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デジタル庁設立から1年 日本社会のデジタル化やDXを進める基盤づくりは順調か

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2021年9月にデジタル庁が発足してから1年が経ちました。既存の中央省庁の縦割り構造を脱し、広く日本社会のデジタル化やデジタルトランスフォーメーション(DX)を進める司令塔かつ実行組織として役割を果たすことを期待されています。

民間からの人材採用とジョブ型雇用、マトリックス組織による体制づくり、SaaSの積極的な導入によるリモートワーク環境の整備など、多様な人材がオープンでフラットに働きやすい環境・文化を構築すべく、これまでの「お役所」のイメージとは違う取り組みを積極的に進めてきたことは確かです。一方で、活動の実態や成果が見えづらいという声も少なくない印象です。

同庁は今年9月、「デジタル庁設立1年の活動報告」を公表しました。こうした施策も、従来の中央官庁には見られなかったものです。この報告内容を紐解き、デジタル庁の最初の1年間を振り返りってみましょう。日本のデジタル化や社会全体のDXがどのように進んでいくのかを考えるヒントが得られるかもしれません。

 

1.組織として共有すべき価値観をまずは定義

まずはデジタル庁の活動にあたって定められた基本的な活動方針をおさらいします。全ての活動の基礎として「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を。」というミッション、そして「優しいサービスのつくり手へ。」「大胆に革新していく行政へ。」というビジョン、「一人ひとりのために常に目的を問い、あらゆる立場を超えて成果への挑戦を続けます」というバリューを掲げています。

ミッション・ビジョン・バリューの補足説明では、国民一人一人の価値観に寄り添い、多様な幸せのかたちを包摂できるデジタル社会を目指すことを明文化しています。そのために組織として共有すべき価値観として、官民問わずあらゆる社会の構成員を巻き込んで高い志の下に連携し、アジャイル的な手法を取り入れながら国民目線で行政サービスの向上に継続的に貢献していく姿勢を示したのは、やはりこれまでにない取り組みだったと言えそうです。

そしてこれらを実現するために必要な取り組みや考え方を整理し、具体的な施策の羅針盤となる上位計画として「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を策定し、21年12月に閣議決定されました。これはデジタル庁だけでなく政府全体で共有して実施するものですが、これに対応するデジタル庁としての全体戦略も定義し、「生活者、事業者、職員にやさしい公共サービスの提供」「デジタル基盤の整備による成長戦略の推進」「安全安心で強靱なデジタル基盤の実現」という3つの柱を定義しました。こうした用意された大まかな「地図」に従ってさまざまな施策が進行しています。


デジタル庁の注力領域として「3つの柱」を定義

2.マイナンバーカードの所有率は45.8%に

この3つの柱に沿って、この1年の具体的な取り組みを整理してみましょう。まず生活者、事業者、職員にやさしい公共サービスの提供に関する施策では、マイナンバーカードの普及が進んだとしています。所有人数はデジタル庁が発足した21年9月から今年7月までの11カ月間で1059万人増加し、マイナンバーカードの所有率は9.8%上がり45.8%となりました。

政府はマイナンバーカードの利用シーン拡大も図っており、健康保険証利用の申し込みは8月21日現在で1833万件に達しているとのこと。また、マイナンバーカードの公的個人認証機能をオンラインでの本人確認に活用する企業が増加したことも活動報告では強調しています。

マイナンバーカードを使ったさまざまな行政手続きのオンライン窓口を担うマイナポータルの改善も進めています。「いつでもどこでもスマートフォンで完結できる、生活者にやさしい行政サービス」を目指すことを掲げていますが、デジタル庁1年目の成果としては、薬剤情報や特定健診情報などの閲覧機能、確定申告におけるふるさと納税の控除証明書連携機能、公金受取口座の登録機能の提供を開始しました。公金受取口座の登録は1291万件です。

マイナポータルの機能拡充も進めた

このほか、新型コロナワクチン接種証明書アプリの提供、事業者の行政手続きのオンライン化推進(補助金申請システム「jGrants」と法人共通認証基盤「gBizID」の利用拡大)、政府機関のウェブサイトのデザインやコンテンツの標準化・統一化、キャッシュレス法の成立による行政手数料のキャッシュレス化推進にも取り組んできました。

さらに、地方自治体の基幹業務システムを標準化し、25年度末までにガバメントクラウドを活用した標準準拠システムに移行することが決まっていますが、その準備もデジタル庁が主導しています。直近1年で実行した施策としては、標準化対象事務の20業務全てについて標準仕様書を策定し、データ要件・連携要件標準仕様書、共通機能に関する標準仕様書なども策定・公開しました。今後は標準準拠システムへの円滑な移行などの支援策を打ち出すとともに、制度改正やBPRを踏まえた定期的な標準仕様書改善にも取り組む方針を明らかにしています。

3.アナログ規制の見直しを加速

2つめの柱であるデジタル基盤の整備による成長戦略の推進については、アナログ規制の見直しに向けた一連の取り組みをデジタル庁がけん引しています。アナログ規制とは「対面」や「目視」などのアナログな手段が義務付けられる規制で、社会全体のデジタル活用を阻害するハードルになっているケースが多く見受けられます。

この規制改革を担う中心的なリソースとして岸田政権が立ち上げたのがデジタル臨時行政調査会(デジタル臨調)です。デジタル臨調の事務局はデジタル庁職員を中心に構成され、地方自治体職員や弁護士、テック領域の専門家、経済団体などから官民横断で幅広い人材が参加しています。

今年6月には4000条項のアナログ規制を見直す方針を発表。アナログ規制を目的・趣旨やデジタル技術の適用フェーズごとに類型化し、共通するものを一括で法改正するというやり方で、スピード感を持った規制改革を進める計画です。デジタル庁設立1年の活動報告には、25年6月までにアナログ規制の一掃を目指すべく取り組みをさらに進めると明記しています。

なお、10月には河野太郎デジタル大臣が見直し対象のアナログ規制を9000条項に拡大し、アナログ規制を当初の1年前倒しで全廃する方針であることを示しました。こうしたスピード感は歓迎したいところですし、民間事業者のビジネス環境にもポジティブな影響を与えてくれそうです。

また、行政におけるデータの生成・流通・活用のためのルール策定や、行政情報や地理空間情報など社会全体の基盤となるデータ整備にも取り組んできたほか、インボイス制度の開始を見据えてデジタルインボイスの標準仕様を策定・公表するといった取り組みも進めてきました。


4.スピード感と実行力のさらなる強化に期待

3つめの柱である安全安心で強靱なデジタル基盤の実現では、ガバメントクラウドの整備が注目施策です。前述した地方自治体の基幹業務システム標準化と標準準拠システムへの移行にも大きく関わるテーマですが、国や地方自治体で共通のクラウドサービス利用環境を整え、利便性の高いサービスをスピーディーに提供することが目的です。自治体セキュリティクラウド事業やデジタル庁Webサイトなどでガバメントクラウドの利用を開始しています。

ガバメントクラウドに採用するクラウドサービスは、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)に登録されたクラウドサービスから調達することを前提としています。行政サービスにおける本格的なクラウド利用のためのルールとその運用がようやく実践の段階に入ったわけです。

活動報告では3つの柱に紐づく取り組み以外にも、霞が関の働き方の先進事例をつくるべく、さまざまな民間企業の知見も生かした組織づくりや働く環境の整備に努めたことなどを実績として強調しています。生産性向上のためのテクノロジー活用はもちろんのこと、組織サーベイを実施するなどして職員満足度の向上にも取り組んでいるのは特筆すべき点です。

デジタルで横串を通して日本社会全体のデジタル化やDXを進めるけん引役になるというデジタル庁の存在意義を考えれば当然ではあるのですが、改めて活動報告に目を通すとその業務はかなり広い範囲をカバーしているのが分かります。既存の中央省庁の組織構造では対応できない課題の解決を担っていると言えるでしょう。その役割の幅広さ故に、構想を固めた段階、着手したばかりの段階という施策も少なくないですが、さらなるリソースの拡充や組織変革の方針も示しています。2年目以降、スピード感と実行力を上げて指数関数的に成果を拡大してくれることを期待したいところです。

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