用途:シェアードサービス基盤
NTTグループ15万人の間接業務を次々にSaaS化
ハード/ソフト/ランニングコストの総合的な削減に成功
NTTグループにおいて、経理、人事・給与、福利厚生、住生活などの間接業務アウトソーシングを担っているのが、シェアードサービス会社のエヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社(以下、NTTビジネスアソシエ)である。同社はNTTグループ約15万人が利用する評価考課システム、および電子社員録のSaaS型サービスを、intra-mart基盤で統合した。その結果、ハード/ソフト/ランニングコストの総合的な削減に成功。今後も、グループ内の個社ごとに構築されている、人事、給与、福利厚生などのアプリケーションの統合を検討して、多彩なサービスを高いコスト効率で展開していきたいと考えている。
1999年、NTTグループの間接業務効率化、品質向上、コスト削減などを目指して設立されたのが、シェアードサービス会社のNTTビジネスアソシエである。NTTグループの個別企業が抱える多種多様な要求に対応しながら、約600社の連結決算、20万人の福利厚生、15万人の給与支給などのサービス実績を積み重ねてきた。
「当社は、間接業務に関する高いスキルを持った専門家集団です。あらゆる間接業務のコンサルティングからソリューション、システムサービス、実務代行まで、業務の範囲や地域を問わず、トータルサポートしてきました」と、HRソリューション事業部 ソリューション部門 人事給与サービスグループ 担当課長の高橋直樹氏は語る。近年はそのノウハウを、NTTグループ外へもサービス提供している。
十数年にわたる活動を通じて、NTTビジネスアソシエは、NTTグループ全体の間接業務効率化に多大な成果をあげてきた。
エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社
HRソリューション事業部ソリューション部門
人事給与サービスグループ
担当課長 高橋 直樹氏
「しかし、コスト削減効果を拡大したいという要求は、さらに強くなっています」と高橋氏。NTTグループでは、「業務のシェアード化・効率化推進などの観点から、システムの共通化、情報流通プラットフォームの整備等、グループ内のIT全体最適」を推進するグループ中期IT方針を掲げている。NTTビジネスアソシエは、NTTグループの方針の推進のために、「シェアードサービスのシステム統合によるITコスト削減」を積極的に推進して、これまで以上のコスト削減を図る必要があった。
NTTビジネスアソシエは、「システム統合によるITコスト削減」という目標を実現するために、まず2009年9月にスタートした評価考課システムのプロジェクトで共通基盤構築に踏み切った。
NTTグループの人事系システムの中核を担っているのは、人事給与統合基幹業務システム「eHuman.HeartsⅡ」(以下、「eHumanⅡ」)である。
「『eHumanⅡ』は、ERPのPeople Softをベースに開発した人事系サービスの基幹システムです。NTTグループの『人』に関する情報を一元管理しており、退職者を含めて約35万人の情報が登録されています。さらに『eHumanⅡ』は、評価考課、電子社員録、健康保険、年金、社宅管理など、19の関連システムへ情報連携しており、人事系サービスの根幹を担っているのです」と、人事給与サービスグループ 主査の瀬戸口大輔氏は説明する。
エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社
HRソリューション事業部ソリューション部門
人事給与サービスグループ
主査 瀬戸口 大輔氏
評価考課システムは、NTTグループの大半の社員を管理し、1万人を超える管理者が評価者として使うシステムであるだけに、直観的に操作できるような使い勝手の良さが強く求められた。ERPで構築した基幹システムでは実現しにくいこうした高度なユーザビリティを伴う機能を実現する「ERPフロントシステム」の構築は、intra-martの得意領域である。intra-martであれば、ERPを直接カスタマイズするのに比べて低コストかつ短期間で、誰にでも使いやすい仕組みを作ることができる。要件変化に伴う変更にも対応しやすく、多様なERP連携も追加開発できる。しかも、ERP本体を作り替えていないので、ERPバージョンアップ時のコスト低減にも貢献するのである。
さらに重要な評価ポイントは、intra-martを使ってアプリケーションを開発すると、強靭な共通基盤を構築できることであった。
「intra-martは拡張性と汎用性が豊かな基盤構築用フレームワークであり、これからのシェアードサービスのアプリケーションをこの基盤上で追加構築していくと、開発も運用も含めたシステムのライフサイクル全体を効率良く回していけると、長期的な視点で判断しました」と高橋氏は語る。
続いて2010年3月にスタートしたのが、電子社員録のプロジェクトである。この電子社員録のシステムは、評価考課システムのintra-mart基盤を共用して効率よく構築できた。サーバをはじめとするハードウェアも共用であり、新規ハードウェアは不要である。アプリケーションサーバやJavaフレームワークも共用しており、新規構築の必要がない。保守管理作業も共通であるため、個別システムとしてそれぞれ構築するのに比べ保守管理作業の負荷は著しく軽減される。
シェアードサービス・アプリケーションをintra-mart基盤上で統合することにより、ハード/ソフト/ランニングコストの総合的な削減を実現できたのである。
電子社員録の開発にあたって、顧客満足の視点から大きな課題になったのが、レスポンスである。
利用者は、400社弱、約15万人にのぼる。何百人もの利用者が同時に、登録された15万人分のデータを全件検索すると、システム負荷が増大してレスポンスが落ちることは確実だ。しかし、ビジネススタイル変革の先鋒を担うシェアードサービス会社が、利用者が不満を感じるような新サービスを提供することは許されない。そこで、「通常0.1秒、混んでいるときでも0.3秒」のレスポンス目標を掲げて、開発に挑んだ。
「検索用データベースを独自に構築したうえで、項目を絞り込んだり、データベースのチューニングにも工夫を凝らしたのです」と、人事給与サービスグループ 主査の池岡浩次氏は語る。
エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社
HRソリューション事業部ソリューション部門
人事給与サービスグループ
主査 池岡 浩次氏
NTTデータイントラマートのコンサルティンググループも、要件に見合った最適な基盤構築と、SQL文の改善提案の両面で、技術サポートを提供した。こうした取り組みの結果、厳しいレスポンス目標をみごとに達成。15万人のデータを扱う大規模Web検索サービスでも、intra-mart基盤が快適な利用環境を実現できることを実証した。
しかも、豊富な部品群を備え、部品の再利用性の高さも誇るintra-martであるだけに、開発生産性は高かった。
たとえば、ユーザーインターフェース部分の開発は、評価考課システムから流用したり、intra-martの部品を利用して、大幅に負荷軽減できた。その結果、開発者は複雑なロジック部分の開発に専念できたのである。
「intra-martはGUI部分の開発思想が一貫していて、画面の配色、レイアウト、アイコンなど、良いものがそろっています。ユーザーインターフェースを開発したくてとりあえず部品を見ると、たいていの場合、『これで良い』という結論になりました。利用者が使いやすく、満足度の高いアプリケーションを、効率よく開発できたのです」と瀬戸口氏は語る。

2011年1月、NTTグループ電子社員録は、グループ企業内SaaS提供を開始した。
最大の成果は、当初のねらいどおりに、intra-mart基盤上でアプリケーション統合を行い、ハード/ソフト/ランニングコストの総合的な削減に成功したことだ。開発期間とコストも、スクラッチ開発に比べて、評価考課システムと合わせて2割程度、削減できた。
顧客満足度の高い新サービスを提供できたのも大きな成果である。
紙の社員録を単純にシステム化した従来システムとは異なり、最新のWeb技術を活かしてアプリケーションを開発したため、NTTグループ社員の使い勝手は大幅に向上した。
氏名、部署、内線番号、メールアドレス、FAX番号、所在地など、個人を特定する情報で検索できるほか、組織図をエクスプローラライクに表示して、所属する社員一覧を表示できるため、少ないマウスクリック操作で目的の人物にすばやくたどりつける。
「gooサービスと連携させて、社員所在地の地図をすぐに表示する機能についても、今後リリースする予定。同一画面上で所在地までの経路や所要時間などを参照する機能も、合わせて間もなくリリースします。」と池岡氏は言う。
管理の手間も軽減された。
従来システムでは正社員情報だけを「eHumanⅡ」から受け取っていたが、新システムでは、正社員以外の情報も含めた情報を自動連動する仕組みにした。その結果、システム管理者は、社員等の情報を手作業でメンテナンスする手間から解放されたのだ。データの不整合が起きることもなくなり、利用者は検索対象が拡大して利便性が向上した。
将来的には、intra-mart共通基盤で、勤務管理、稼働管理、各種申請ワークフロー、旅費精算などのシステム統合を検討していきたいと考えている。intra-martは、対応アプリケーションや部品を追加することで、こうした多様な業務にも効率よく対応していけるのだ。たとえば300万円のシステムを400社が個別に構築すると12億円かかるが、intra-mart共通基盤で統合すればコストは大幅に削減できる。業務統合の範囲を拡げれば、グループ全体で数十億から数百億円のコスト削減も可能であると想定される。
また、評価考課システムも、電子社員録システムも、「eHumanⅡ」という基幹システムでは実現しにくいきめ細かな機能を、intra-martを使って実現した「ERPフロントシステム」の一形態である。2システムの開発で身につけたERPフロント開発のノウハウを、その他のフロント系システムへ拡大していくことも考えられる。
つまり、NTTビジネスアソシエは、「システム統合によるITコスト削減」の第一弾を成功させるとともに、ユーザビリティに優れ、顧客満足度の高いシェアードサービスのアプリケーションを次々に展開できる基盤を手に入れたのである。
「シェアードサービスは、よりトータルなサービスのアプローチが求められています。たとえば、人事異動に際しては、給与が変わりますし、転居のための社宅の手配など、さまざまな部署での事務手続きが必要です。ところが現状は、こうした手続きを行うシステムがバラバラで、手間が余分にかかっています。より高度で、効率的なシェアードサービスを推進していくためには、BPRを前提にしたシステム統合が不可欠であり、われわれがそれを推進することが、NTTグループへのより大きな貢献につながるものと考えているのです」と高橋氏は将来像を語る。
intra-mart基盤は、今日のコスト削減要求と、明日のシェアードサービス進化の両面をしっかりと支えながら、顧客満足度の高い新サービスの積極展開を目指すNTTビジネスアソシエのチャレンジを力強く支援していく。
| エヌ・ティ・ティ・ビジネスアソシエ株式会社 | |
|---|---|
| 本社 | 東京都千代田区一ツ橋一丁目1番1号 パレスサイドビル7階 |
| 設立 | 1999(平成11)年7月1日 |
| 資本金 | 77億5千万円 |
| 社員数 | 466名(2011年3月31日現在) |
| 概要 | NTTグループの経理、人事・給与、福利厚生、住生活などの幅広い間接業務を担うシェアードサービス会社。約620社の連結決算、20万人の福利厚生、15万人の給与支給など、高度な実績を誇る。 |
| URL | http://www.ntt-ba.co.jp/ |