業種:商社・卸 / 業務:与信限度管理 / 用途:業務ワークフロー
与信限度の管理システムをWebアプリケーション化。Ajaxによる操作性・利便性向上により、「正確なリスクの早期発見」を実現
金融機能をも有している総合商社において、取引先ごとの与信限度を管理する「限度管理システム」は、リスク管理の中核を担う重要なシステムである。日本を代表する総合商社である三菱商事は、1998年から使ってきた「新・限度管理システム」を刷新。Web化した「次世代・限度管理システム」を2007年5月から使い始めた。次世代・限度管理システムは、統合型フレームワーク「intra-mart」とAjaxを駆使して、操作性、機能性、利便性を大きく向上させた。処理漏れや判断ミスを起こすことなく、「正確なリスクの早期発見」ができる環境が強化されたのである。
三菱商事が、1998年から使ってきた「新・限度管理システム」の見直し・再構築に取り組んだのは2005年のことである。 「以前の『新・限度管理システム』は、『新』の文字でわかるように、当時として最新鋭の機能を盛り込んだシステムでした。しかし、システムの中核に用いていたミドルウェアがサポート停止になったことから再構築に踏み切りました。作るからには、三菱商事として最先端を追求しようということで、『次世代・限度管理システム』のプロジェクトをスタートさせたのです」と、三菱商事フィナンシャルサービス株式会社 審査グループ審査企画ユニットユニットマネージャーの古谷慎吾氏は語る。 従来の「新・限度管理システム」は、与信の限度枠を三菱商事社内で定めるためのワークフロー中心のシステムであり、三菱商事における本格的な電子稟議システムの第1号でもあった。ワークフロー展開中に回付先を動的に変えられるなど、高度な作り込みを行っている。限度枠に対して取引額がどのように推移したかをチェックし、信用限度額をオーバーするとアラーム通知されるなど、人的ミスをなくす機能も備えていた。コアユーザーは、審査部門、リスク管理部門を中心に約2000 ~3000人。時々使う営業部門も含めると、ユーザー総数は約4000~5000 人にのぼる。 さらに「次世代・限度管理システム」では、従来の機能はすべて継承したうえで、より正確なリスクを早期発見するための機能を強化した。具体的には、与信管理に必要な各取引先の格付・企業情報、および債権債務残高等のリアルタイム情報などの管理を強化して、操作の流れに応じて効率よく必要な情報を参照できるようにした。また、限度枠超過のアラーム通知をメールと連動させるなど日常管理機能を強化し、ワークフローのスピードアップ、操作性・利便性向上などにも力を入れた。 「これまでは開発時の都合や仕様を優先させたシステムだったが、利用するユーザのニーズや使い勝手を大事にしたシステムにしたいと考えました。三菱商事の中でも先駆的なシステムにしたいとの意気込みを持ったのです」と古谷氏は当時の意欲を語る。

intra-martの採用を決めたのは、システムインテグレーションを担当したアイ・ティ・フロンティアの「グループ会社への展開等連結経営を指向したシステムではWeb 化が不可欠であり、これを実現するJava を使った業務アプリケーション開発にあたっては、技術基盤固めが重要」という提案を評価したためである。 「各社の提案を比較検討しましたが、三菱商事が求める限度管理システムは既成のパッケージでは実現できないことは明らかでした。それでは作り込みをどうすれば効率的にできるか。intra-mart というフレームワークを使えば、高機能でカスタマイズ可能なJavaコンポーネント群が利用できてプログラム開発量を減らせること、開発途中で生成したコンポーネントも再利用することで業務ロジックの作り込みが効率よく行えること、そして、大企業での基幹系システムの開発に豊富な実績を持っていること。アイ・ティ・フロンティアの説明を聞いて『なるほど』と納得しました」と古谷氏は言う。 また、株式会社アイ・ティ・フロンティアの岩﨑 一郎氏は次のように説明する。 「安定性と信頼性が求められる業務用Web アプリケーションの開発にはJava が適しており、洗練されたフレームワークと、そのフレームワークに習熟した要員育成ができていることは、Java によるシステム開発を成功させるための必須条件といってもいいでしょう。国産フレームワークで技術サポートが充実しているintra-martと、intra-mart の利用ノウハウを身につけている当社技術者の存在は、このプロジェクトを成功させるための技術基盤だったのです」。 さらに、三菱商事では基幹系システムにSAP のR/3システムを用いているため、SAP 連携機能に優れている点でもintra-martを評価したという。

次世代・限度管理システムは、2006年4月から開発をスタートし、2007年5月に本番稼働を開始した。利用者数は、以前のシステムより拡大して約7000ユーザーを予定し、同時アクセスは300~ 500ユーザーを想定している。 システムを見てまず気づくのは、ユーザーインターフェースの先進性である。

ログインした利用者に応じて、未承認案件や限度違反案件などのアラームを知らせるTo Doなどのリストがポータル画面に表示され、しかもそれぞれがメールと連動しているため、仕事の漏れやミスを避けながら的確なアクションをすばやく起こすことができる。 また、画面に表示されているボタンをクリックすれば、そのつど、SAP の最新データをリアルタイムに確認することができる。社名を選べば格付けシステムが立ち上がり、決算データ、有価証券データ、信用調査結果と、次々にクリックして飛んでいくことができる。コード入力をすればサーバへの問い合わせプロセスを経ないで入力項目がパッとメニュー表示されるし、カーソルをあてただけで用語の説明がポップアップ表示されるなど、操作もわかりやすい。 「前のシステムがクライアント/サーバ型でしたから、その機能を継承するには、相当にリッチな画面を作る必要がありました。利便性を高め、直感的にもわかるようにということで、インターフェースを工夫し、かつAjaxも駆使しました。Ajaxの利用で、サーバからデータを読み込む回数が減り、レスポンス向上にも役立っています」と、株式会社アイ・ティ・フロンティアの籔下隆久氏は苦労の一端を語る。 「オンラインヘルプも充実しています。前のシステムと全然違う画面になったにもかかわらず、稼働開始の直後でも、社内からの問い合わせがほとんど来なかったのは、『直感的な操作』を実現できたからだと思います」と古谷氏は自信を込めて語る。

次世代・限度管理システムは、レスポンスが上がり、使い勝手も良くなったことで、利用者からも好評である。管理職にも必要な情報が毎週確実に届くようになった。利便性向上と業務効率向上に貢献し、「より正確なリスクの早期発見」という大目標を達成できたのである。 「一番大きな効果は、座ったままで欲しい情報に手が届くようになったことでしょう。いままでは『データが欲しければ見に来て』と言う待ちの姿勢でしたがこれを改め、次世代・限度管理システムでは、システムが汗をかいて必要な情報を集めて届けてくれるようになったと、社内では説明しています」と古谷氏は微笑む。 今後、次世代・限度管理システムをグループ会社にも提供していきたいと考えている。 「グループ会社でも限度管理システムを使いたいという話は以前からありましたが、これまでのシステムは柔軟性がないため、三菱商事以外には提供できませんでした。次世代・限度管理システムは、Web システムで、レスポンスが良く、画面がカスタマイズできますからグループ展開も可能です。グループ会社でも同じシステムを使って、三菱商事と同レベルの高度な与信管理を実現し、リスク管理をさらにレベルアップさせたい」と古谷氏は語る。 次世代・限度管理システムはその名のとおり、総合商社のリスク管理の次世代の可能性を切り開いていこうとしている。

| 三菱商事株式会社 | |
|---|---|
| 本社 | 東京都千代田区丸の内二丁目3番1号 |
| 設立 | 1950年(昭和25年)4月1日 |
| 資本金 | 199,228,062,306円(2007年3月31日現在) |
| 売上高 | 連結20,516,264百万円、単体10,890,029百万円(2007年3月期) |
| 社員数 | 連結55,867名、単独5,375名(2007年3月31日現在) |
| 概要 | 日本最大手の総合商社。扱い商品は、エネルギー、金属、機械、化学品、情報、金融、物流と幅広い。なお、三菱商事フィナンシャルサービス株式会社は、三菱商事の財務・経理・審査のシェアードサービスセンター。グループファイナンスを通じて、三菱商事の連結経営を支えている。 |
| URL | http://www.mitsubishicorp.com/ |
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