業種:出版 / 業務:財務会計 / 用途:業務ワークフロー
SAP XI連携でメインフレームやSAP MDMとの連携を実現。経営基盤の強化を目的として、全社規模ワークフローシステムを構築
大手出版社の株式会社講談社(以降、「講談社」と表記)は、基幹系の情報を一元管理して経営管理を強化することを目指して、メインフレームで稼働してきた会計システムをSAP ERPに移行した。原稿料支払、仮払、出張精算などの伝票処理をスムーズに行うためには、intra-martで電子伝票の承認ワークフローシステムを開発。外付けの電子伝票システムを、SAPXI、BAPIなどのインターフェースを駆使して、SAPの会計システムおよびメインフレームとも連携させることで、SAP側のカスタマイズを増やすことなく、ERPの短期導入を成功させたのである。
大手出版社の講談社は、2009年に創業100周年を迎えるのをひとつの節目として、「100周年委員会」を立ち上げ、さまざまな経営変革に取り組んでいる。基幹系システムの刷新を決断したのもその一環だ。出版業界は、読者ニーズの多様化、媒体のデジタル化などさまざまな変革の波に直面しており、よりきめ細かな経営管理が求められている。しかし、従来のメインフレーム上で稼働する基幹系システムの体制では、必要な情報を必要なときに必要な形で取り出すことは困難だった。 「最大の問題は、後から作ったWeb系のシステムとレガシーシステムでマスタ管理が別体系になっているなど、データとマスタがシステムごとに孤立していることでした。経営情報を簡単に入手できるようにするには、データおよびマスタの統合管理が不可欠だったのです」と、株式会社講談社 経営企画室 システム部 室次長兼部長の上原朗久氏は語る。 そこで、導入を決断したのがERPだ。ERPであれば、データとマスタを一元化できるうえ、月締めを待つことなく、毎日更新される最新の情報を経営管理に活用できる。 「会計システムは、柔軟性ではなく『統一』を優先させることが大切です。この目的に一番適していたのが、SAP ERPでした」と上原氏は言う。 2005年12月、SAPを用いた会計システムの構築がスタートした。

SAPの導入を成功させるには、伝票を柔軟に取り扱うための電子伝票システムが必要だと考えるようになったのは、2006年3月に入ってからのことだ。 印税、原稿料、版権、校閲などの支払いは、煩雑な伝票処理を伴う。また、社員だけでなくフリーランスの人まで含めた出張申請、仮払、出張精算などは、現場ニーズへのきめ細かい対応が必須であり、SAPに取り込むことはむずかしい。無理にカスタマイズをして取り込もうとすれば、膨大なコストと開発期間が必要になる。そこで、SAPの外部に電子伝票を扱うシステムを作り、連携させるのが得策だと判断したのである。 また、情報が発生する現場で電子伝票を入力すれば、経理部門の集中入力にかかる作業負荷が軽減できるというのも、電子伝票システム構築のねらいのひとつだ。 電子伝票を構築する手段としてはintra-martを選択した。 「intra-martを選んだのは、ワークフローの共通基盤として使えるためです。今後は、会計システムだけでなく、版権管理、物流、販売など、メインフレームで動いているレガシーシステムをどんどんオープン化していきます。そのときにも、ERPをカスタマイズしないで、外付けのシステムを作って連携させていきたい。電子伝票という用途に特化した専用アプリケーションでは、今回の会計システムだけのツールになってしまいますが、intra-martであれば、今後の基幹系システム再構築の際の基盤として共通利用できます」と上原氏は説明する。 SAPとのインターフェースが充実しているのもintra-martの特長だ。 intra-martは、SAP連携のために、別途、オプションの高価なアダプタを購入する必要がない。NetWeaver対応が整備されており、BAPIはもちろん、SAP XIにも対応している。特に、全社全システムのマスタをSAPの統合マスタ管理MDMで一元管理することを目指す講談社は、MDMとの連携に優れたSAP XIへ完全対応している点を高く評価した。

SAPによる新・会計システムと、そのデータ入力機能を担う電子伝票システムは、2006年12月、予定どおりに本稼動を開始した。 電子伝票システムの利用者は、全社員の約1000人である。夜中まで働くことが多い出版社であるだけに、朝9時から翌朝の3時まで18時間稼働して、月平均2万件の伝票処理を行う。電子伝票の入力画面にはさまざまな工夫が凝らされている。また、各部門の事務処理担当者がMicrosoft Accessを使って伝票を入力しておき、それをある時点でまとめてintra-martへアップロードしたうえで、上司が一括承認するという便利な機能も開発した。 電子伝票システムは、メインフレーム、SAPERP、SAP MDMの3つと連携している。 メインフレームからは毎日、SAP XI連携によって、支払いデータなどを電子伝票システムへ送っている。 また、電子伝票のシステムは、現場で入力して経理局長が承認したデータを2時間ごとにまとめ、BAPI連携によってSAPの会計システムへ渡している。 そして、統合マスタのSAP MDMとは、SAP XI連携によって、1日2回、双方向でやり取りをして、SAPシステム全体と電子伝票システムのマスタ統一を実現しているのである。 「intra-martはSAPと相性がいい。SAP XIは新しい技術であるだけに、他のシステムは連携部分でトラブルが起きたりしていますが、電子伝票のシステムは、まったくトラブルなしに1年以上の安定稼働を続けています」と上原氏はにこやかに語る。

データの発生現場で電子伝票へ入力するという手順の変革は、社内に根付くのに半年ほどかかったという。現在では利用が定着し、「どこで流れが止まっているのか、申請の進行状況が見えて便利」「一括承認の機能のおかげで承認作業が楽になった」など、利用者からの喜びの声もあがっている。 特に出張精算はとてもスムーズだ。交通経路検索システムと連携しているため、交通費の計算を正確かつすばやく行える。出張申請、仮払申請、出張旅費精算などはつながっており、同じ情報を再入力する必要がない。「往復ボタン」を押せば、交通費を2倍にして記入できる。同じ取引先への同じ項目の支払いは、テンプレートやコピー申請の機能を使えば良い。 経理部門へ申請情報が届くのが速くなったのも大きなメリットだ。決められたルールに沿って入力しないと電子伝票システムが受け付けてくれないため、正確できめ細かいデータが経理部門へ集まるのだ。経理部門の担当者は、入力作業や伝票の不明点を現場に問い合わせる作業から解放された。こうした変化の相乗効果によって、月2回の支払いだった旅費精算も、最短1週間で社員へ支払えるようになったのである。 さらに今後、intra-martは、ワークフローの共通基盤という重要な役割を担っていく。まず、備品申請や稟議書など、庶務関連のワークフローを作る計画だ。経理伝票と申請ルートが似ているため、すぐに開発できるものと予想される。 版権管理システムをオープン化するプロジェクトも現在進行中である。小説やコミックから生まれるキャラクターやストーリーなどのコンテンツは、紙の上ではもちろん、TV、映画、アニメ、ビデオ、DVDなどさまざまなメディアへと拡大されており、版権の総合的な管理・運用は重要なテーマだ。講談社は今後、版権をSAP MDMで統合管理する方針であり、そのデータ入力機能はintra-martでワークフローを開発することになる。 SAP XIをはじめとする各種インターフェースの充実によって、「整合性のとれた経営データの入手」が可能な環境を、経理領域では実現できた。これからさらにレガシーシステムをオープン化していく基盤も構築できた。講談社はさらに、B(I ビジネスインテリジェンス)を活用してプロジェクト単位のきめ細かい経営管理を推進して、次の100年に向けての経営基盤強化に取り組んでいく。

| 株式会社講談社 | |
|---|---|
| 本社 | 東京都文京区音羽二丁目12番21号 |
| 設立 | 1909年(明治42年)11月 |
| 資本金 | 3億円 |
| 売上高 | 1,456億円(2006年11月実績) |
| 社員数 | 1,023人(2007年4月現在) |
| 概要 | 日本を代表する大手出版社。書籍、雑誌、コミックなど紙の出版物と、携帯コンテンツ、Webマガジン、電子書籍などのデジタルコンテンツの両面が充実。ライツ(版権管理)事業として、講談社が保有もしくは委託された著作権・商標権・意匠権・特許権等の知的所有権の国内外での総合的な管理・運用にも力を入れている。 |
| URL | http://www.kodansha.co.jp/ |
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