ノーコードとは？ローコードの違いやメリット・デメリットを解説

ノーコードとは、コーディングなしでアプリやシステムを開発できる開発手法のことです。プログラミングの知識がなくても開発ができるため、IT人材が不足している近年、ノーコードは多くの注目を集めています。

一方、「ノーコードについてより詳しく知りたい」「ノーコードの具体的なメリット・デメリットがわからないと導入を決断できない」といった方も多いのではないでしょうか。

そこで本記事では、ノーコードとは何か、注目される理由やメリット・デメリットなどを解説します。似た言葉のローコードとの違いにも触れるので、ローコードやノーコードでの開発が気になっている方はぜひ参考にしてください。

ノーコードとは

ノーコードとは、ソフトウェアやアプリケーションを開発する際に、プログラミング言語を使わずにプログラムを構築できる開発手法のことを指します。従来の開発ではHTML・JavaScript・Pythonなどのコードを書く必要がありましたが、ノーコードでは、ドラッグ＆ドロップ操作やビジュアルインターフェースによって、誰でも直感的にシステムを作成できます。

ノーコードが注目される理由

ノーコードが注目される理由には、以下のようなものがあります。

エンジニア不足と開発リソースのひっ迫

世界的にIT人材の不足が続いており、日本でも多くの企業が「開発したいが人手が足りない」というジレンマを抱えています。ノーコード開発は、ITの専門知識を持たない人でも開発に携われるため、人的リソースの有効活用につながります。

DX（デジタルトランスフォーメーション）の加速

企業の競争力を維持・強化するうえで、業務のデジタル化は避けて通れません。しかし、デジタル施策が思うように進まないという課題を抱える企業は少なくないでしょう。

ノーコードはそのギャップを埋める手段として期待されています。自社に人的リソースや開発ノウハウがなくても、現場主導での業務改善やツール開発が可能になります。

スピードと柔軟性が求められる時代背景

変化の激しい市場環境では、アイデアをすぐに形にし、顧客や業務に反映するスピードが重要です。ノーコードを使えば、プロトタイプ作成や実証実験を短期間で実現でき、仮説検証サイクルを高速化できます。アジャイル開発やリーン開発との相性も良く、柔軟な対応が可能です。

ノーコードプラットフォームの進化

近年のノーコードツールは、UIが洗練され、テンプレートも豊富になってきました。また、外部サービスとの連携（API連携）や、条件分岐・ワークフロー構築機能などが強化されており、本格的な業務アプリやECサイトまで構築できる水準に進化しています。

ノーコードとローコードの違い

ノーコードと似た言葉に「ローコード」というものもありますが、両者は明確に異なる開発手法です。

ノーコードでは原則コーディング不要であるのに対し、ローコードでは一部コーディングが必要、もしくは可能です。そのため、非エンジニアが対象のノーコードとは違い、ローコードはIT部門担当者が主に活用します。

一部コーディングが必要な反面、ローコードの方がカスタマイズ性が高い傾向にあります。ノーコードでは簡易的なアプリやプロトタイプの開発はできるものの、中〜大規模システムの開発においてはローコードを利用する場合が多いです。

ノーコードのメリット

ノーコードのメリットとしては、以下のようなものが挙げられます。

プログラミングの知識が不要

ノーコードの最大のメリットは、コードを書かずにアプリやシステムが作れる点です。HTMLやCSS、JavaScriptといった専門知識がなくても、ビジュアル操作で開発できるため、非エンジニアでもIT活用のハードルがぐっと下がります。

これにより、営業・総務・人事・マーケティングなど、あらゆる部門で自ら課題解決のためのアプリを構築できるようになり、IT人材の不足を補完できます。また、ツールによってはテンプレートやサンプルも豊富に用意されており、初心者でもすぐに使い始められる点も魅力です。

開発費用の削減

ノーコードを活用することで、従来の開発にかかっていた外注費やエンジニアの人件費を大幅に削減可能です。

たとえば、簡易的な業務管理アプリを開発会社に依頼すれば数十万円かかるケースもありますが、ノーコードツールを使えば、月額数千円のツール料金だけで済むこともあります。開発コストの抑制が可能となり、IT投資のハードルが下がるのもポイントです。

開発・導入・運用にかかる工数や時間の削減

ノーコードは、開発スピードに優れているのも大きなメリットです。要件定義・設計・開発・テストといった工程を短縮し、簡単な操作だけで作成、即座に動作確認ができるため、従来の開発と比べて圧倒的に早くシステムをリリースできます。

たとえば、従来のシステム開発で数カ月かかっていた工程が、ノーコードでは数日〜数週間で実現可能です。また、リリース後も自分で簡単に修正や機能追加ができるため、保守・運用の工数も軽減されます。スピード感が重要なビジネス環境において、この特徴は大きな強みだといえるでしょう。

現場主導での業務改善の促進

ノーコードは、IT部門だけでなく、現場の業務担当者が自らツールを作って運用できます。そのため、業務改善のスピードと質を飛躍的に高めることができるでしょう。たとえば、日報管理・顧客対応ログ・在庫チェックリストなど、従来はExcelや紙で管理していた業務を現場で即座にアプリ化できます。

これにより、現場でしかわからない課題や「小さな非効率」を素早く改善できるようになります。

デザインやUIを誰でも直感的に作れる

ノーコードツールの多くは、画面の構成要素をドラッグ＆ドロップで配置できるビジュアルエディタを備えており、HTMLやCSSの知識がなくても、見た目の整ったWebページやアプリを作成できます。これにより、エンジニアにデザイン要件を細かく伝える手間や、プロトタイプ作成にかかる時間が大幅に削減可能です。

また、豊富なテンプレートやUIのパーツが用意されているため、ゼロからデザインする必要がなく、初心者でもイメージどおりの画面を構築できます。マーケティング担当者や企画職が、自分たちでフォームやランディングページを作成し、テストまで実施できるのは大きな利点です。

ノーコードのデメリット

一方、ノーコードには以下のようなデメリットも存在します。

開発の自由度や拡張性が低い

ノーコードは操作が簡単である反面、複雑な仕様や細かいカスタマイズには向いていないというデメリットもあります。テンプレートや用意されたUIパーツの組み合わせに頼るため、「思ったようにカスタマイズできない」といったケースも少なくないでしょう。

自由度の高い開発が必要な場合は、ローコードまたは従来型開発の方が適しているケースもあります。ノーコードの特性を理解し、目的に応じた使い分けが必要です。

プラットフォームに依存する

ノーコード開発は、特定のプラットフォーム・ツール上でアプリやシステムを構築するという特性上、ベンダーロックイン（依存）のリスクがつきまといます。

1つ目のリスクは、使用中のツールやプラットフォームの仕様変更や料金改定の影響を受ける点です。追加機能や保守とあわせて、ベンダーの都合に左右されやすい点には注意しましょう。

仮にプラットフォームのサービスが終了すると、再度別のプラットフォームでの構築が必要になり、手間の重複が発生する点も要注意です。また、プラットフォーム間のデータ移行は難しく、簡単には乗り換えられない点もリスクだといえます。

このため、業務の基幹部分をノーコードに全面的に依存するのはリスクが高く、一部の業務改善やサブシステムとしての利用が現実的といえます。重要なシステムには、他の開発手法との併用を検討することをおすすめします。

国産ツールが少ない

ノーコードツールの多くは海外製であり、国内製はまだ数が限られている状況です。そのため、日本語の公式マニュアルや日本ユーザーコミュニティ、導入事例、トラブルシューティング情報などが十分に整備されていないことも多く、デメリットの1つだといえます。

英語ベースのUIや説明に慣れていない担当者にとっては、操作や設定に戸惑ったり、エラー対応に時間がかかったりするケースも少なくありません。また、サポート窓口が海外対応で、時差によって迅速な対応が得られないこともあります。

こうした点から、導入や運用において言語の壁や情報の少なさが課題となり得る点には注意が必要です。日本語でのサポートや活用情報が豊富なサービスを選ぶ、あるいは国内パートナー企業の支援を活用するといった対策が必要になります。

まとめ

本記事では、ノーコードとは何か、注目される理由やローコードとの違いなどについて解説しました。

ノーコードとは非エンジニアでもアプリやシステムを開発できるアプローチのことです。IT人材が不足している企業においても、ノーコードを使えば自社に必要なアプリ・システムを開発できます。

ノーコードでは、専用プラットフォームを活用することで、プログラミング知識がなくても低コストかつ迅速にアプリ・システムを開発できます。一方、カスタマイズ性に乏しい点や、プラットフォーム・ベンダーに依存してしまうリスクがある点には注意が必要です。

自社のアプリ・システム開発においては、その目的や開発規模に応じて、ノーコードやローコード、従来の開発方式などを使い分ける必要があります。