業種:情報・通信 / 用途:用途
電気設備点検・保安業務を支える基幹システムをダウンサイジング
intra-martフレームワークで情報系も統合し、IT投資の効率化を実現
財団法人関東電気保安協会(以降、関東電気保安協会)は、メインフレームで動いていた電気設備の保安業務基幹システムを、intra-martフレームワーク上で再構築している。また、クライアント/サーバやWebシステムで動いていた約10システムもintra-mart上で統合。2006年から2007年への 1年間だけで、ハード、ソフトの維持、運用委託などを合わせた年間TCO(開発費を除く)を、36%削減することに成功した。さらに、共通部品を活用した開発により、開発コストも、メインフレームに比べて3~4割低減。今後の新規システム開発も柔軟に行える環境を手に入れて、IT投資の効率化を実現した。
電気を安全安心に使える社会を支えるため、企業と家庭の電気設備点検・保安業務、そして広報活動を担っているのが、関東電気保安協会である。約3000人強の人員が、関東一円の約600万口の定期調査と、約10万軒の自家用電気設備の保安業務を受託して活動している。
「近年は、規制緩和によって、自家用電気設備の保安業務に新規参入する一般企業が増えています。関東電気保安協会は公益法人ですが、お客様サービス向上のため、コストを低減し競争力を強化しながら、協会としての健全性を高めていかなければなりません。」と、企画本部 情報システム部長岡田 好美氏は語る。
企画本部 情報システム部長 岡田 好美氏
コストを下げつつ顧客サービスを向上させる為には、業務を効率的に行えるシステム環境を構築する必要がある。そこで関東電気保安協会は、基幹システムの見直しに取り組み、2005年から約2年で「脱メインフレーム」を達成した。従来は、メインフレーム上で、保安業務をカバーする基幹システムが稼働していた。システムの構成は、受託状況システム・実施状況システム・手数料システムなどで、「保安システム」と総称される。 「メインフレームのシステムは維持管理に大変なコストがかかります。しかも、十数年以上経過したオンラインシステムであるために、機能追加や修正が大変困難となっていました。」と、情報システム部課長 初鹿 孝夫氏は言う。
メインフレームに加えて、クライアント/サーバ・システム、Webシステムという3つのシステム形態が混在しているのも、運用管理コストを増大させる要因となっていた。
特にクライアント/サーバ・システムについては、54拠点にサーバを分散しており、障害が発生する度、本部の情報システム部担当者が急行するという状況だった。
また、各部門でのシステム開発やその業務のパスワード管理も部門任せになっていた状況は、セキュリティ面でも好ましくない。サーバ統合によって、運用管理コスト削減とセキュリティ強化の両方を実現する必要があった。
2004年に、基幹システムとその他サブシステムをオープンシステムに移行すると同時に、クライアント/サーバ・システムや情報系のWebシステムも同じ基盤に統合して、サーバ集中管理を行うという全体方針が決まった。

ポータル画面
「新保安システム」をWebシステムにすることは、 早い段階で決まった。理由はWebシステムなら、ク ライアントPC側のプログラム管理が不要だからだ。加えて、先立つ2000年に、intra-martを使って 情報系システムを作ったところ、Javaスクリプトによ る開発はCOBOLに比べて画面系アプリケーションの開発生産性が非常に高いことを体感していたからである。 「COBOLだと数人月かかるシステムが、Javaスクリプトでは数日程度で作れました。特に画面系アプリケーションの生産性では、JavaスクリプトはCOBOLの10倍か100倍というのが実感でした。」 と、情報システム部 主任 松浦和弘氏は語る。それでは、Webシステムによる基幹系システムはどのように構築するか。関東電気保安協会では、4 ~5社の提案を検討したうえで、intra-martによる 統合基盤構築を選択した。 「ある提案では、Linux上で、DBMSを含めてすべてOSS(オープンソース・ソフトウェア)で構築す るというものでした。OSSは新鮮ですが、24時間 365日止まってはならない基幹システムをきちんと支えられるのか、誰が責任を持つのかという不安がありました。」と初鹿氏。
企画本部 情報システム部 課長 初鹿 孝夫氏
ハードウェアもソフトウェアもOSも、特定ベンダ の制約をなくしたいというのも、基本要件の一つ だった。幅広くベンダが参加できる環境を作ること で、将来にわたってのシステム維持・追加・修正のコストを削減できるからだ。intra-martを評価した 最大のポイントは、こうしたオープンなフレームワークを確立できることである。intra-mart上であれば、 OSSを活用しながらでも可用性が高く、ブラックボックスのないシステムを構築できる。アプリケー ションサーバや他のツールが一体化していて、他の製品を買ったり、相性をテストしたりする必要がないのもintra-martならではの特長だ。 しかも開発生産性が高いことは、既に実証済みである。 intra-martは当初、情報系システムの開発ツールとして導入されたが、高い開発生産性、他システムとの連係性、コストパフォーマンスの高さなど、システム構築基盤としても優れていることに注目され、『災害時でもダウンしない強固なシステム』の開発基盤として改めて位置づけられた。

大まかなスケジュールとしては、2006~2007年にかけて基幹システム・職員系システム・指摘管理システムの3つをintra-mart基盤上で再構築・統合し、シングルサインオンができるようにした。これが「新保安システム」の全体像である。 メインフレームで稼働していた保安系システム、VisualBasicで作られた情報系システム、グループウェアなどもintra-mart上で統合して、現在は大小30以上のシステムが稼動している。intra-mart関連サーバは約33台(災害対策用サーバを含む)で、54拠点の職員が利用するクライアントPCは合計3,500台(別途、指摘管理システム専用PDAが2,000台)である。
開発は、基幹系はJ2EE、情報系はJavaスクリプトなどの軽量プログラミングを使い分けて、効率よく進めた。
intra-mart製品で採用したのは、WebPlatform/AppFramework、イントラネット・スタートパック、文書管理システム(QuickBinder版)、Web-Mailなどである。特に活用したのが、intra-martのフレームワークと共通部品の機能だ。
「まず標準部品は7~8割利用し、さらに、当協会仕様のフレームワーク・共通モジュールを作りました。この後は、フレームワーク・共通モジュールを最大限に活用することで、業務のことだけを考えて業務層の開発に専念していくことができました。」と初鹿氏は説明する。
たとえばintra-martの権限管理モジュールの上に、関東電気保安協会のニーズに応じた権限(ロール)を加えて、関東電気保安協会専用の権限モジュールを作った。実績あるモジュール上で自社モジュールを作ることで、プログラム品質を維持しながら生産性を上げたのだ。この権限モジュールを使うことで、システム毎に権限機能を作る工程が不要になった。
「他のJavaフレームワークでも共通部品を作れば同じように共有できるでしょうけれど、共通部品を作る工数が格段に違います。他のフレームワークより3割ぐらい(想定)部品の生産性が高い、つまり、初年度の100人月分ぐらいを節約できたと思います。」と松浦氏は語る。
企画本部 情報システム部 主任 松浦 和弘氏
intra-martの部品には日本企業固有のノウハウや最新の技術が組み込まれている。さらに関東電気保安協会専用のフレームワーク・共通モジュールは、業務ノウハウの集合体である。関東電気保安協会ではこれらを合わせて「業務システムのOS」と呼んでいる。
「共通部品を作るとき、自由度が高すぎると、追加したり修正したりするうちにスパゲッティ・プログラムになりやすい。ところがintra-martのような汎用製品を使うと、別のニーズが出てきたときにも流用できるものが作れました。これは大事なことです。」と松浦氏は補足する。
画面設計でも、intra-martの豊富な画面を流用した。しかもすべてのユーザーインターフェースは intra-martで統一されており、ボタン配置や画面 遷移のルールを一定としていることから、利用者 は特別な操作教育なしに直感的にシステムを利 用することができる。 総合ポータル画面の構築では、intra-martのポー タルモジュールを全面的に採用。ActiveDirectory と連係してシングルサインオンをした後は、権限モ ジュールで設定したロールに応じて画面が制御され、ポートレットも選択できるメニューも利用者毎に 最適化される。 「2007年に別々に分散開発・運用していた基幹システムと職員系システムや指摘管理システム の基盤の統合を始め、半年以内に30近いシステムを切り替えることができました。しっかりしたフレー ムワークを選んでよかったと改めて思いました。」と初鹿氏は語る。 基幹系/情報系システム連係のひとつの開発例が、スケジュール管理である。 基幹システムには、個人およびグループの1ヵ月予定表を作成・一覧する機能がある。これを訂正すると、intra-martのスタートパックを使ったグループウェアのスケジュール表に訂正内容が反映され、さらに各人のポータル画面の表示も変わる。つまり、グループで行う「組作業」をしっかりと管理しながら、 個人も効率よく動ける環境が整備される予定だ。
基幹システムと関連するさまざまな文書を統合 管理するシステムは、intra-martのQuick Binder と、検索サーバを連係させて構築した。 ここでも、統合した「新保安システム」にQuick Binderをアドオンするだけで、ロール・ログイン環 境・インターフェースなどの設定を改めて行うことなく、全社規模の文書管理システムを瞬時に立ち上 げることができた。 また、基幹システムで管理しているお客様住所情報と、地図情報システムの地図情報が同一画面に表示されるのも便利なところだ。地図情報のWebサービスと連係させることで、地図データ購入費用と地図サーバのメンテナンス料などで、年間約300万円のコストを削減することができた。

組作業システム画面
「脱メインフレーム」とシステム統合基盤の確立を実現した関東電気保安協会は、前述した地図の維持コストだけでなく、さまざまな側面でコスト削減とIT投資の効率化を実現しつつある。
まず、メインフレームがなくなり、高価なプリンタ等を撤去しました。以前はハードウェアのすべてリースであったが、現在は買い取りとしたので、初期導入コストも掛かり、サーバ台数も増えているにもかかわらず、ハードウェア関連の維持管理コストは50%以下となっている。
帳票ツールやリッチクライアントなどのミドルウェアも、intra-mart上で統合することにより最適化され、CPU数などの単位で課金されるミドルウェア・ライセンス料金を削減することができた。
「2006年と2007年を比べると、ハードウェアリース費用、運用委託費、ソフトウェアの保守費用などを合わせたシステムの年間トータルコスト(TCO)が、64%に下がりました。」と初鹿氏は言う。
開発コストも低減できた。
「intra-martの採用決定前にメインフレームで『新保安システム』を開発しようとしたことがありましたが、そのときの見積もりと比べると開発コストが3~4割少なくて済みました。従って、ダウンサイジングにより浮いた予算の5年分で、『新保安システム』全体の開発をまかなうことができたのです。メインフレームで開発をした場合には新規投資になるところでしたが、intra-mart開発では、新たな予算獲得が不要でした。」と初鹿氏は言う。
開発コスト低減に大きく貢献したのは、何といってもintra-martフレームワークと共通部品の活用である。
「intra-martフレームワークと共通部品がなければ、2~3割は余分に開発コストがかかったはず。3
年間で800 ~ 900人月かかっていますから、intra-martフレームワークと共通部品の活用で200人月ぐらいコスト削減効果があったことになります。」と初鹿氏は試算する。
運用管理コストも大幅に低減された。
サーバの集中化とシステム統合により、運用管理が効率化した。またプラットフォームを統合したことで、運用管理要員の技術教育も効率的に行えるようになり、スタッフのワークシフトも効率よく組めるようになった。
「メインフレームでは、ハード、ソフト、データベース、ミドルウェアのすべてがわかるSEが必要でした。今は、Windows、Oracle、HTML、Javaさえわかればいい。覚える技術の量がメインフレームとは格段に違います。」と初鹿氏。
さらに、今後開発する新規システムや機能拡張などにかかる開発コストも大幅に低減できる。
「この度、『新保安システム』に連係する別システムの絶縁監視システムを連係開発しますが、画面設計では基本的な部分はフレームワーク・共通部品が出来上がっていることにより6割方は利用でき、残りの3~4割を作ればすぐに画面が作れます。設計部分も6割ぐらいは流用できますから、基本設計と共通設計のプロセスを大幅に省略することが出来ています。ログイン、権限管理、画面遷移、帳票、ログ出力機能などは考える必要がありません。全体の開発工数は6割程度に削減できると思われます。」と松浦氏。しかも統一されたintra-mart基盤のもと、今後、どのベンダでも開発に参加できるのである。

「当協会のシステムはまだ完成型ではなく、発展途上にあります。脱メインフレームを実現できたのが2008年までであり、今後は、業務プロセスを スリム化して、システムの全体最適化を図っていきたい。経営情報システム、Eラーニングシステム、社外への情報公開システムなど、intra-martプラットフォームで開発したいシステムもまだまだあります。」と岡田氏は語る。現在の「新保安システム」の構築により業務効 率も向上した。 シングルサインオン、直感的に操作できる統一されたユーザーインターフェース、パーソナライズさ れたメニュー表示、レスポンスの飛躍的向上、他システム連係などで、現場の業務がスムーズに行え るようになったのだ。 データの鮮度も上がった。たとえば点検データ は、以前は10日ごとのバッチ集計だったが、いまは リアルタイムなデータを参照して、仕事の進捗率 に応じた指示変更が即座にできる仕組みを作ることで業務の可視化を図っている。 月次締め処理も、メインフレームでは3日かかっ ていたものが、半日~1日で終わるようになった。 この結果、決算(月次)を早く出せるようになった。今後は収益拡大、コスト削減に向けて、データを活用した経営戦略を展開していきたいという。 intra-martフレームワーク上で各種システムの疎結合を実現した関東電気保安協会は、今回手に入れた、様々な変化にも柔軟に対応できるシステム環境を利用し、今後は、さらなるお客様へのサービス向上へと展開していく予定だ。
| 財団法人 関東電気保安協会 | |
|---|---|
| 本社 | 東京都豊島区池袋3丁目1番2号 光文社ビル |
| 設立 | 1966年2月15日 |
| 社員数 | 3,182人(2008年9月現在) |
| 概要 | 電気設備の保守・点検・技術サービスを行う公益法人。サービス区域は、関東地方1都6県と 山梨県全域、静岡県富士川以東で、東京電力のサービス区域とほぼ等しい。「電気にかかわるさまざまなサービスのご提供を通じて、地域社会の方々が電気を安全に安心してご使用頂ける明るく快適な社会づくり」がモットー。 |
| URL | http://www.kdh.or.jp/ |
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