物流DXとは? ~物流業界の課題や取組むメリットから推進事例までを解説~

物流DXとは、物流においてDXに取り組むことです。つまり、物流業界など、物流業を手がける企業が新たな価値の創出を目指して、サービスやビジネスモデルなどを変革させることを指します。
ECの浸透による小口配送の増加や、少子化・人口減少による人手不足といった、物流を取り巻く課題を乗り越えるためには、最新のデジタルテクノロジーを活用することが不可欠とえいます。
本コラムでは、物流業界におけるDXの課題とメリット、事例をご紹介いたします。
1. 物流DXとは?
物流DXとは、物流においてDXに取り組むことです。つまり、物流業界など、物流業を手がける企業が、新たな価値の創出を目指して、サービスやビジネスモデルなどを変革させることを指します。
物流業界における課題
冒頭でもお伝えしましたが、物流業界においてDXが必要な背景として、EC市場の規模拡大による小口配送の増加や、少子化・人口減少による人手不足などが挙げられます。
さらに、「モーダルシフト」「共同配送」などの強化を盛り込んだ「改正物流総合効率化法案」や、働き方改革関連法案の時間外労働の上限規制の猶予が2024年4月に期限を迎える「2024年問題」への対応も必要です。
こうした物流業を取り巻く課題に対する解決策として、最新のデジタルテクノロジーを活用し、既存のサービスや業務プロセスなどを変革させようというのが物流DXです。
2. 物流業のDXにおける課題
物流DXを実施する上で、課題となることは何でしょうか?
主に次の2点だと考えられます。
デジタル化が必須ではないという業界特性
物流業とは、平たくいってしまえば、生産者から消費者にモノを運んで届ける業務です。この本質だけを満たそうと思えば、多少、効率が悪かろうと、力技でもこなせるという特性があります。
このことから、ITやデジタルテクノロジーの導入は必須項目として捉えられにくく、IT化が立ち遅れているというのが、物流業を取り巻く現状です。
DXを実施しようにも、そもそも下地となるIT化が進んでいなかったり、DXに必要なスキルを持つ人材や、社内にノウハウがなかったりという要素がDXの推進を妨げています。
配送拠点ごとにローカルルールができてしまっている
ITや最新のデジタルテクノロジーが必須ではないとはいえ、物流にも効率化は必要です。もちろん、現場でも効率化の必要性は感じており、物流の要ともいえる配送拠点において、それぞれの担当者が独自に工夫を凝らして、保管や配送のローカルルールともいうべきものができ上がってしまっています。
このため、全社統一でDXを推進する中で、業務の平準化を行おうとしても、現場の抵抗が大きく、スムーズに実施できないという状況に陥りやすいのです。
3. 物流DXに取り組むメリット
物流DXに取り組むことで、主に次の6つのメリットを得られます。
オートメーション化による業務効率化ができる
人に代わってピッキング作業を行うピッキングロボットや、自動車(トラック)の自動運転技術・後続車無人隊列走行技術、AIドローンなど、さまざまなデジタルテクノロジーを流通業に活用することで、それまで人手で行ってきた業務を自動化・無人化することができ、業務効率化を実現できます。
その分、従業員は人にしかできない企画業務などに注力できるようになります。
倉庫作業の簡略化による業務効率化ができる
荷物の仕分けや入出荷作業、配送管理などの倉庫作業は、ECの浸透による小口配送の増加で、煩雑化しました。
これを解消するために、上でも挙げたピッキングロボットや、AIによるピッキング作業指示作成の最適化といったデジタルテクノロジーを活用できます。
電子化による運送関連手続きの効率化ができる
送り状や納品書など、配送に関する伝票には紙が使われてきましたが、これを電子化してペーパーレス化することで、業務効率化を実現できます。
さらに、効率化だけでなく、コスト削減の効果も期待できます。
ラストワンマイルにおける課題の解消
物流業者の最終拠点から顧客までの物流を指す「ラストワンマイル(last one mile/last 1 mile)」。ECの浸透により、増加し続ける宅配荷物の量や、再配達による業務効率の低下といった課題を抱えている一方で、当日配送・翌日配送の実現などの差別化が求められます。
AIドローンなどのデジタルテクノロジーによって、この課題を解消できるのではないかと期待が集まっています。
配送状況の可視化による顧客満足度の向上
配送車両とドライバーの状態をリアルタイムに把握できる「動態管理システム」の導入・活用により、到着時間を予測したり、天候や交通渋滞による遅延を回避するための指示を出したりすることができます。
これにより、スピーディな配送を実現できます。顧客が配送状況を確認できるようになることからも、顧客満足度の向上が見込めます。
また、ドライバーの生産性向上にもつながります。
ドライバー不足の解消
配送ドライバーの高齢化や人手不足は物流業界の大きな課題の一つです。
配送に、上で触れたような、AIドローンや自動走行による無人化、動態管理システムによる配送の最適化を行うことで、ドライバー不足の解消が期待できます。
4. 物流業界におけるDX事例
物流業界でDXを実現する具体的な手段として、主に「物流システムの導入」「オートメーション化が可能な物流ロボットなどの導入」「AIを用いた最適化」「自動運転技術・AIドローンの活用」などが挙げられます。
物流システムの導入
「配送状況の可視化による顧客満足度の向上」でご紹介した「動態管理システム」のほか、出荷から配送までの配送状況の可視化を叶える「TMS(配送管理システム)」や、入庫・出庫の状況や在庫の過不足などをリアルタイムに把握できる「WMS(在庫管理システム)」、貨物が今どこにあるのかを追跡する「貨物追跡システム」などの物流システムを導入することで、業務効率化やコスト削減、顧客満足度の向上などを実現できます。
オートメーション化が可能な物流ロボットなどの導入
AIドローンや、ピッキングロボット、RPA(Robotic Process Automation)、AIやIoTを活用した新しいマテハン機器、自動梱包・封函機、AIの画像認識による入出荷時の検品など、無人化や自動化、省力化が可能なデジタルテクノロジーを導入することで、業務プロセスを変革させることができます。
AIを用いた最適化
さまざまな用途に活用できるAIですが、「最適化」を軸とすると、
- 物流センターやトラック輸送の人員配置・シフトの最適化
- 配車計画を自動立案や、渋滞予測や回避ルート、駐車場の選定など配送計画の最適化
- 物流のみならず、サプライチェーン全体の最適化
などを実現できます。
自動運転技術・AIドローンの活用
経済産業省と国土交通省は、トラックの後続車無人隊列走行技術の実現を目指し、車両技術の開発を行うとともに、新東名高速道路で実証実験を進めており、2021年2月に3台の大型トラックが、時速80kmで車間距離約9mの車群を組んで走行を実現しました。
AIドローンについては、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と東京大学、イームズロボティクス株式会社が佐川急便株式会社の協力のもと、2022年5月に自律運航AIを搭載したAIドローンの実証実験を行いました。
同実験では、約1.5kmを往復で飛行する中で、人を検出した場合は一旦停止して人が移動していなくなってから自動的に飛行を再開したり、住宅や道路などのリスクの高いエリアを判別してリスクの高いエリアを回避する最適なルートを生成したりという成果を得たといいます。
これらは現在まだ実証実験段階ですが、法整備が進んで実用化すれば、物流サービスの新たな価値を創出したり、業務プロセスを変革させたりすることができます。
5. まとめ
物流業界には、EC市場の規模拡大による小口配送の増加の一方で少子化・人口減少により、ドライバーを始めとする従業員の高齢化や人手不足、「改正物流総合効率化法案」や「2024年問題」への対応といった課題があり、これらを解消するためにもDX推進は不可欠なものといえます。
AIやドローン、物流システムなどを中心とするデジタルテクノロジーを導入して、既存の業務プロセスやサービスが抱える課題を解消しましょう。
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