ハンコレスとは?実施する際の注意点やサービスの比較・検討ポイントを解説

ハンコレスとは、従来の紙の書類に押印する文化を廃止して、デジタル化を推進する取り組みのことです。脱ハンコとも呼ばれ、電子署名や電子契約、ワークフローシステムなどのサービス・ツールを利用します。
とはいえ、ハンコレスの推進に役立つサービス・ツールは多岐にわたるため、「どのサービスを選べばハンコレスを効率的に進められるのかわからない」といった方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、ハンコレスとは何か、メリットや実施する際の注意点、導入するサービスの比較・検討のポイントなどについて解説します。
ハンコレスとは
ハンコレスとは、従来の紙書類に押印する文化を廃止し、電子署名や電子契約、ワークフローシステムなどのデジタル手段に置き換える取り組みのことです。「脱ハンコ」とも呼ばれます。
日本では長年にわたり契約書や申請書類に印鑑を押すことが正式な承認手続きとして根付いてきました。しかし、デジタル技術の進展や働き方の多様化、さらにコロナ禍によるリモートワークの普及が重なり、ハンコ文化が業務効率を阻害する要因として強く認識されるようになりました。
ハンコレスは、単なる「印鑑をやめる」という意味にとどまりません。企業活動における承認や合意形成の方法をデジタル化することで、ペーパーレス化・業務効率化を推進し、さらにはDXを加速させる役割を担います。具体的には、電子署名サービスを用いた契約締結、電子印鑑の導入による社内承認フローの効率化、電子契約システムを通じた契約管理の一元化などがその一例です。
また、政府も行政手続きにおける押印廃止を進め、社会全体で「脱ハンコ」「ハンコレス」の動きが拡大しています。これに伴い、民間企業も積極的に導入を進めており、バックオフィス業務のデジタル化やリモートワーク環境の整備が加速しています。
ハンコレスのメリット
ハンコレスを導入することで得られるメリットは数多く存在します。ここでは、ハンコレス導入の主なメリットとして、以下の4点を紹介します。
・業務効率化・生産性の向上
・コストの削減
・働き方改革の推進
・コンプライアンス強化
各メリットについて、詳しくチェックしておきましょう。
業務効率化・生産性の向上
従来の押印業務では、文書の作成・印刷・押印・郵送・保管といった複数のプロセスが必要でした。さらに承認者が複数人にわたる場合、それぞれのスケジュールに合わせて書類を回覧するため、業務の停滞が発生することも少なくありませんでした。
ハンコレスを導入すると、これらの承認プロセスを電子化でき、オンライン上で即座に確認・承認が行えます。
これにより、従業員は煩雑な事務処理に時間を取られず、本来のコア業務に集中できるようになり、生産性の向上につながります。
コストの削減
紙文化を維持するには、多くのコストが発生していました。紙代や印刷代、インク代、郵送費、書類保管のための物理スペース維持費用などが代表例です。さらに、これらに付随する人的コストも見逃せません。
ハンコレスを導入することで、これらのコストを大幅に削減できます。電子契約や電子署名を利用すれば郵送費が不要となり、紙の削減は環境負荷の軽減にもつながるでしょう。また、書類をデジタルデータとして保存・管理することで、検索や共有が容易になり、時間的コストも削減できます。
働き方改革の推進
コロナ禍を契機にリモートワークが普及しましたが、印鑑を押すためだけに出社しなければならないという非効率さが大きな課題となりました。ハンコレスを導入すれば、承認や契約がすべてオンラインで完結できるため、場所や時間にとらわれず柔軟に働ける環境が整います。
これは、従業員のワークライフバランス改善にも直結するポイントです。承認作業や契約業務をテレワークで進められることで、無駄な移動時間を削減し、家庭やプライベートとの両立を図りやすくなります。
コンプライアンス強化
従来の紙の書類では、紛失や改ざんといったリスクを完全に排除することはできませんでした。電子署名や電子契約システムを導入することで、誰がいつ承認・署名したのかというログが自動的に記録され、透明性と追跡性が高まります。
さらに、アクセス権限の設定や電子データの暗号化によって、情報漏えいや不正利用を防止することが可能です。法的要件を満たした電子署名は紙の契約書以上に信頼性を担保できるケースも多く、企業のコンプライアンス体制強化につながります。監査対応や内部統制の観点からも、ハンコレスは有効な施策といえるでしょう。
ハンコレスを実施する際のポイント・注意点
ハンコレスには大きなメリットがありますが、導入にあたってはいくつかの注意点も存在します。ここでは、ハンコレスを実施する際の主なポイント・注意点として、以下の5点について解説します。
・費用対効果を確認しておく
・取引先が応じてくれない可能性がある
・電子化できない書類がある
・従業員の理解と定着が不可欠である
・システム障害やセキュリティリスクに備える
それぞれ詳しくチェックして、自社でハンコレスに取り組む際には注意してください。
費用対効果を確認しておく
ハンコレスを進める際には、導入コストと得られる効果を比較検討することが重要です。電子署名や電子契約システムは多くのベンダーが提供しており、料金体系もさまざまです。初期費用が安くてもランニングコストが高額な場合や、自社の業務に不要な機能が多く含まれている場合もあります。
導入前にどの業務でどの程度の時間削減・コスト削減が見込めるかを試算し、費用対効果を明確にしておきましょう。ROI(投資対効果)を数値化できれば、経営層や従業員への説明もしやすくなり、社内での合意形成もスムーズに進みます。
取引先が応じてくれない可能性がある
社内でハンコレスを推進しても、取引先や顧客が従来の紙文化にこだわっている場合、電子契約や電子署名を受け入れてもらえないことがあります。このような場合には、完全にハンコレスへ移行するのではなく、紙と電子を併用するハイブリッド型の対応が必要です。
取引先への周知や説明も重要です。法的効力やセキュリティ面の信頼性について丁寧に説明し、安心感を与えることで受け入れられやすくなります。とくに大手企業や公共機関などは手続きルールが厳格なため、導入のスピードが異なる点を踏まえ、柔軟な対応を検討すべきです。
電子化できない書類がある
すべての書類が電子化できるわけではありません。法的に紙での提出が義務付けられている書類や、特定の業界で押印が必須とされる商習慣も残っています。こうした場合、完全にハンコレスへ移行するのは現実的ではありません。
したがって、自社業務においてどの書類を電子化でき、どの書類は紙で残す必要があるのかを事前に分類しておくことが重要です。電子化できない書類については、効率的に紙運用を続ける方法を並行して検討することで、全体としての業務効率化が進みます。
従業員の理解と定着が不可欠である
システムを導入したとしても、従業員が使いこなせなければ意味がありません。とくに紙文化に慣れた世代の社員にとって、電子契約やワークフローは抵抗感を持たれやすい領域です。
導入時には、操作説明会やマニュアルの整備、問い合わせ窓口の設置など、安心して利用できる環境づくりが欠かせません。現場に浸透して初めて、ハンコレスの効果が実現します。
システム障害やセキュリティリスクに備える
電子契約やワークフローはインターネット環境に依存しているため、システム障害や通信トラブルが業務に直結します。万一のトラブル時に業務を止めないためのバックアップ体制や、代替手段を準備しておくことが必要です。
また、サイバー攻撃や不正アクセスのリスクにも備え、利用するサービスが十分なセキュリティ対策を講じているかを確認することも重要です。
ハンコレスを実現するサービスを比較・検討するポイント
ハンコレスを実現するためには、自社に合ったサービスを慎重に選定することが不可欠です。導入に失敗してしまうと、期待したほど業務効率が上がらず、逆にコストや手間が増える結果になりかねません。
ここでは、サービスを比較・検討する際に注目すべきポイントを解説します。
文書の種類と利用シーンを明確にする
まず最初に考えるべきは、自社でどのような文書を電子化したいのかという点です。日常的に利用される稟議書や休暇申請などの社内文書と、契約書や注文書といった社外文書では、求められる要件が大きく異なります。
社内文書の場合、スピードと利便性が重視されるため、比較的軽量なワークフローシステムや電子印鑑で十分対応できるケースも多いでしょう。一方で、社外文書では法的効力や改ざん防止の仕組みが必須となるため、電子署名や電子契約システムを導入することが望まれます。
対象となる文書の性質を明確にしたうえで、適したツールを選定しましょう。
セキュリティと法的有効性を確認する
次に重要なのは、サービスが十分なセキュリティと法的有効性を備えているかどうかです。電子契約はデジタルデータのやり取りである以上、不正アクセスや改ざんといったリスクが常に存在します。通信が暗号化されているか、アクセス権限の管理が適切に行えるか、操作履歴が残る仕組みになっているかなどを確認することが必要です。
また、電子署名法や電子帳簿保存法といった国内の関連法規に準拠しているかどうかも欠かせません。海外展開を視野に入れる企業では、国際的な法制度への対応状況を確認することも重要です。
導入コストと費用対効果を検討する
どれほど便利なサービスであっても、コストが見合わなければ継続的な運用は難しくなります。導入時の初期費用だけでなく、月額利用料や契約件数に応じた従量課金など、料金体系を十分に比較する必要があります。
短期的には安価に見えても、利用規模の拡大に伴って追加費用が発生するサービスもあるため、中長期的な利用を前提に試算することが求められます。
既存システムとの連携性を確認する
自社で既に利用しているシステムとスムーズに連携できるかどうかも、選定の重要な基準です。たとえば、基幹システムや顧客管理システムと連動できるサービスであれば、契約情報を自動で反映でき、入力作業の手間や人的ミスを大幅に削減できます。
逆に連携が不十分だと、かえって二重入力やデータの不整合が発生し、導入の効果が損なわれる恐れがあります。外部サービスとの統合が可能かといった点も確認するとよいでしょう。
操作性とユーザビリティを重視する
導入したサービスが現場に定着するかどうかは、操作性の良し悪しに大きく左右されます。どれほど高機能でも、ユーザーインターフェースが複雑すぎれば利用者の負担となり、教育やサポートに余計なコストがかかるため注意が必要です。
初めて利用する人でも直感的に操作できるか、スマートフォンやタブレットからも簡単に利用できるかといった点は、とくにリモートワークが一般化した現在において欠かせない評価基準です。
サポート体制と将来性を見極める
提供会社のサポート体制やサービスの将来性も比較の際には重視すべき要素です。導入時の支援が充実しているかどうか、運用中にトラブルが発生した際の問い合わせ対応は迅速か、定期的に法改正や新しいセキュリティ要件に合わせたアップデートが行われるかといった点を確認しておきましょう。
導入実績が豊富で安定した運営基盤を持つベンダーを選ぶことで、長期的かつ安定的に利用可能です。
まとめ
本記事では、ハンコレスとは何か、メリットや注意点、サービスを比較する際のポイントについて解説しました。
ハンコレスとは、従来の押印に依存した業務プロセスをデジタルに置き換え、効率性と柔軟性を高める取り組みです。とくにテレワークやリモート環境の定着により、場所に縛られない承認・契約業務を実現できる点は大きな強みです。
ハンコレスを成功させるためには、単なるツール導入にとどまらず、自社のDX戦略と結びつけて取り組むことが欠かせません。そこでおすすめなのが、統合型業務プラットフォーム intra-mart(イントラマート)です。
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