ニューノーマルのDXを支える注目トレンド「ローコード開発」とは
新型コロナウイルス感染拡大により、半ば強制的に始まったテレワーク。
各企業では、リモートを前提にした新しいワークスタイル・働き方へとシフトすると同時に、勢いの増すデジタル技術をビジネスに活かすために、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進も待ったなしの状態です。
Afterコロナ/Withコロナ時代、企業はデジタル技術を器用に取り入れながら、自社に最適で、スピード感をもったニューノーマル(新常態)なビジネススタイルを確立し展開していくことが、競争優位性のカギと言えます。
DXの推進には、経営戦略の明確化や体制強化、業務プロセスの見直しなど対応すべき事項が多々ありますが、アプリケーション開発の内製化もその一つです。社内業務のデジタル化はもちろん、社会が求めるニーズにいかにスピーディに対応できるかによって、ビジネスの発展に大きく影響が生じます。
内製化の実践手段として今注目を集める、ローコード開発について解説していきます。
ローコード開発が注目されている理由
1.1 内製化が進む背景
従来のIT活用といえば、社内業務の効率化やコスト削減を目的としていましたが、現在は顧客との関係を深めてビジネスに直結するエンゲージメントを目的とした活用にシフトしています。
この領域では、ITを活用する顧客ニーズが多様化・複雑化・高度化しており変化も著しいため、スピーディかつ柔軟な対応が常に求められます。
アプリケーション開発においても、従来はSIer(※1)に業務委託して、一定期間をかけてアプリケーション開発を行うウォーターフォール型の開発手法が一般的でした。
しかし、それでは顧客ニーズの変化に追従していくことが難しくなり、アジャイル(※2)やDevOps(※3)といった開発手法を用いて業務ノウハウを蓄積しながらスピーディに自社で開発を行う内製化を重視する企業が増えてきたのです。
■用語解説
(※1) SIer... システムインテグレーション(情報システムの構築において、ユーザの業務を把握・分析し、課題解決に向けたシステムの企画、構築、運用、保守などの業務を請け負うサービス)を行う業者のこと。
(※2) アジャイル...「俊敏な」「すばやい」という意味。開発工程を機能単位の小さいサイクルで繰り返し進めていく、ソフトウェアの開発手法の一つ。
(※3) DevOps...開発者(Development)と運用者(Operations)が連携し、柔軟かつスピーディにシステムを開発・運用することで、ビジネス価値や高品質なサービスを継続的に提供する取り組みを示す概念。
1.2 注目されている理由
内製と言っても、慢性的なIT人材不足が深刻化している昨今、適切な開発スキルを持った人材を確保し限られた予算内で実行していくのは困難です。
また、システム部門ではなく、コードの記述による開発スキルを持たないユーザの業務部門自らが現場の業務に則したアイデアを形にする動きも顕著です。このような背景から、プログラミング知識なしでも開発可能なローコードが今、注目を集めています。
ノーコード開発、ローコード開発とは何か?
2.1 ノーコード開発
ノーコード開発とは、全くソースコードを書かずにアプリケーション開発を行う手法です。
ノーコード開発ツールを利用して、ドラック&ドロップの直感的操作で開発を行っていくため、高度なプログラミング知識や経験のないシチズンディペロッパー(非開発者)でも、システム開発を行うことが可能です。
2.2 ローコード開発
ローコード開発とは、ソースコードを全く書かないというわけではなく、少しだけ書かなくてはなりません。極力コードは書かず最小限のソースコードで、アプリケーションを開発するという、海外でも一般的な手法です。
基本的な開発方法は、ノーコードと同様、ドラック&ドロップの直感的操作で開発を行っていくため、プロフェッショナルな開発者も開発生産性を高めながら効率よくスピーディに開発を行うことができます。
ノーコードもローコードも、視覚的なアプローチによって効率的にアプリケーション開発を行い、生産性の向上が期待できる開発手法と言えます。
2.3 ノーコード開発、ローコード開発の違い
上記で述べているように、ソースコードを全く書かないか、少しだけ書く必要があるかという違いがありますが、開発するアプリケーションの規模や種類にも大きな違いがあります。
ノーコードは、他システムとのデータ連携を必要としない、シンプルなWebサービスや、部門内で活用するような小規模なアプリケーション開発に適しています。
ノーコードツールは機能が限られている傾向にあるため、構築したアプリケーションの他部門展開やレガシーシステムへの接続は難しく、拡張性は高くありません。
一方ローコードは、再利用可能なAPIを活用した機能拡張や他システムとの統合、クラウドで提供されるサードパーティの活用など拡張性が高いため、部門や企業をまたがるような大規模システムにも適用できます。
独自のロジックやデータ連携といった機能を追加することで、より高機能なシステムを開発することができます。
ローコード開発のメリット、デメリット
ローコード開発は、企業にとって様々なメリットをもたらし、素早い開発サイクルによってDXの推進をサポートします。
3.1 メリット
開発期間の短縮
コンポーネントを組み合わせて開発していくため、これまでプログラムを書いていた時間を大幅に短縮することができ、生産性向上につながります。さらにカスタマイズも容易に行うことができます。スピーディな開発によって、いち早く顧客体験価値(CX)を高めたいユーザの要求にも対応することが可能です。
コスト削減
システム開発・運用に割り当てられる予算は限られ、常に十分な予算を確保することは困難です。ローコード開発プラットフォームの活用で、最小限の工数でアプリケーション開発を行うことができます。人件費、設備費などのコストも合わせた削減が期待できます。
プログラミング知識不要
プログラミング知識のないシチズンディペロッパー(非開発者)でも開発可能なため、 アプリケーション開発の敷居が低くなります。SIerやシステム部門に任せていたアプリケーション開発も、業務部門が主体となって進めることができるようになるため、作りたいシステムの要件や情報の認識のズレ・ギャップも起こりにくくなります。
3.2 デメリット
ある程度の経験とスキルが必要
何か問題が発生し処理が複雑化した場合、経験とスキルのあるエンジニアが必要です。 誰でも容易に使えるわけではなく、シチズンディペロッパー(非開発者)には使いにくい場合もあります。
プログラミング開発より自由度が低い
ローコード開発ツールを使用することで、開発内容はある程度制限されます。
スピード開発には適しており、またカスタマイズも可能ですが、ビジネスロジックが複雑だったり完全に自由な設計・開発を行いたい場合は、ゼロからプログラミング開発した方が良いケースもあります。
DXとは?
ここで、改めて、DXとは何かを確認しておきましょう。
DXとはDigital Transformationの頭文字を取ったもので、日本語では「デジタル変革」と訳されます。
最新のデジタルテクノロジーを活用することで、既存のプロダクトや業務プロセスなどを変革させることをいいます。
4.1 DXの課題
日本でも経済産業省を中心にDXの必要性が叫ばれ、多くの企業が取り組みを進めています。
ただ、すべての企業がスムーズにDXを実現できているわけではありません。
ネックとなっているのが、次の3点です。
4.2 経営戦略が欠如している
経済産業省では、「デジタルガバナンス・コード2.0」などの発表資料の中で、DXを実現していく上では、経営層のコミットメントやリーダーシップが重要であると説いています。
本来、DXとは経営課題を解決するための手段だからです。
しかし、DXを単に新たなITツールを導入することと勘違いしてしまうと、変革を起こせず、期待したような効果は得られません。
4.3 レガシーシステムの刷新のハードルが高い
経済産業省の発表資料「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」でも触れられている通り、2025年には構築から21年以上経過した基幹系システムの全体に占める割合が6割に達することが予測されています。
レガシーシステムは、長年、利用される過程で機能がツギハギされており、内部の構造を正しく把握できている人材がおらず、ブラックボックス化しているケースが少なくありません。
システム刷新の際にどのようなエラーが起きるかわからない状態で、簡単には刷新できないため新たな技術を導入できないというジレンマに陥っています。
レガシーシステムについて詳しくは、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
・レガシーシステムとは? ~2025年の崖との関係性から脱却する方法までわかりやすく解説~
4.4 DXを推進できる人材がいない
実際にDXを推進するのは多くの場合、情報システム部門や現場のユーザー部門でITリテラシーの高い人材によって構成されるプロジェクトチームです。
特に、プロジェクトリーダーとしては、最新のデジタルテクノロジーやシステム開発、データサイエンスなどに精通し、さらに自社のビジネスや業界にも知見のある人材が必要です。
しかし、実際にこれらの条件を満たす人材は少なく、確保できないためにDXが進まないという現状があります。
DXを推進する人材について詳しくは、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
・DX人材に求められる役割とマインドセットを簡単解説
DXにローコード開発を活用できる理由
このような課題を抱えるDXにおいて、ローコード開発が解決手段として期待されている理由は、次の2点です。
5.1 スピーディーにDXを推進できるから
経済産業省は、「DX(デジタルトランスフォーメーション)レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」の中で、レガシーシステムが刷新できなかったり、IT人材が不足したりすることから、日本のDXが進まなかった場合、2025年以降、最大で年間12兆円経済損失が生じる恐れがあると指摘しています。これが「2025年の崖」です。
そこで、ローコード開発を活用することで、構築フェーズを大幅に短縮できます。このため、システムをスピーディーに開発・導入できるようになり、DX推進のスピードアップを図れます。これが、「2025年の崖」の回避につながるでしょう。
5.2 システム変更に対応できるから
DXは短期的な取り組みではなく、中長期的にPDCAを回しながら改善を加え、変革を継続する取り組みです。
その中で、当初導入したシステムが実情と合わなくなってくるケースも出てきます。
その際、ローコード開発なら、コーディングを必要とせずにシステム変更が可能な場合があります。その場合、コンポーネントを追加・削除することで対応できるため、プログラミングの専門知識を持たない現場の担当者の手でシステム変更が行え、IT人材不足にも対応できます。
DXを推進させるローコード開発の導入ポイントについては、下記の記事をご覧ください。
【関連記事】
・DXを推進させるローコード開発の導入ポイントとは?
まとめ
アプリケーション開発においても、ニューノーマルなビジネススタイルが求められており、オフィスに集中して作業するスタイルから自宅での分散作業へ、"人月"のビジネスから"価値創造"のビジネスへと転換が始まっています。
ローコード開発は、ビジネススピードへの迅速な適応やDX推進に向けた一つの開発手段です。
自社におけるビジネス戦略の刷新やデジタル革新を検討される際は、ローコード開発プラットフォームの導入も選択肢の一つとして、検討されることをおすすめします。
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