パッケージ開発とは?メリットやスクラッチ開発・ローコード開発との違い、選び方を解説

パッケージ開発は、既存のソフトウェアパッケージを導入・活用する開発手法です。開発にかかる手間とコストを削減でき、早期に必要なシステムを利用開始できます。
とはいえ、パッケージ開発にもメリット・デメリットが存在するため、「自社にパッケージ開発が適しているのかわからない」といった方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、パッケージ開発とは何か、メリット・デメリットなどを解説します。パッケージ開発の進め方やスクラッチ開発・ローコード開発との違いも紹介するので、ぜひ最後までチェックしてみてください。
パッケージ開発とは
パッケージ開発とは、企業や組織で共通的に使われる機能をあらかじめ備えたソフトウェアパッケージを導入・活用する開発手法を指します。業務に必要な基本機能が完成済みで提供されるため、ゼロから設計やプログラミングを行う必要がなく、導入にかかる時間やコストを大幅に抑えられる点が特徴です。
代表的な例としては、会計システム・在庫管理システム・人事給与システムなどが挙げられます。これらは多くの企業が共通して必要とする業務機能を備えているため、あらかじめパッケージ化することで多数の企業に販売・提供できる仕組みになっています。企業側はパッケージ製品を購入して導入するだけで、すぐに業務に利用できる状態を整えることが可能です。
また、パッケージ製品は多くの企業で導入実績があるため、機能や動作が安定しているのも大きな利点です。一方で、自社独自の業務に完全に合わせることは難しく、使い方や業務フローをパッケージ製品に合わせる必要が生じるケースもあります。こうした特徴を理解したうえで、自社に適した開発手法かどうかを判断することが重要です。
パッケージ開発のメリット
パッケージ開発には、その他の開発手法と比べて期間やコストなどの面でいくつかのメリットがあります。ここではパッケージ開発の主なメリットとして、以下の3つを紹介します。
・短期間で導入できる
・再現性が高く安定している
・コストを抑えられる
短期間で導入できる
パッケージ開発の最大の魅力は、導入までの期間が短いことです。必要な機能があらかじめ実装されているため、ゼロから要件定義や設計を行うスクラッチ開発と比べて、準備工程を大幅に省略できます。導入作業は主に環境構築や設定変更、データ移行、操作研修などに集中するため、数週間から数か月で稼働を開始できるケースも少なくありません。
業務改善やDXの推進では、スピード感が求められる場面が多くあります。市場や顧客ニーズの変化に迅速に対応するためにも、短期間で利用開始できるパッケージ製品は非常に有効です。とくにスタートアップや中小企業など、リソースに限りがある企業にとっては、立ち上げまでの期間を大幅に短縮できる点が大きなアドバンテージとなるでしょう。
再現性が高く安定している
パッケージ製品は、多数の企業で利用された実績に基づいて作られているため、安定性が高いのも特徴です。長年にわたり運用される中で発生した不具合などが改善されており、品質が熟成されていることから、導入後に大きなトラブルが起こりにくい傾向があります。
さらに、導入支援やマニュアル、ヘルプデスクなどのサポート体制が整備されている場合が多く、運用開始後のトラブル対応もスムーズに行いやすいのも利点です。新規開発では不具合の洗い出しやテストに多大な工数が必要ですが、パッケージ製品は過去の導入実績から得た知見が活かされているため、安定稼働を前提として利用を開始できます。
アップデートやバージョンアップも定期的に提供されるため、法改正や技術進化への対応も比較的容易です。
コストを抑えられる
パッケージ開発は、初期費用・開発コストを大幅に抑えやすい点も大きなメリットです。
スクラッチ開発では要件定義や設計、実装、テストなどすべてを個別に行うため、膨大な人件費と工数がかかります。一方、パッケージ開発は既に完成しているソフトウェアを利用するため、導入にかかるコストはライセンス料や設定費用、導入支援費用に限定されるでしょう。
長期的に見ても保守・運用コストを抑えやすい傾向があります。バグ修正や機能追加はベンダーが行うため、自社で開発チームを常設する必要がなく、専門人材の確保や育成コストを削減可能です。限られた予算内でシステムを整備するうえで、パッケージは有力な選択肢となるでしょう。
パッケージ開発のデメリット
パッケージ開発には多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットも存在します。ここでは、パッケージ開発の主なデメリットとして、以下の3点についてチェックしておきましょう。
カスタマイズの応用が利かない
パッケージは基本機能が固定されており、大幅なカスタマイズに対応しにくいという制約があります。あらかじめ想定された範囲外の機能追加や仕様変更を行おうとすると、ソースコードへの大規模な改修が必要になり、費用と工数が急増する恐れがあるため注意が必要です。
また、ベンダーによっては独自仕様で開発されているため、カスタマイズによってアップデートやサポートが受けられなくなるリスクもあります。そのため、自社の業務が標準的な機能でカバーできるかどうかを事前に慎重に見極めることが必要です。
業務フローを変更する必要がある
パッケージは汎用的な設計であるため、自社の業務をパッケージに合わせる必要が生じる場合があります。これまで独自に構築してきた業務フローや慣習を変更する必要があると、社内で混乱や反発が起きることもあるため注意が必要です。
とくに、業務手順や権限構造、帳票形式などが大きく異なる場合、導入にあたって業務改革を同時に進める必要が生じます。業務フローの再設計には時間と労力がかかるため、事前に影響範囲を洗い出しておくことが大切です。
また、現場の従業員が新しい業務フローに慣れるまでに時間を要する場合もあり、導入直後の生産性が一時的に低下する可能性もあります。教育や研修を丁寧に行い、スムーズな定着を図りましょう。
トラブル対応が難しい
パッケージはベンダー側の仕様や設計に依存する部分が大きく、自社でのトラブル対応が難しいという側面もあります。ソースコードが公開されていないケースが多いため、障害発生時には原因の特定や修正を自社で行うことができず、ベンダーへの問い合わせに頼らざるを得ません。
対応までに時間がかかると、業務に支障が出るリスクもあります。また、ベンダーが提供を終了した場合やサポートが打ち切られた場合には、代替システムの検討・移行が急務となり、業務への影響が大きくなる可能性もあるため要注意です。
パッケージ開発・スクラッチ開発・ローコード開発の違いと選び方
システム開発には、パッケージ開発のほかにスクラッチ開発とローコード開発という手法も存在します。パッケージ開発・スクラッチ開発・ローコード開発の特徴は、以下の表のとおりです。
項目 | パッケージ開発 | スクラッチ開発 | ローコード開発 |
概要 | 既製ソフトを購入・導入して利用 | 要件定義から設計・開発・テストまで一から構築 | GUIベースで最小限のコーディングで開発 |
導入期間 | 短い(数週間〜数か月) | 長い(半年〜数年) | 非常に短い(数日〜数週間) |
初期コスト | 比較的安い | 非常に高い | 比較的安い |
運用・保守コスト | 低め | 高め | 低〜中 |
カスタマイズ性 | 低い | 高い | 中程度(制限内で柔軟) |
品質・安定性 | 高い | 要体制整備 | 標準的 |
必要な技術力 | 低め | 高い | 低〜中 |
適しているケース | 標準的な業務機能を早く導入したい | 独自業務に完全適合させたい | 小規模・短期で素早くアプリを作りたい |
主なリスク・注意点 | カスタマイズ制限・ベンダー依存 | 開発期間・コストが膨大/要件変更リスク | 複雑要件に不向き・プラットフォーム依存 |
パッケージ開発|業務プロセスが標準化されており短期間で導入したいケースにおすすめ
パッケージ開発は、すでに完成している既製ソフトウェアを購入・導入して利用するため、基本的な業務機能が一通り備わっており、導入後すぐに運用を開始できる点が特徴です。導入期間は数週間〜数か月と短く、初期コストも比較的抑えられます。
一方で、カスタマイズ性や拡張性は低く、自社独自の要件を盛り込みにくいという制約があります。システムの設計や仕様を柔軟に変更することは難しく、将来的に業務フローを大幅に変えたい場合や独自機能を搭載したい場合には不向きです。
適しているシーンとしては、業務プロセスが比較的標準化されており、短期間で導入して早期に業務効率化を図りたいケースです。たとえば、会計・人事・販売管理など多くの企業が共通で行う業務には、パッケージ開発がとくに効果的でしょう。
スクラッチ開発|独自業務が多いケースにおすすめ
スクラッチ開発は、要件定義から設計・開発・テスト・導入までを一から構築する手法です。ゼロベースで開発するため、カスタマイズ性と拡張性が非常に高く、自社独自の業務フローやニーズに完全に合わせたシステムを構築できます。
ただし、導入までに半年〜数年単位の期間と多額の初期コストがかかります。開発チームの技術力によって品質が大きく左右されるため、要件定義や設計を慎重に進める必要があります。保守・運用についても自社で担うケースが多く、継続的な人員確保やノウハウの蓄積が欠かせません。
適しているシーンとしては、既存のパッケージ製品では対応できない独自業務が多い場合や、競合と差別化するための独自システムが必要な場合です。長期的な運用を前提に、自社の強みを最大限に活かしたシステムを構築したい企業に向いています。
ローコード開発|小規模な業務アプリを短期で導入したいケースにおすすめ
ローコード開発は、GUIベースのビジュアル開発環境を使い、最小限のコーディングでシステムを構築する手法です。従来のプログラミングよりも格段に開発期間が短く、数日〜数週間でアプリケーションをリリースできる場合もあります。初期コストも比較的低く、非エンジニアでも開発に参加しやすいため、人材不足を補いながら開発を進められるのも利点です。
ただし、複雑な機能や高度なカスタマイズには不向きで、プラットフォームの仕様に制約される場合があります。また、利用するプラットフォームに依存するため、将来的な移行や連携には注意が必要です。運用・保守コストは比較的低めですが、ベンダー依存度が高い点も把握しておくべきでしょう。
適しているシーンとしては、小規模な業務アプリを短期間で導入したい場合や、現場主導で業務効率化を進めたい場合です。たとえば、社内申請や在庫管理など、比較的単純な業務フローを対象とするシステムであれば、ローコード開発が大きな効果を発揮します。
まとめ
本記事では、パッケージ開発とは何か、メリットやデメリット、進め方について解説しました。パッケージ開発は比較的少ないコストと手間で簡単にシステムを開発できる点が魅力です。ただし、独自業務が多いケースやカスタマイズ性が求められるケースでは、スクラッチ開発やローコード開発のほうが適しています。
ローコード開発ツールについては以下の記事でも解説しているので、ぜひあわせて参考にしてみてください。
▶︎ローコード開発ツール・プラットフォーム17種を比較!おすすめのツールは?
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