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DX加速のための内製化

DX加速のための内製化

独立系ITコンサルティング・調査会社のアイ・ティ・アール(ITR)は今年1月、ホワイトペーパー「DX加速のための内製化〜クラウド&アジャイルによる内製推進の価値」を発行、公開しました。情報システムの内製化を志向する企業や既に内製化に取り組んでいる企業に向けて、「現状と課題を整理し、内製によって獲得できる価値と成功のためのアプローチをまとめたもの」とのこと。DX(デジタルトランスフォーメーション)を実現するための施策の一環で内製化を進めようと考える企業は増加傾向にありますが、必ずしもうまくいっているケースばかりではありません。ホワイトペーパーを読み解きながら、内製化で成果を出すためのポイントを考えてみましょう。

 

1.内製化の現状、リソース不足が顕著に

ホワイトペーパーではまず、国内企業の内製化の現状について「国内IT投資動向調査報告書2023」を基に分析。この報告書は、同社が2022年8月から9月にかけて、国内企業のIT戦略・IT投資に関する意思決定者を対象に実施した調査結果をまとめたものです。

IT投資における主要なテーマごとに自社にとっての重要度の高さを回答してもらい、重要度が「高い」と答えた場合は5ポイント、「どちらかといえば高い」4ポイント、「どちらかといえば低い」2ポイント、「低い」を1ポイントに換算し、各テーマの有効回答数で除した値を「重要度指数」として示しています。

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企業がIT投資において重要視しているテーマ


その結果、「全社的なデジタルビジネス戦略の策定」「基幹系システムのクラウド化の実践」が上位となりました。一方で「システム開発の内製化の推進」や内製化と親和性の高いテーマである「アジャイル開発/DevOps」は、DX基盤整備ための有効な手法として注目されてきているものの、IT投資全体から見れば優先順位の高いテーマとしては定着していないことがうかがえます。

内製化を取り巻く課題についても掘り下げています。ここでも同社が昨年実施した調査の結果を基に、社内エンジニアのリソース不足やスキル不足を内製化の課題だと捉えている企業が多いことを示しました。その上で、経験豊富な人材の獲得や社内エンジニアの教育には時間がかかるため、そうした活動と並行して「ITインフラの準備が不要で迅速な開発が可能なクラウドサービス(コンテナ、サーバレスなど)や、迅速な開発を進めるための開発手法であるアジャイル開発やDevOpsの活用が内製化を推進して成果を獲得するうえでのポイントとなる」と改めて指摘しています。

さらに、SIerに開発委託する外製と内製とを比較して、内製のメリットについても言及。「内製を推進することによって自社の専門性が向上し、開発者のマインドセットがプロダクト/顧客指向に変わる」としたほか、開発スピードや先進テクノロジーを採用するアジリティ、開発コストなどの面でも内製が有利で、「外製の価値は、開発リスクと完成責任を自社で負わないことのみであるといっても過言ではない」と強調しました。

2.DXの成果はアジャイル開発への注力度と相関がある

では、ITRが内製化で成果を得るためのポイントとして挙げた「アジャイル開発やDevOps」の現状はどうなっているのでしょうか。ホワイトペーパーでは、少し古いデータですが、21年8月に同社が実施した「アプリケーション開発実態調査」の結果を引用しています。アジャイル開発を開発手法のメインに据えている回答者の割合は5割近くにのぼり、DevOpsに既に取り組んでいる回答者は5割に達しています。「アジャイル開発とDevOpsは企業にとって一般的な存在となった」(ITR)と見ることができそうです。

同調査では、DXの進捗状況と採用している開発手法の相関関係についても分析しています。DXに全社で取り組んで成果をあげている企業のうち、48%は完全にアジャイル開発に移行している一方で、DXに取り組む予定がない企業の4割は完全ウォーターフォール型の開発を継続しているという結果になりました。ITRは「DXでは、斬新かつオリジナリティのあるアイデアをアプリケーション化し、その評価から得た結果を製品やサービスにフィードバックすることが非常に重要なことから、アジャイル開発を採用することが必須といえる」と指摘。DevOpsについてもアジャイル開発と同様の結果が出ているとして、「内製化のための重要な手法であるアジャイル開発/DevOpsは、DXに欠かせない手法となっている」と言い切っています。

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アジャイル開発の採用とDXの進捗の相関

内製化が拡大している背景については、アプリケーションの開発生産性を飛躍的に向上させるテクノロジーの進化があったことに言及しています。初期のクラウド活用はIaaSが大きなウェイトを占め、アプリケーションの開発手法に大きな変革が起こったわけではありません。しかし現在、「クラウドはPaaS/FaaSやKubernetesおよびそのフルマネージドサービスを活用したクラウドネイティブ・アプリケーション開発が主流となり、自動化テクノロジーやアジャイル/DevOpsとの相乗効果によって開発生産性は飛躍的に高まっている」としています。

3.「完全内製」にこだわらずイニシアティブの在り方を変える

では、内製化を機能させてDXにつなげるためにはどんな姿勢や具体的な取り組みが必要になるのでしょうか。ITRがまず挙げるのは、IT部門のミッションを再定義することです。「IT部門のコア業務は、アプリケーション構築によって、DX、革新的ビジネス、業務変革/改善に貢献すること。これは外製では実現困難で、内製を自社およびIT部門の重要業務と捉えるべき」としています。さらに内製を進める上では、業務部門とIT部門の密接な連携により、「ビジネス創生/変革/改善、アプリケーション構築、アプリケーション運用のサイクルを短期で繰り返す『BizDevOps』が重要となる」と説いています。

ホワイトペーパーでは内製化における留意点も挙げています。まず指摘しているのは、「完全内製」にこだわる必要はないということです。内製とは社内のメンバーだけで開発することを意味するわけではなく、「開発に関わるあらゆる役割において自社がイニシアティブを取る」というのがITRの定義。必要に応じて外部エンジニアの力を活用することを選択肢として排除するわけではないことはポイントです。SIerと協業するにしても、開発プロセスにおけるイニシアティブの在り方が従来の外製とは異なると言えそうです。ただし、内製を進める際のチーム体制については、階層型ではなく、自社メンバーと外部協力者が同等の立場で自由闊達にコミュニケーションできる体制を目指すべきとも指摘しています。

また、内製化のメリットが大きいとしても、あらゆるシステムを内製化することは現実的ではありません。どんなシステムを内製化するかを判断することも必要で、ITRは「AI活用、データ活用、モバイルアプリなどビジネス価値が高い業務に絞って内製化を行うべき」と結論づけています。

内製化を推進するためのテクノロジーとの向き合い方についても、改めてまとめています。クラウドサービスのベンダーについては、「内製化を加速するプラットフォームの提供者および開発パートナーとして」捉えるべきで、非戦略的で安易なマルチクラウドはIT投資効率を下げると見ているようです。また、内製化とセットで語られることの多いローコード/ノーコードは、「既存業務の省力化/効率化」にこそ進化を発揮するとしています。


4.まとめ

SIerにシステム開発を丸投げする外製と比較して、自社主導で開発を行う内製にはさまざまな面でメリットがあるのは確かでしょう。アジリティやコスト以上に、社内のマインドが変わるという点に、DX人材の育成につながる大きな価値がありそうです。

ITRのプリンシパル・アナリストである甲元宏明さんはこのホワイトペーパーの公開にあたって、「内製経験が乏しい国内企業は、クラウドサービスを積極的に活用し、小さな成功を積み重ねて社内関係者の信頼を獲得しながら、内製の対象範囲を拡大していくべき」とコメントしています。またホワイトペーパー内でも「成果を得るまでには時間を要するため、短期的なKPI管理は排除し、内製化開始から数年の間は成果管理は行わないことを推奨する」としています。中長期的な視点で腰を据えて取り組むべき施策の一つとして、社内的なコンセンサスを形成することも重要なポイントだと言えるでしょう。

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