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AIガバナンスを実践する方法とは?AIガバナンスに関するガイドラインを解説

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AIガバナンスを実践する方法とは?AIガバナンスに関するガイドラインを解説

この記事を読んでわかること

  • AIガバナンスの意味や重要性、想定すべきリスク
  • 日本におけるAIガバナンス関連のガイドライン
  • 企業がAIガバナンスを実践する方法と具体的な流れ

生成AIをはじめとするAI技術の普及により、企業でも文章作成やデータ分析、問い合わせ対応、業務の自動化など、さまざまな場面でAIが利用されるようになりました。AIを適切に活用すれば業務効率化や新しいサービスの創出などが期待できる一方、情報漏えいや誤った出力、著作権侵害、差別・偏見につながる判断などのリスクもあります。

こうしたリスクを管理しながらAIを活用するために重要なのが「AIガバナンス」です。AIの利用を一律に禁止するのではなく、企業としてルールや管理体制を整備し、AIのメリットを活かしながらリスクを適切にコントロールすることが求められます。

本記事では、AIガバナンスの意味や重要性、想定すべきリスクについて解説します。国内で公表されてきたAIガバナンスに関するガイドラインや、企業がAIガバナンスを実践する方法も紹介するため、社内でAIの活用を進める際の参考にしてください。

AIガバナンスとは

AIガバナンスとは、AIの開発・提供・利用に伴うさまざまなリスクを管理し、AIを適切に活用するための仕組みやルール、管理体制などを整備・運用することです。

AIは大量のデータを処理したり、人間では時間がかかる作業を自動化したりできる一方、利用方法によっては企業や顧客、社会に悪影響を与える可能性があります。

たとえば、生成AIへ社外秘の情報や個人情報を入力すれば、情報管理上の問題が生じるおそれがあります。AIが事実と異なる内容を出力したり、学習データなどの影響によって偏った結果を示したりする可能性にも注意しなければなりません。

そこで、企業がAIを活用する際には、「どのような目的で利用するのか」「誰が責任を持つのか」「どのようなリスクがあるのか」「問題が起きた場合にどう対応するのか」といった事項をあらかじめ整理する必要があります。

AIガバナンスには、AIの利用ルールを定めるだけでなく、組織体制の構築やリスク評価、従業員教育、AIシステムの監視、問題発生時の対応なども含まれます。

AIに関する技術や社会環境は変化しています。一度ルールを作成して終わりにするのではなく、AIの利用状況や新たなリスクを確認しながら継続的に見直すことが重要です。

 

AIガバナンスが重要な理由

AIガバナンスが重要な理由のひとつは、AIの利用範囲が広がるほど、企業が管理すべきリスクも多様になるためです。

生成AIを例にすると、従業員が文章の作成や情報収集などに利用するだけであれば、利用範囲は比較的限定されています。しかし、顧客対応や採用、与信、生産管理など、企業の重要な業務にAIを利用する場合、誤った判断や出力による影響も大きくなるでしょう。

さらに、クラウドサービスとして提供される生成AIなどは、情報システム部門が把握しないまま従業員が利用することも考えられます。利用状況を把握できなければ、機密情報や個人情報の入力、生成物の不適切な利用などを十分に管理できません。

一方、リスクを恐れてAIの利用を過度に制限すると、業務効率化や新しいサービス開発などの機会を逃す可能性があります。

AIガバナンスではAIを「利用するか、利用しないか」という二者択一で考えるのではなく、利用目的やリスクに応じた管理が重要です。低リスクな用途は一定のルールのもとで利用し、顧客や社会への影響が大きい用途では厳格な審査や人間による確認を行うといった対応が考えられます。

AIに関する法規制やガイドラインは国内外で整備が進んでいます。企業が継続的にAIを活用するためには、関連する法令やガイドライン、社会的な要請などを確認しながら管理体制を更新していく必要があります。

適切なAIガバナンスを整備することは、AIによる事故やトラブルを防ぐだけでなく、従業員が安心してAIを利用できる環境を構築するうえでも重要です。

 

AIガバナンスで想定すべきリスク

AIガバナンスを構築する際は、AIの利用によってどのような問題が発生する可能性があるのかを整理する必要があります。

代表的なリスクとして、以下が挙げられます。

リスク 具体例
プライバシー・情報管理 個人情報や機密情報を不適切にAIへ入力する
セキュリティ サイバー攻撃や不正アクセスによって情報漏えいや意図しない動作が発生する
誤情報・不正確な出力 生成AIが事実と異なる情報を生成し、その内容を確認せず業務に利用する
公平性・バイアス 学習データなどの影響によって特定の属性に偏った判断や出力が行われる
知的財産 AIへの入力や生成物の利用によって著作権などの権利を侵害する
透明性・説明可能性 AIがどのような根拠で判断したのか説明できない
セキュリティ AIシステムへの攻撃や不正操作によって意図しない動作が発生する
過度な依存 AIの出力を人間が十分に確認せず、重要な判断を任せてしまう
 
 

たとえば、生成AIは自然な文章を生成できても、その内容が必ず正しいとは限りません。存在しない情報を事実であるかのように出力する場合もあるため、重要な情報については人間による確認が必要です。

公平性にも注意しなければなりません。AIが過去のデータを基に判断する場合、そのデータに偏りが含まれていると、AIの出力にも影響する可能性があります。採用や人事評価など人に関する重要な判断へ利用する場合は、特に慎重な検討が求められます。

情報セキュリティの観点では、AIへ入力してよい情報の範囲を明確にすることが重要です。従業員が個人情報や顧客情報、未公開の製品情報などを外部の生成AIサービスへ入力すれば、企業の情報管理方針に抵触するおそれがあります。

AIのリスクは利用するシステムや目的によって異なります。すべてのAIに同じ管理を適用するのではなく、用途や影響度を踏まえてリスクを評価することがポイントです。

 

AIガバナンスに関するガイドライン

日本では、AIを人間や社会にとって有益な形で活用するため、政府によってさまざまな原則やガイドラインが公表されてきました。

代表的なものとして、「人間中心のAI社会原則」「我が国のAIガバナンスの在り方」「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」が挙げられます。

なお、これらの取り組みを踏まえ、2024年には総務省と経済産業省が既存のガイドラインを統合・更新した「AI事業者ガイドライン」を公表しました。2026年9月現在、最新版は2026年3月31日に公表された第1.2版です。

ここでは、日本のAIガバナンスに関する取り組みの流れを確認しましょう。

人間中心のAI社会原則

「人間中心のAI社会原則」は、2019年3月に統合イノベーション戦略推進会議で決定されたAIに関する基本原則です。AIを社会に導入する際に重視すべき基本的な考え方が示されています。

人間の尊厳が尊重される社会、多様な背景を持つ人々が多様な幸せを追求できる社会、持続性のある社会という基本理念のもと、人間中心、公平性・説明責任・透明性、セキュリティ確保など、AI社会で考慮すべき原則が整理されています。

AIの活用そのものを目的とするのではなく、人間の能力や創造性を発揮できる社会を実現するためにAIを利用するという考え方が基礎となっています。企業がAIを活用する場合にも、業務効率や利益だけで判断するのではなく、顧客や従業員などへの影響を考慮することが必要です。

「人間中心のAI社会原則」は、その後の国内におけるAIガバナンスに関する議論やガイドラインの基礎となった重要な原則と位置付けられます。

我が国のAIガバナンスの在り方

「我が国のAIガバナンスの在り方」は、AIを社会で適切に利用するためのガバナンスについて検討した報告書です。経済産業省の検討会によって議論され、2021年7月にVer.1.1が公表されました。

AI技術は変化が速く、利用される分野やリスクも多様です。すべてのAIに対して一律に細かなルールを設けるだけでは、技術革新への対応が難しくなる可能性があります。こうした背景を踏まえ、AIガバナンスでは企業などが自主的な取り組みを行いながら、社会環境や技術の変化に合わせて継続的に見直していく考え方が重視されました。

また、AIシステムの開発者だけでなく、提供者や利用者など複数の関係者が存在することを踏まえ、それぞれが適切な役割を担うことも重要です。

この報告書で示された考え方は、企業が具体的にAIガバナンスへ取り組むための「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」へとつながりました。

AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン

「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドライン」は、AIに関する原則を企業などが実際の行動へ落とし込むための指針として経済産業省が取りまとめたものです。2021年にVer.1.0が公表され、2022年1月にはVer.1.1が公表されました。

同ガイドラインでは、AIガバナンスを一度構築して終わりとするのではなく、環境・リスク分析、ゴール設定、システムデザイン、運用、評価などを継続的に行う考え方が示されています。

企業を取り巻く環境やAI技術が変化すれば、想定すべきリスクも変わります。そのため、目標を設定して管理体制を構築した後も、運用状況を評価し、必要に応じて改善することが重要です。

なお、「AI原則実践のためのガバナンス・ガイドラインVer.1.1」は、総務省の「AI開発ガイドライン」「AI利活用ガイドライン」とともに統合・更新され、2024年に公表された「AI事業者ガイドライン」へ引き継がれています。現在のAIガバナンスを検討する際は、こうした歴史的なガイドラインだけでなく、最新版のAI事業者ガイドラインも確認することが大切です。

 

AIガバナンスを実践する方法

企業がAIガバナンスを実践する際は、AIの利用ルールを作成するだけでなく、リスクの把握から目標設定、管理体制の構築、運用、評価・改善まで継続的に取り組む必要があります。ここでは、AIガバナンスを実践する流れを以下の5つのステップに分けて解説します。

  • 環境・リスク分析
  • ゴール設定
  • システムデザイン
  • 運用
  • 評価

環境・リスク分析

最初に、自社を取り巻く環境やAIの利用状況を把握し、どのようなリスクがあるのかを分析します。

まずは社内で利用しているAIを洗い出しましょう。情報システム部門が導入したAIシステムだけでなく、各部署が契約しているAIサービスや従業員が業務で利用している生成AIなども対象です。

そのうえで、それぞれのAIについて、利用目的や入力するデータ、出力結果の利用方法、影響を受けるステークホルダーなどを整理します。

たとえば、社内文書の要約に利用する生成AIと、採用候補者を評価するAIでは、問題が発生した場合の影響が異なります。後者では人に関する重要な判断に影響するため、公平性や説明可能性などをより慎重に確認する必要があります。

関連する法令や業界ルール、国内外のガイドラインなどを確認することも欠かせません。

ゴール設定

環境やリスクを把握したら、自社がAIガバナンスによって目指す状態を明確にします。

たとえば、「個人情報や機密情報を適切に保護しながら生成AIを活用する」「重要な意思決定ではAIだけに判断を任せない」「AIの利用状況を企業として把握できるようにする」といった目標が考えられます。

ゴールを設定する際は、経営方針や企業理念、AIの利用目的などとの整合性も確認しましょう。

AIガバナンスを情報システム部門だけの取り組みにすると、実際の業務との間にずれが生じる可能性があります。経営層や法務、情報セキュリティ、事業部門などが参加し、企業としてどこまでのリスクを許容するのかを検討することが重要です。

抽象的な理念だけでなく、実際の運用状況を確認できる目標を設定すると、その後の評価や改善につなげやすくなります。

システムデザイン

ゴールを実現するために、具体的なルールや組織体制、管理プロセスを設計します。

まず、AIの利用に関する責任者や担当部署を明確にしましょう。AIの導入を誰が審査するのか、問題が発生した場合に誰へ報告するのかなどを決めておく必要があります。

社内向けのAI利用ガイドラインを整備することも有効です。生成AIへ入力してはいけない情報、生成物を利用するときの確認方法、著作権や個人情報に関する注意事項などを具体的に定めます。

AIの用途をリスクに応じて分類し、管理方法を変える仕組みも考えられます。低リスクな用途は簡易的な確認で利用できるようにする一方、顧客や従業員に大きな影響を与える用途では、専門部署による審査を必要とする方法です。

さらに、AIシステムの利用履歴を記録したり、アクセス権限を設定したりするなど、技術的な対策も検討します。

運用

ルールや体制を整備した後は、実際の業務でAIガバナンスを運用します。

重要なのは、ルールを作成して社内ポータルなどへ掲載するだけで終わらせないことです。従業員が内容を理解し、日々の業務で実践できる状態にする必要があります。

たとえば、生成AIの利用方法や情報管理、出力内容の確認方法などについて研修を実施します。新しいAIサービスを利用する際の申請・承認フローを整備し、企業が利用状況を把握できる仕組みを構築することも有効です。

AIによる重要な判断については、人間が結果を確認し、必要に応じて修正・却下できる体制を整えます。

問題が発生した場合の対応手順もあらかじめ決めておきましょう。AIの利用に伴う情報漏えいや不適切な出力などが確認された際に、報告先や対応責任者、利用停止の判断基準などが明確であれば、迅速に対応しやすくなります。

評価

AIガバナンスは、一度仕組みを構築すれば完了するものではありません。運用状況を定期的に評価し、改善を続ける必要があります。

たとえば、AI利用に関するインシデントの件数や内容、従業員によるルールの遵守状況、AIシステムの出力精度などを確認します。想定していなかった利用方法が広がっていないか、新しいリスクが生じていないかを確認することも重要です。

評価の結果、問題が見つかった場合は利用ルールや管理体制、システム設定などを見直します。

AI技術は継続的に進歩しており、新しいサービスや利用方法も登場します。法規制や政府のガイドラインが更新される可能性もあるため、外部環境の変化を継続的に確認しなければなりません。

環境・リスク分析から評価・改善までを繰り返すことで、AIの利用状況や社会環境の変化に対応できるAIガバナンスを構築できます。

 

まとめ

AIガバナンスとは、AIの開発・提供・利用に伴うリスクを管理し、AIを適切に活用するためのルールや組織体制、仕組みなどを整備・運用することです。

AIには業務効率化や新しいサービスの創出といったメリットが期待できる一方、情報漏えいや誤情報、バイアス、知的財産権の侵害など、さまざまなリスクがあります。AIの利用を一律に制限するのではなく、用途や影響度に応じて適切に管理することが重要です。

日本では「人間中心のAI社会原則」などを起点としてAIガバナンスに関する検討が進められ、現在は「AI事業者ガイドライン」にその考え方が引き継がれています。企業がAIガバナンスへ取り組む際は、環境・リスク分析、ゴール設定、システムデザイン、運用、評価・改善という流れを意識し、継続的に仕組みを見直しましょう。

AIガバナンスを実践するには、社内ルールを整備するだけでなく、AIの利用申請や審査、承認、記録などの業務プロセスを適切に管理する仕組みも必要です。

こうした業務プロセスのデジタル化・可視化を進める場合は、「intra-mart」の活用もご検討ください。

intra-martは、ワークフローやBPM、ローコード開発などを活用し、企業内のさまざまな業務プロセスをデジタル化・効率化できるシステム共通基盤です。ワークフローを活用してAI利用に関する申請・承認プロセスを構築するなど、複数の部署をまたぐ業務プロセスのデジタル化にも活用できます。

AIの利用拡大にあわせてガバナンスの仕組みを整備し、継続的に業務プロセスを改善したい場合は、intra-martの製品・サービスをご確認ください。

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