自治体でBPRが注目されている背景や導入の流れを解説

近年、人口減少に伴う労働力不足や住民のニーズの多様化といった大きな転換期を迎える中、多くの自治体で「BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」への注目が急速に高まっています。
従来の行政運営で当たり前とされてきた慣習を見直し、デジタル技術を前提とした効率的な組織へと作り変えることは、もはや避けて通れない課題といえるでしょう。
この記事では、自治体においてBPRが求められる背景から、具体的な導入ステップ、そして成功のために押さえておきたいポイントについて詳しくご紹介します。
BPRとは
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、組織の目標を達成するために既存の業務プロセス、組織構造、情報システムを抜本的に見直し、再設計する経営手法です。この概念が行政組織においても重視されるようになった背景には、単なる「効率化」だけでは対応しきれない構造的な課題が表面化してきたためと考えられます。
一般的な「業務改善」とBPRの決定的な違いは、アプローチの深さと範囲にあります。業務改善は、現状の流れを維持しながら無駄を省く、いわば「足し算・引き算」の作業といえるでしょう。一方、BPRは「そもそもこの業務はなぜ必要なのか」という根本的な問いから始まり、プロセスを白紙に戻して再構築する「ゼロベース思考」に基づいています。
行政には、法律や条例、過去の経緯によって積み上げられた複雑な手続きが存在します。これらをデジタル技術で最適化するためには、従来のやり方を踏襲したままITを導入するのではなく、BPRを通じて業務そのものをデジタル環境に適応させる必要があるのです。
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自治体でBPRが注目されている背景
日本の地方自治体が今、なぜこれほどまでにBPRを必要としているのか、その背景には複合的要因があると考えられます。
まずは、最も切実な問題として深刻な人手不足が挙げられます。今後現役世代の急減が予測されており、自治体職員の数も大幅な減少が避けられない見通しです。限られた人員で住民サービスを維持、あるいは向上させていくためには、従来の労働集約的な事務処理を根本から見直さなければなりません。
次に、「自治体DX」の推進が挙げられます。政府は情報システムの標準化・共通化を進めていますが、これは単なるツールの統一ではありません。住民の利便性を高めるためには、バックヤードでの申請処理や承認フローをシステムに合わせて最適化するBPRがセットで求められています。
さらに、住民が自治体に求める期待値の変化も無視できません。スマートフォン一つで民間のあらゆるサービスが完結する現代において、役所の窓口へ足を運び、紙の書類に記入するというプロセスは「時間的コスト」として認識されやすくなっています。こうした住民ニーズの高度化に応えるためにも、行政内部のプロセスを抜本的に見直す時期が来ているといえるでしょう。
自治体でBPRが進まない理由
重要性が認識されながらも、自治体でのBPR導入は必ずしもスムーズではないようです。その障壁となっている主な要因を深掘りします。
業務が標準化されていない
自治体業務の多くは、各部署で長年培われてきた「独自のルール」や「ローカルルール」に依存している傾向が見受けられます。同じような申請業務であっても、課が異なれば手順や判断基準が微妙に違うといったケースは珍しくありません。業務が可視化されず、担当者の頭の中にしかない「暗黙知」の状態では、どこをどう再設計すべきかの判断が下せず、改革のスタートラインに立てないことが多々あるようです。
縦割りが根強い
行政組織の強固な「課・係」という単位は、責任の所在を明確にする一方で、組織横断的な視点を妨げる要因となります。BPRは本来、住民が申請してから完了するまでのプロセスを見直すものですが、部署ごとの部分最適が優先されるあまり、全体を通した抜本的な改革案が通りにくい風土が残っていると推察されます。
変化に対しての抵抗感がある
「これまでのやり方で大きなミスなく運用できている」という現状維持のバイアスは、行政組織において特に強く働くようです。新しいシステムやフローの導入は、一時的な学習コストや業務負荷の増大を招くため、現場職員からの心理的な反発が生じやすいといえます。特にデジタルに不慣れな層にとっては、BPRによる変革が「自分たちの仕事が奪われる」「不便になる」といった不安に直結しやすいようです。
自治体でのBPR導入の流れ
BPRを形骸化させず、実効性のあるものにするためには、論理的かつ段階的なプロセスを踏むことが重要です。
現状分析・目標設定
最初のステップは、対象となる業務の全容を徹底的に把握することです。ヒアリングやアンケートを通じ、フロー図を作成し、現状を可視化します。この際、単に手順を追うだけでなく、「どの作業に何分かかっているか」「年間の件数はいくつか」といった定量的データを収集することが重要です。その上で、「待ち時間を30%削減する」「ペーパーレス化率を80%に高める」といった具体的な目標を設定します。
課題の洗い出し
可視化したフローを分析し、ボトルネックとなっている箇所や、重複している確認作業、物理的な移動が発生している工程などを抽出します。ここで有効なのが「ECRS(イクルス)」の視点です。
1. Eliminate(排除):その作業はなくせないか?
2. Combine(結合):別々の作業を一緒にできないか?
3. Rearrange(再配置):順序を入れ替えたら効率的ではないか?
4. Simplify(単純化):もっと簡単にできないか?
この視点で既存の業務を疑い、無駄な工程を削ぎ落としていきます。
計画立案
課題解決に向けた「理想の姿」を描きます。ここでは既存のシステムの枠組みに囚われすぎず、最適なワークフローはどうあるべきかを検討します。また、法改正が必要な事項や、予算の確保、庁内での合意形成のスケジュールを具体化します。この段階で、複雑な承認フローを柔軟にデジタル化できるシステムの導入を検討することも、中長期的な拡張性を担保する上で有効な選択肢となります。
実行
策定した計画に基づき、新しい業務プロセスを導入します。全庁一斉の変更はリスクが高いため、まずは影響範囲が限定的な業務や、ICTリテラシーの高い部署でのパイロット運用(試験導入)から始めるのが定石です。実行フェーズでは、マニュアルの整備や職員研修を丁寧に行い、現場の混乱を最小限に抑える配慮が求められます。
評価・改善
新プロセス導入後、設定した目標値に対してどのような変化があったかを検証します。実際に業務を行う職員や、サービスを受ける住民からの意見を収集し、当初の想定と異なっていた点は速やかに修正します。BPRは一度の実施で完成するものではなく、継続的なモニタリングと改善(PDCAサイクル)を繰り返すことで、組織の文化として定着していくものです。
まとめ
自治体におけるBPRは、「あれば望ましいもの」から「不可欠な基盤」へと変質しています。人口減少という構造的な課題を乗り越え、持続可能な行政サービスを維持するためには、過去の成功体験を一度リセットし、デジタル時代の新しい業務プロセスを構築する勇気が求められています。
改革の道のりは険しく、組織的な抵抗も予想されます。しかし、業務の可視化を皮切りに、適切なITツールの選定、そして現場の声を反映した段階的な移行を進めることで、必ず道は拓けるはずです。
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