用元:Amazon


『勝ち残る中堅・中小企業になる DXの教科書』

著:野口 浩之、長谷川 智紀 出版:日本実業出版社(2020年3月発刊)

デジタル・ディスラプターや2025年の崖、レガシーシステムからの脱却など、DXの背景や必要性などDXの基本的な部分から理解できるのが本書。著者は、情報システムの診断・企画・設計・開発監理などを手がける青山システムコンサルティング株式会社の代表取締役とシニアマネージャーです。

中小企業の先進的なDX事例も豊富に掲載されていますが、具体的なプロセスについては書かれていないため、前項で紹介した『担当者になったら知っておきたい 中堅・中小企業のための「DX」実践講座』と併せて読むと良いでしょう。


『いまこそ知りたいDX戦略 自社のコアを再定義し、デジタル化する』

著:石角 友愛 出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン(2021年4月発刊)

日本企業がDXに失敗していることを前提に、DXを推進するための考え方やフレームワークについて書かれた書籍です。

著者は、パロアルトインサイトCEOでAIビジネスデザイナーの石角 友愛氏。日本企業にAIの戦略提案から開発などの支援を提供してきた経歴を持ち、順天堂大学大学院で「AI企業戦略」を教える客員教授でもあります。

中小企業に特化した内容ではありませんが、第2章から第4章で解説される「DXを推進するために超えるべき壁」は、中小企業にもよくあるもので、参考になるでしょう。
掲載事例は海外を含む大企業のものが多いので、中小企業の事例は、前に紹介した2冊を参照してください。

【『いまこそ知りたいDX戦略 自社のコアを再定義し、デジタル化する』のもくじの一部】

第1章 そもそもDXとは何か?
第2章 DXを推進するために超えるべき壁①「何から手をつければいいかわからない」
第3章 DXを推進するために超えるべき壁②「なかなか実現フェーズに進まない」
第4章 DXを推進するために超えるべき壁③「リソースが足りない」
第5章 成功するDXのあるべき姿

引用元:ディスカヴァー・トゥエンティワン


 

6. まとめ

中小企業向けに、DXに取り組む必要性や推進のポイント、優良事例などをご紹介しました。
自社でDXに取り組む具体的なイメージはお持ちいただけたでしょうか?
上でご紹介した事例をご覧いただくとお気づきのように、どの企業も経営者が自社の経営課題や環境の変化などに危機感を抱き、従業員一人ひとりにDXの必然性や方法を丁寧に説明したり、取り組みやすい環境を用意している点で共通しています。
DXに前向きになれないという経営者の方は、まず、意識改革が必要でしょう。こちらでご紹介した書籍などを、ぜひ活用してみてください。

 

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